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海峡を渡る風  作者: ゴッホゴホゴホ
1/6

1 少年は馬と語る A

少年Aは重要人物である。名前はまだない。


ちょっと退屈な日常パートです。



少年は馬小屋でため息をついた。飼い葉を敷き詰めた桶に腰掛け、破れだらけの粗末な服を脱ぐ。十歳にも満たない幼い体には幾つもの青痣があり、血色の悪い肌をまだら染めていた。古いのも新しいのもある。水桶で濡らした手拭いで新しい痣だけ冷やしていると、後ろから馬が首を出して少年の髪を軽く噛んだ。

「くすぐったいよ」

苦笑しながら鼻面を撫でると、馬は気がすんだのか飼い葉を食べ始める。少年は服をつけ直して馬の背を洗い始めた。よく見れば馬の体も細かな打撲傷があった。少年はそこを慎重に避けながら丁寧に拭き浄めていく。

「お前も年だね」

たてがみを撫でながら、少年は呟く。栗毛馬のあちこちに白髪ようなものが混じる。いつも体を洗っていれば筋肉が硬く痩せ衰えるのもわかる。目にもヤニが目立つ。

「長生きしなよ」

馬は少しだけ首を少年に向け、小さくいなないた。少年にとって唯一の友人がこの馬であり、馬にとって少年は唯一、優しく接する相手だった。

「イレク!どこに居やがる、イレク!」

「は、はい!」

粗野で苛立った怒鳴り声が少年を呼ぶ。少年は一瞬、肩を震わせると、怯えた表情で馬小屋の中から飛び出して行った。

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