夢
気づけば、私はよく知っている光景を眺めさせられていた。
目の前には幼稚園児にも見える幼い子供が5人、1人は泣いてうずくまっている。
「麻衣子のブース」
「愛ちゃんは、びじんなのにいもうとのおまえはにてないなー」
「やーいクルクルー」
そう言って笑うのは、泣いている少女に向かって指を指している黒髪の小さな男の子。少し垂れ目がちの儚く散っていってしまいそうな幼いがはっきりとした俗に言う王子様フェイスの持ち主である。その彼の口から発されるのは、王子様とは真逆の酷い暴言。この次に飛んでくる言葉も私は知っている。後ろにいる2人の男の子も彼には劣るがそこそこ可愛らしい顔を歪ませてニヤニヤしている。
「ダメよ、英ちゃん。女の子にそんな事言っては」
困った様にめっとおでこにデコピンをしているミルクブラウンのストレートの髪をもつ彼女は仕草や容姿がまるで小動物のようで愛らしい。ぱっちり2重にすらりと通った鼻筋、リップなど塗らなくともみずみずしくほんのりと桃色に色づいている唇。まつ毛だって、長く美しく伸びている。
しかも、彼女は本当に優しいのだ。悪く言えば博愛主義でもある。泣いている妹に酷い事を言う少年を完全に罰することも出来ず妹を突き放すこともせずその可愛らしい口でまいちゃんは、可愛いよなんて嘘を平気でつくのだ。
幼い彼らは、本当に美しかった。その頃読んだ絵本に出てくるような王子様とお姫様みたいで、貶された少女である私は唇を噛んででも、嗚咽が止まらなくて下を向いていた。出来るだけ、彼らを視界に入れたくなかったから……。自分を貶す彼らが嫌いで嘘をつく姉が嫌いで……でも、嘘でも嬉しくて……結果自分を酷く追い込んでいってしまっていた。
私は、惨めだった。何で、目の前にいる彼女の妹なのにこんなにも違うのかと、泣きたかったのだ。誰からも愛される華である愛華ちゃんとは違う平べったい鼻、一重の小さな目、ゴワゴワのクルクルな髪。名前だって、大好きなおばあちゃんがすくすくと育ちます様にと付けてくれたのに、可愛くないとも思ってた。いや違うのだ愛華ちゃんは、お父さんとお母さんが考えて付けてくれたのを知っていたから羨ましかったのだ。愛華ちゃんが、可愛く美しいのはどう考えても両親の遺伝を受け継いだものだったから。……だから、せめて名前だけでも両親から貰ったとか考えたかったのかもしれない。
ああ、お願いだから私に見せないで欲しい。大嫌いな私が、私を否定する行為を見せつけないで欲しい。