3 いじめ A
ちょっと悲惨です
「薪を集めろって言っただろ!なんでまだ終わってない!」怒鳴りとともに拳骨が少年―ーイレクの頬を打つ。まだ小さなその体が吹っ飛んだ。
「聞いてるのか!」「ご、ごめんなさい」
頬を押さえながら、イレクは自分を殴った相手に謝る。相手は歳上、それも体格では頭三つほど大きい。仁王立ちしながらイレクを見下ろす彼の周りでは、その取り巻きの子供達がにやにやしながら様子を伺っている。
「おい、俺は誰だ。言ってみろ」
「こ、このウギョウ村の、次の長の、シュレクです」
「そうだ。その俺に逆らうなんて、お前何様だ?」
「逆らう訳じゃ」
「口答えすんな!」シュレクが家の壁を殴り付けた。ぼろい板壁がその勢いで壊れ、イレクは思わず首をすくめて目を瞑る。
恐る恐る目を開くと、シュレクがみずからが壊した壁をじっと見つめている。
「・・・これ、薪にできそうだな」
ぞわっと背筋が総毛立つ。
「や、やめて!」
思わず飛びついて止めようとしたイレクを片手で突飛ばし、シュレクが壁を蹴りつけた。薄い板があっさり割れる。
「おい、お前らも手伝え」
「やめて、やめてよ!」
取り巻きを含めて少年たちがイレクの家を壊し始めた。必死に止めるイレクはその度に弾き飛ばされて地面を転がる。しまいには蹲って泣き出したイレクに構うことなく、少年たちはそれが当たり前とでも言いたげに、楽しげな笑顔すら浮かべて無法を行う。
「・・・何をしている?」
不意に声が聞こえ、少年たちが動きを止める。
大人の声だ。しかも聞いたことがない。村人なら自分たちの行いを止めることはないし、この小さな村によそ者が訪れるなどそうはない。
戸惑いを浮かべた彼らに現れたのは、熊の毛皮を被った一人の男だった。