4*マジリ者がやって来た aB
やっと話が動きます。
男が辿り着いた時、ぼろ小屋は子供達によって解体されかけていた。状況はわからないが、おかしい、と感じる感性はある。とりあえず声をかけてみると、子供達がこちらを見て凍りついた。
「マ、マジリ者?なぜここに!」
子供達の激しい嫌悪と微かな恐れが混じる声に、男はため息をつく。
「この小屋はしばらく私が借り受ける。あまり壊してもらっては困るな」
「そ、それがどうした!俺は村長の息子のシュレクだぞ!」
「これは失礼。私の名はカゥメス。許可なら村長に許可とったが、いかに?」
えっ、とシュレクが驚く。他の子供達も顔を見合わせた。
「しばらく住むが、別にお前達を拐ったりとって食うわけではない」
「・・・し、仕方ない。特別に許してやる!感謝しろ!」
怯えながらも見栄をはり、子供達が去っていく。どちらかと言えば逃げて行く、に近い。イクトールでは「悪い子はマジリ者に拐われる」という脅し文句があるのだ。
苦笑しながらそれを見送り、男―ーカゥメスはただ一人だけ残った子供に気付いた。
「お前は逃げないのか?」
「ここ、僕の家です」
子供ーーイレクは小さな声で呟いた。