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人で無死(ひとでなし)  作者: スズメの大将
第二章:記録ノ巫女
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Blood6:傲慢ナ頼ミ part5

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由佳奈の容赦ない部長権限により僕は追い出されるように部室を後にした。


後のことは全部やっておくから、あんたはまた馬鹿やってなさいとのこと。


少し不満げな表情はもしかすると一般人の僕が事件に関わることを懸念してのことかと最初は思ったが彼女のことだ、どうせ遊び相手の雑用がいなくなったということについての不満なのだろう。


しかし後のことは全部やっておくとは今の状況から察するに言の葉祭りの動画制作関連のことなのだろうが、どういう意味だろう。


言の葉祭りが行われるのは今から二日後。


となればあの発言を非常にネガティブに解釈するとしたら、二日かそれ以上かかるなにかに僕は今関わろうとしているのではないかということになる。


もう色んな意味で至れり尽くせりという感じだ。


学校を出た僕はほんの少しの抵抗とばかりに電源をきっていた携帯電話を取り出し、奮闘した結果やむを得ず電源を再びいれた。


電源がはいった携帯電話には既に何通かのメールが受信されており、それもまた登録していない知らないメールアドレスなのであった。


送られたメールには待ち合わせ場所とその時間。


さらには誰も連れずに一人でくるようにという内容のものだった。


と、ここでタイミングを見計らったかのように追加のメールが送られてきた。


そこにあったのは式の保持及び同伴は認めるとのこと。


この文面から考えてメールの送信者は僕のことを詳しく知っている人物だと判断できる。


というのも僕は式を保持しているということを公には口外していないからだ。


天子はもともと僕の式ではないし、僕自身あまり天子をこき使いたくないからということもあってその存在を知るものはせいぜい数人程度。


それを知っているとなればその数人の中の誰かか、もしくはそことの繋がりがある人物か……。


結局それが分かったとしても僕には拒否権はない。


考えてもなんの得にもならないことに頭を働かせる暇があるのなら、近々テレビで行われる人気歌手ランキングの予想にあてたほうがまだ効率的だ。


そんなこんなで僕は薄っぺらな学生鞄を片手に今回の待ち合わせ場所になっている廃ビルへと到着したのだった。


三階建てのこの廃ビルはいつまでたっても取り壊されることなく存在しており、その使い勝手の良さから僕も何度か利用している場所である。


この場所を指定してくるということは、やはりそれを見越してのことだろうから危険人物ではなさそうだという可能性が高まる。


メールではこの時間帯に廃ビルの三階にある旧応接室に来てくれとのことで僕は階段をのぼり三階までやってきた。


そこから旧応接室はまっすぐ行ったところにあり、僕はカツカツと無駄に足音がこだまする廃ビル内を歩いていく。


旧応接室の近くまで行くと僕の生体反応を察知できる便利なセンサーが発動する。


「(もう中に誰かいるな……)」


既に旧応接室の中には誰かの生体反応があった。


数は一人だが、問題はそこではない。


「(馬鹿みたいに強い力を感じる……それになんだ?このプレッシャーは…)」


部屋の中にいる人物は僕が今まで会ってきた人物の中でも上位にくい込んでくる程の強力な霊力を放っている。


それにくわえて威嚇とは違い、ただ単純にその強力な力ゆえに無意識のうちに漂わせている威圧感が閉ざされた扉からもれでている。


ごくり、と生唾を飲み込む。


こんな力をもっている人物が自分に果たしてなんの用があるというのだろうか。


もしかすると先のクラウドジェリー戦で僕の危険度が高くなり協会側が捕獲しにでもきたのだろうか。


しかしそれならばなにも電話などかけなくてもよいという話になる。


あれこれ考えていても仕方がない。


僕は意を決してやや錆び付いたドアノブをつかみ回してみせる。


ギギッ……という重たげな音にあわせて扉が開かれていく。


そして扉が開ききったその先には僕を呼び出したであろう人物が真っ先に視界の中に入り込んできた。


そこにいたのは僕の知らない背の高い男だった。


上下真っ黒なスーツを身にまとい無駄に光沢のある革靴、そして色彩的なアクセントなのか青いYシャツに青い宝石がはめこまれているスタイリッシュな腕時計、くわえてそれらをまとめあげる黒いネクタイをした明らかに僕とは位の違う男性。


短い黒髪が男を清潔感溢れるスマートな存在に仕立て上げている。


そんなエリート街道まっしぐらとでも言わんばかりにきまっている男はその長い足を組み元々置いてあったであろう横長のソファに腰をおろしている。


それから閉ざされていた細長の目を開け、男はこちらに視線を向ける。


やはり格が違う。


本人はおさえているのかもしれないが、そういった力の反応を強く探知してしまう僕からしてみればその強大な力はあまりにも暴力的に僕の精神をなぶっていく。


背中を嫌な汗が伝うのを感じながらしばし呆然としていると男はゆっくりと口を開いた。


「そんなに力まなくともこちらはなにもしない……ただ話がしたい。落ち着いてそこに座ってくれ」


やや低めなトーンの声が僕の思考を寸断する。


その声色に僕はビクッと我ながら無様な反応をしてしまう。


が、それがかえって僕を正気にさせたようで僕はいつもの調子とはいえないまでも先程よりは幾分か頭に冷静さを取り戻していた。


それから取り繕うようにいそいそと男と向かい合うように置いてあるもう一つの椅子に座り込んだ。



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