裏街道【1】
早々に森の外へ足を向けた青年たちは、暗くなる前にフレミアの森の北の端、「裏街道」と呼ばれる街道を目指していた。
かつてはこの辺りにも小さな村が点在していたのだが、衛星都市ティリスが発展するにつれ、この村の住人たちもまたより良い生活を求め移住していった。
かつては王都とを結ぶ主要な街道だったこともあり、かつては白い街道同様に石畳には魔力石が使われていた。
しかし、老朽化と衛星都市ティリスの発展により、今は打ち棄てられ風化の一途を辿っている。
最早、魔物を避ける効力も期待できないことから、この街道を使う者はそうそういない。
そんな街道を目指すのにはもちろん理由があった。
王都へ戻ることを考える以上、追っ手に遭遇しないことが最も重要だ。
衛星都市ティリスを経由して王都に帰るのが、魔物相手であれば一番早い。
だが、その分追っ手と鉢合わせになる可能性も高い。
相手も騎士団の人員を割いている以上、それなりの理由が必要だ。
ティリスでの任務をでっちあげるのは簡単だが、一足飛びで裏街道へ派兵するには、少数での行動は許可が下りにくいだろうと踏んだ。
それだけ、青年たちが進むことにも危険が伴うのだが、拘束されるよりはマシだ。
「日暮れまでには森を抜けられるでしょうか……」
「恐らく大丈夫だろう。裏街道に出れば森より開けている分魔物も警戒しやすい」
木々の間を縫うように歩き続ける作業は、楽ではない。
道中襲いかかるフレミアを倒しながらとなると、更にその労力は増す。
それでも3人は歩き続け、裏街道に出たのは遠くの山に日が沈みかけた頃だった。
遮蔽物のない場所での野営は心許ないものがあった。
だが、ヴァレリーもオルガもとっくに体力の限界を迎えていた。
裏街道の入り口で、火を起こす。
そうして火にあたっていると、ここが寂れた街道の端でも少しは安心できた。
魔物は夜の方が活発なのだが、ここでも青年が見張りをかって出た。
質素な夕食を囲み、腰を落ち着かせていると……ヴァレリーには、昼間のフレミアとの戦いや、騎士の断末魔の声が夢だったのではないかと思えた。
いや、思いたかったのかも知れない。
人を、殺してしまった。
割り切ろうと思っても、そう簡単にはいかない。
何よりも鉛のように重たい身体が、疲労感が、ヴァレリーに忘れることを許してはくれなかった。




