拉致
こんな手紙が送られてくるなんて心当たりが無かった。一応、由宇奈にも見せてみたがやはり知らないようだった。
「それより今日で伯父さんと叔母さんが亡くなって三年だね。お墓参りは何時ぐらいに行くの?」
「学校終わったらすぐに行こうと思う」
返事をして時計を見ると家を出る時間になっていたので学校へ向かった。
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「お前らの息子は何処だ」
右手に剣を持った大柄の男が夫婦に問いかけた。
「何の理由があってうちの子供を狙うんだ」
「知る必要はない。お前らはただ黙って息子を差し出せばいいんだ」
とは言ったものの、これ以上聞いても無駄だと判断した男は夫婦を見るも無残な姿に惨殺し、夫婦の子供を探しに行った。
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『キーン、コーン、カーン、コーン』
放課後を告げるチャイムが鳴り、目が覚める。
「またあの夢か、もうだいぶ見慣れてしまったな」
三年前のあの光景を実は恒星は見ていた。家には隠し部屋があり、そこに隠れてたおかげで男には見つからずに済んだのだ。
「おはよう。よくお眠りだったようで」
俺が起きたのを見て由宇奈がやって来た。何故か少し怒ってるみたいだ。
「なんで敬語?というか、ちょっとキレ気味なのは何故でしょうか?」
「そりゃあ、一限目始まる前から学校終わるまで寝てたら怒るでしょ普通。先生達はアンタの家庭環境を気にして優しくしてくれてるけど、私はそんなに甘くないから」
「じゃあ同棲しよ。それか婿養子に行かせて」
「ま、また、突然何言い出すの」
いきなりの発言に由宇奈はオドオドしている。
「一人で家事全部やると疲れるけど、二人でやればその分楽だし。疲れが減れば学校で居眠りしなくなると思う」
「それもそうね。まぁ、考えてあげなくもないかな」
(えー!割と冗談のつもりで言ってみたのに。言ってみるもんだな)
「そういえば、私少し用事できちゃったからお墓先行ってて」
と言われたので先にお墓に向かうことにした。
墓地に着くと、両親の墓の前に異様な格好をした二人の知らない男達が居た。全身に鎧を纏い、背中には剣がある。俺の方を見てこっちに近づいて来たと思ったら、俺に対して跪き、
「お迎えにあがりました、王子」
と訳の分からない事を言ってきた。
「何のことか分かりませんし、多分人違いですよ」
「本日手紙を送った筈です」
ああ、あれか。すっかり忘れてた。
「確かに届いたけど俺はどこにも行く気は無いですよ」
「そうですか。ですが、王からは、力ずくでも連れて来い、と言われてますから無理やりにでも連れて行きますよ」
「何を言ってーー」
みぞおちを殴られ、息がつまり、そのまま気を失った。
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目が覚めるとそこには知らない天井があった。
「おはようございます、恒星様」
聞き覚えのある声のした方を見ると、よく見知った顔があった。
「本日より恒星様の身の回りのお世話をさせて頂くことになりました、メイドの小鳥遊 由宇奈です。よろしくお願いしますね」
見知ったの顔のメイドは、まるで初対面かのように挨拶してきた。
小鳥遊 由宇奈(アナザー)
恒星の幼馴染であり恋人。両親を亡くし塞ぎ込んでいた恒星を元気づけてあげた。今の恒星があるのは彼女のおかげと言っても過言ではない。