Blood5: 狂乱ノ力 part5
ツー…ツー…とあきらめ悪く鳴り続ける音をスイッチ一つで止めた。
こんなにも状況がせっぱつまっているのに、なんでこんなにも暖かい気持ちになるのだろうか。
あぁ、そうか。と僕は思う。
これを彼女に伝えたくて僕は足を手を頭を命の歯車を動かしていたのか。
答えは見つけた。
あとは、あの分からず屋の薬味少女の手をとるだけでことはすむ。
僕は怪しく黒光りしたジャッカル・ランナーに乗り込む。
エンジンをかけるのにもパスワードがいるようだったが、それも先ほどと同じ番号で解決した。
エンジンが高飛車な音をだしながら荒れ狂う。
今にも爆発しそうな振動を僕の腕に伝えながら、前方についている小さな液晶パネルの指示に従ってサンライズタワーへの安全ルートを導き出す。
運転の仕方は分かるがジャッカル・ランナーに搭載されている対合成魔用の機能を操作する方法はからっきし分からない為、とりあえず目に入るそれっぽいボタンを押してみる。
すると、前方の大きく膨らんだ部分から右側に勢いよくサイドカーが現れた。
それを見て対合成魔用の機能は既に用済みだと悟る。
僕にはそんな機能など必要ない最強の式がいてくれるのだから。
「天子、サイドカーにのれ!」
「はっ!」
僕の呼びかけに応じて天子はサイドカーに乗り込む。
それにあわせて僕はアクセル全開で路上を法律を無視したスピードで駆け上がる。
アスファルトの地面を火花を散らしながらジャッカル・ランナーは走り抜く。
頬が強い向かい風で強く叩かれ、髪が色々な方向へとなびいていく。
デートに向かう前には乗らないほうが良さそうだ。
「天子!僕は運転に集中するから目の前にでてきた合成魔は頼むよ!」
「はっ、承知しましたっ!」
簡単な打ち合わせをした僕らはアスファルトをむやみやたらに傷つけながら目的地へ向かう。
それにしても、どうしてこんな急に強力な合成魔が出現したのだろうか。
役所のセンサーにも反応しなかったという点を考えると、明らかに誰かが後ろで手を回しているのは明白である。
しかしながら、そう考えると人間を補食対象としてしか見ていない合成魔が人間に操られているということだ。
合成魔をあやつるプロセスは協会でさえ確立できていない。
ということは今回後ろで手を回しているのは僕らが知らない合成魔のなにかを知っているということなのだろうか?
疑問が疑問を生み出しその分、頭の空き容量が埋め尽くされていく感覚を覚える。
「(まさか、また外部からの協会非加盟連合かなにかか?タイミング的に多分リリーさん関連なんだろうけど……)」
頭を絞り出しては結局結論がでずじまいで終わってしまうのは、僕のおつむの悪さを嫌に誇張する。




