レイダリアの若き鷹【4】
翌朝、エドワールに呼ばれた3人は彼の顔色があまり良くないことに顔を見合わせた。
「どうした」
青年が尋ねると、エドワールは首を横に振る。
「俺なりに少し探りをいれてみたんだけどね、どうやらマルグリット暗殺の件は本当のようだ」
「どこの騎士団が絡んでいるかわかったのか?」
「所属に関しては、今他の者に調べさせている。だが、恐らく黒幕のことは知らないか、知っていても漏らさないだろうな」
それは予想してはいた。
だが、それを明らかにしないとオルガの身が危ないことは変わらない。
「いずれにしても、陛下に報告しなくては」
オルガが悲しそうに呟く。
エドワールが慰めるようにオルガの頭を撫でると、オルガも少しだけ笑った。
「では、移動しよう。ヴァレリーは屋敷の入り口に馬車を用意させてあるから、それに乗っていくといい」
「ありがとうございます!」
ヴァレリーが頭を下げる。
豪奢な馬車が下町を通って裏街道へ出ることを考えると、どこか滑稽に思えたが、青年がそれを口に出すことはなかった。
王都ガレイア。
その中心に位置する王城は、戦争となれば堅牢な要塞となる。
城を囲むようにして作られた堀には水が張られ、城の前は今はちょっとした公園のようになっていた。
まるでそんな要塞としての側面を感じさせない和やかな雰囲気の中、青年たちはエドワールの馬車に乗り合わせ王城へと続く橋桁を通過していた。
どこか緊張した面持ちのオルガは、昨日までの旅慣れたローブと町娘の風貌ではなく、王女らしくエドワールが用意させたドレスを着ていた。
ミントグリーンの生地に細かい深緑の刺繍が施されたドレスは、スカートにバッスルをいれ元々華奢な腰周りを更に強調していた。
胸元に光るペンダントは、オルガが常に身につけていたユリを象ったものだ。
銀色の髪を結い上げ、小さなティアラを被り静かに座る様子は確かに「お姫様」だ。
馬車が大きく揺れ、城の入り口に面した広場に停まる。
扉が開かれ、エドワールに降りるように促された青年は、馬車から外へ出た。
左右対称に造られた階段が、緩やかなカーブを描き、二方向から入り口へと延びていた。
白い石畳は外階段にも関わらず、キチンと掃除されているのか日の光に反射し輝いている。
ここから見える範囲だけでも、柱や壁、窓枠などは細かなレリーフが彫られ、それだけこの城を手掛けた職人の技術の高さが窺えた。
城を見上げる青年を他所に、エドワールがオルガの手を取り馬車からエスコートする。
召使い達が、思わずという体で溜息を零す。
それ程オルガが儚く可憐に映るのだろう。




