Blood5: 狂乱ノ力 part16
「___つまりはガイルが使っている合成魔同化タイプの武器は霊力を糧として餌として燃料として動力源として強化というよりも成長しているということなんだよ」
「は、はぁ……」
未だ釈然としないところはあるものの大まかな結論だけはなんとかこのたりない脳でも解釈することができた、と半ば第三者だか第四者だか自分のポジショニングがわからなくなってきた僕は思う。
電話越しから聞こえるカチャリという軽めの音がカップとソーサーから奏でられたものだということに僕は確信的な思いを馳せながら町を走る。
走る、というのはジャッカル・ランナーを用いてというわけではない。
自分が最も移動手段として使っている二本の足で、言葉通り僕は崩壊した街を駆けていた。
別段ジャッカル・ランナー自体が走れなくなるほど破損したというわけではなく、エンジンもかかるしなによりつい先程まで数キロ走行した後である。
ではなぜそれを降りて、わざわざ自分から体力を減らすようなことをしているのかというと、それはもちろん“ナンデモ知ッテイル美人ナオ姉サン”が電話で僕らを制したからだ。
___うんうん、そこまでいったらバイクを降りて三時の方向にある細い路地を抜けるんだ。
なに?あんな細い路地を走ったら合成魔からはさみ打ちをくらうだって?
おいおい……一体全体君はいつから私を疑うようになったんだい春斗君?
別に疑ってる訳じゃない?いやいや、それは疑いだよ春斗君。私が既に答えを教えているのにそれに対して、あまつさえ私が最善だと思う計画に異を唱えると言うことはすなわち疑いそのものだよ。疑うということは私にとって罰以外の何物でもないんだけれども、しかしながら君が敢えて自主的にか能動的にか感情的にか作為的にか“恩を仇で返す”みたいな行動をとるのであれば私は君を許さないよ。
そう、君だけはそんなことを私にしてはいけないんだ。
君だけは私だけの君でいてほしいんだ。
私の押し付けた理想を受け入れる君だからこそ、君は私に逆らってはいけない。
それこそ絶対に。
それこそ狂おしいほどに従順に。
それこそ私のように私らしく、ね。
_____以上、異常を終了。
とまあ、こんな感じで命令を受け入れた僕は天子と共に人一人がやっとこさ入れそうな細い路地を、窮屈そうに駆けている。
そもそもこんなところに細い路地などあっただろうか?
いや細い路地など普段あまり通ることもないから無意識に記憶から除かれていただけだろう。
合成魔達も“都合良く”こちらの存在に気がつかないようで、下手をすればバイクなんかよりもスムーズに目的地へと進んでいる気さえした。
本当に“たまたま”こんな前から恋い焦がれていた先輩とばったり居合わせた位のギャルゲーのような気軽さでこの路地が僕らの目の前に現れたのは“偶然”だとしてもまさに不幸中の幸いといった感じだった。




