Blood5: 狂乱ノ力 part15
「がふ__っ!?」
大牙は瞬間的に宙に浮いた状態になり、そこへ更なる追撃が迫り来る。
衝撃が舞い込むそのわずかな時間に大牙はその覇気に満ちた目で現状を把握しようと試みる。
まず大牙の目に映ったのは先程殴り飛ばした大蛇が、ヌラリと瓦礫の山から音もなく這い出て暗躍しているその場面であった。
みれば大蛇の長い尾は深々と地面に突き刺さっており、それはこちらに向かっていたものだと地面にわずかに刻まれたひびが証明する。
つまりは地面から這い出てきたものは先程殴り飛ばした大蛇の巨大な尾であることは揺れる視界の中でもはっきりと短時間で把握することができたということだ。
そして、それが出来たのなら次の攻撃パターンも自ずと理解することは容易い。
口中に鉄臭い液体が充満し、それが漏れでないようにか痛みに耐えるためか大牙は歯をギリリと噛み締めながら二つの手のひらを地面に向ける。
するとそこから爆発的な電撃が放たれ、それはまるでジェットブースターのように大牙を上空高くへと跳躍させる。
しかもそれは単なる移動手段だけとしてではなく真下にいる大蛇の尾へ対する攻撃としても働く。
ズバヂィッ!!と引き裂くような炸裂音が轟く。
「ちっ、眩しいっての!」
もちろんその付近にいたガイルにも被害は直撃する。
のだが、ガイルはすんでのところでそれを回避し大きく距離をとった。
しかし蛇の方はただではすまない。
何十万ボルトの電撃が尾から頭の先まで全身を覆うように浴びせられたのだ。
だが普通であればただの炭になってしまう攻撃があまりにも単調なテンポで当たったことに空中に浮く大牙は訝しむ。
そして、それがただの心配ではないということが判明する。
というのも大牙の放った電撃は大蛇を消し炭にするどころか、全くといって良いほど負傷という負傷を表さなかったからである。
「どういう理屈だっての…ッ!」
吐き捨てるような台詞と共に同じく距離をとる大牙。
結果的には攻めに行った自分がダメージを喰らって帰ってきただけの事態に一方的な歯がゆさと怒りを覚える大牙であったが、それを獰猛な洞察力が瞬時になだめる。
というよりも、新たな発見に頭を思考モードへとシフトチェンジさせた。
「(あの蛇野郎……さっきよりもデカくなってねぇか?)」
思えば一番最初はガイルの手に収まるほどの太さだったのにもかかわらず雷息を放った後には今さっきまで手で扱えていたことが不思議なくらいの大きさになり、さきの攻撃についても同様で明らかに攻撃を加えれば加えるほどそれに比例するように大きさが肥大化しているのは明白であった。




