Blood5: 狂乱ノ力 part7
「って、燃えとる!地面がちょっとしたアスレチックゾーンになっとるぅぅぅっ!?」
我が式の素晴らしい戦闘を目の当たりにした僕であったが、見物料金とでも言うべきか先の戦いで生じた炎が雑草のように地面を埋め尽くしていた。
燃え盛る炎が今度は障害として僕の前に立ちはだかる。
「(こ…れは…ちょっとバイクの方がもたない気がするんだけど……っ…!?)」
何度もいうが僕はなにをしても絶対に死なない。
例え天子がこれ以上の剛炎を吐き出したときても、僕にとっては単なる大火傷するだけのものとしてしか機能しない。
が、しかしジャッカル・ランナーは由佳奈の話では旧式のものと聞く。
そこらのバイクや車よりは頑丈な作りになっているとは思うが、それでも耐えられるかどうかは怪しいところである。
「だとしても…行くしかないっ!!」
ジャッカル・ランナーのエンジンがうねりをあげる。
その勢いをもって強引に炎で作られたデスルートを走り抜けていく。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!あっっっっっちぃぃぃぃぃいっ!!??」
天子はもともと加減をすることを極端に苦手としている。
というのも鬼自体が加減をすること、他者を甘く見下すことを大いに嫌う種族だからである。
そこにはやはり妖の大将格として尊敬に値するものだろう。
が、しかしこれはいくらなんでもやりすぎではないだろうか。
「(天子の奴……久々の登場だからって力み過ぎじゃない?)」
自分のために頑張ってくれている相手にむかって若干の皮肉を含めて苦笑をはさむ。
汗がにじむ。
肌が焼ける。
ヒリヒリというかビリビリと電気的な痛みが僕を襲う。
でも、それも幸運にも長くは続かず直ぐに晴れた視界へと巻き戻される。
それから暫く走りつづけた後、僕は安全な所へジャッカル・ランナーを止める。
「あっ………つ……」
僕はよろけながらも高温になったジャッカル・ランナーから降り立ち、そのまま近くの壁に寄りかかる。
ふと腕をみれば焼きただれていた肌が灰色の煙と共に元通りになる瞬間だった。
痛みも綺麗さっぱり消え、残ったのは体を覆う熱気だけである。
「……ジャッカル・ランナーが冷めるまで少し待つか…」
チラリと視線をバイクの方へと向けるとあまりの熱気にやられ元から搭載されていた自然冷却機能が作動しているようだった。
無理に動かせば逆に時間をとられるのは明白である。
そんなこんなで一時の休息をてにいれた僕のもとに天子が重力を無視してフワリと降り立つ。
「も、もも、申し訳ございませんっ!!て、天子としたことがっ、久方ぶりの戦場ときいてっ、つ、ついっ………っ!?」
「あ~……うん。ちょうど火がないところがあったからそこを走ったから問題ないよ。ケガもしてないしね」
さ、左様ですかっ!?という天子を頷き一つで納得させた僕はポケットにへと手を伸ばす。
そこから携帯電話をとりだし、一瞬壊れてないかどうか心配もしたが特にこれといった異常はないようで通常通り使えた。
僕はそれを確認した後、それを片手で操作して自分の耳元へともっていく。
「春斗様っ、どなたにご連絡をっ?」
「そんなの決まってるだろ。なんでも知ってる女にだよ」
「やあ、なんでも知ってる女だよ」
「どわっ!?い、いくらなんでも電話にでるのが早すぎるだろ!?」
電話をかけてから一瞬のタイムラグもなく、僕の電話にその人はでる。
その人は言う。
なんの戸惑いも躊躇も冗談もなく、ただただシンプルにこう言った。
「当たり前だろう、私はなんでも知っているからね」
博識な女…リリー=カルマによる事態の詳細を聞く時間の始まりである。




