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vivre―黒い翼―  作者: すずね ねね
1章 des magouilles
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彼女の嘘【4】

「な、何……」


 寝起きで状況が掴めず動揺するヴァレリーは捨て置いて、青年は身を低くしたまま剣を抜き放った。相手の姿は見えなないが、恐らく向こうも焚き火の灯りを頼りに当てずっぽうで矢を放ったのだろう。人数がわからない以上、いかに戦い慣れした青年でも、ヴァレリーとオルガを置いて戦いに行くわけにはいかない。

 何より、火矢を放ったところを見て人間であることは間違いないだろうが、相手が何者かが問題だった。


 夜盗であれば問題はない。問題なのは、オルガを抹殺するために何者かが送り込んだ刺客だった場合だ。その場合、青年ならば切り抜けることは可能だ。

 だが、迂闊なことをすれば色々と問題が起こる。


 とにかく、オルガのことは何としても守らなくては、これから先国際手配犯として祭り上げられかねない。


「離れるなよ。それからヴァレリー、風の魔術で相手の人数やいる方角はわかるか?」


「や、やってみる」


 ヴァレリーは震えながらも、杖を構え目を閉じた。ヴァレリーの周辺に魔力のうねりが発生する。それは突風となって暗い草原を駆け抜けてゆき、やがてその波がおさまると、再び静寂が訪れた。


「人数は、多分5人だと思う。感触から言うと、金属の鎧のようなものを着ていると思う」


ヴァレリーが使った魔術は、元々は魔力を纏った風を操ることで地形などを把握するためのものだ。

ある程度実力のある風属性の魔術師には通用しないが、魔術師以外の相手なら、こうして状況を把握することも出来る。


「魔術師が混じってないといいんだけど……」


ヴァレリーが不安げに呟く。もし手練の魔術師がいれば、ヴァレリー程度の術の穴を抜けるのは容易いだろう。


「いや、充分だ。オルガ、防御の障壁か加護の聖域は張れるか?」


「どちらも。両方同時であれば、10分が限度です」


「問題ない」


 防御の障壁も加護の聖域も、共にヒーラーが操る奇跡の術だ。防御の障壁は対象の筋肉に作用し、一時的に肉体の受けるダメージを極端に抑えることができる。反対に俊敏に動くことは困難になるので、大規模戦闘のような素早い動きを要求される場にはそぐわない。

 加護の聖域は、ごく小規模の結界を張ることにより、その中にいるものの受けた傷を癒す効果がある。

 そういう意味では、この二つの術は非常に相性がいい。


「ヴァレリー、火の攻撃魔術はどの程度まで習得しているんだ?」


「範囲が狭くて威力が高いのなら、火竜の吐息かな……。広範囲を雨のように火を落とすなら……威力はそれほどだけど、散らして撃つことは出来るよ」


「じゃあ、俺が草むらに飛び込んだら、全方位にとりあえず細かく撃ってみて。俺のいる方も。もし背後……つまり、ヴァレリー達に近いところの草むらから誰か出てきたら、火竜の吐息を叩き込んで」


「わかったわ」


「気をつけてくださいね……」


 ヴァレリーとオルガに見送られ、青年は草むらに姿を消した。訓練じゃない。明らかな殺意を向けられる恐怖に負けないように、ヴァレリーは息を吸った。

 精神の乱れは魔力の乱れに繋がる。杖を握りなおすと意識を集中し、魔力を解き放った。


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