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vivre―黒い翼―  作者: すずね ねね
1章 des magouilles
23/82

謁見【1】

玉座の間は、入り口から真っ赤な絨毯が通路のようにひかれていた。

奥に玉座があり、初老の男性が座っていた。


エドワールが歳をとれば、こうなるのかもしれない。

髪にこそ白いものが混じり始めていたが、その瞳には力強い光が宿り、静かに青年たちを見据えていた。


エドワールが静かに王の前に進み出ると、恭しく頭を垂れる。

その後ろで、青年とオルガもそれに倣う。


「よく帰ったな、マルグリット」


空間に、王の声が響く。


「既に大臣より、無事課題を終えたことの報告は受けておる。さあ、顔をよく見せておくれ」


オルガは立ち上がると、一歩前に進み出て改めて王の前で跪いた。


「わたくしの我儘を聞いてくださり、陛下には感謝しております」


「よい。それよりも、その者は?」


王が青年を指して言う。

オルガは頷くと、ゆっくりと立ち上がった。


「ルーさんといって、冒険者です。道中知り合いになり、わたくしを助けて下さいました」


「そうか、それは苦労をかけたな、旅の御仁」


オルガは青年の条件通り、一緒に課題をこなしたことは伏せた。

王は青年を信頼したのか、目を細めて笑う。


「儂がユークリッド・ヴァン・レイダリア3世だ。娘が世話になった、何なりと褒美をとらせよう」


「それなんですが、陛下」


エドワールが口を挟む。

国王ユークリッドは、 訝しげにエドワールに視線を送る。


「マルグリットが命を狙われたという件はご存知ですか?」


途端にユークリッドの目つきが変わった。

彼はオルガに視線を送る。オルガが間違いないという風に頷くので、その顔は益々険しくなった。


「儂の可愛いマルグリットを狙うとは……」


「だからでしょうね、心中お察し申し上げます」


淡々と話してはいるが、エドワールも同じ気持ちなのだろう。

その表情は晴れない。


「して犯人は捕らえたのだろうな」


「実行犯の数人は、治療院にいたのでこちらで押さえてはありますが、首謀者と所属に関しては調査中です」


「ふぅむ……」


ユークリッドが唸りながら腕を組んだ。

首謀者がわからない以上、オルガを王宮においておくこともまた危険が伴う。

兵をオルガにつけたところで、その兵が首謀者の回し者である可能性も捨てきれないからだ。


「ルーといったか、旅の者よ。一つ、頼まれてはくれぬか?」


ややあって、ユークリッドが諦めたように重い口を開いた。


「条件次第だが」


青年が答えると、ユークリッドが頷く。

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