Blood4:命ノ価値ト君ノ価値 part14
「さてと……それで天子。僕は一体現在進行形でいうのならばどういう状況下にいるんだ?」
まず考えられる候補としては避難すべき一般人。
これはまず始めに除外される候補だろう。
なにせ僕は避難、もとい保護される対象として世間から見られておらず、それでいて事件の一端を知ってしまった手前怖ず怖ずと逃げるのはどうにもしゃくに障る。
お次は魔払い師と偽って行動する。
これは後々面倒なことになりそうなので全力でスルー。
では、僕はなんなのだ。
僕が今すべきことは果たしてなんなのだろうか。
「春斗様、それは天子めに聞かずとも自ずとご理解なのではないでしょうかっ?」
「ん?というとなんだい、僕は自分を敵として今も監視下においている協会のためにこの身をていして正義を貫けって言うのかい?」
最近は随分と平和だったのだが、どうやらそのせいもあってか僕は文字通り平和ボケをしていたようだ。
これまでの僕としての思考回路になかなか行き着かない。
ここは冷静に考えてみよう。
僕は魔払い師の為に動けるだろうか?
自分を今も殺めようとしている存在をしかし助けようなどと思うだろうか。
答えは否。
では協会も、もっといえば鈴山 山葵のことでさえ否定してしまうのではないだろうか。
ならば、ここは動かないというのが得策なのだろうか。
しかしながらそれは僕の心が拒絶する。
僕は頭を張り巡らせる。
僕が不死身の黒血として動くのになんら問題のない理由を考える。
協会のためでもなく魔払い師のためでもなく、もっといえば鈴山山葵のためでもない。
それならば。
それならば。
それならば。
僕は強調するように己に問いかける。
それならばリリー・カルマのために動くのはどうだろうか。
彼女には返しきれない恩がある。
思えば彼女から今後この町で起こる事件の解決を頼まれていたのではないだろうか。
「…頼まれたんだったな……リリーさんに…」
動く理由はできた。
動かなければいけない理由ができた。
ともすれば今から僕がとるべき行動は決まってくる。
「行くぞ天子。僕らも協力するんだ」
「春斗様っ。恐れながら申し上げますがそれは誰がために行われるのでございますかっ?」
天子は問いかける。
さながら答え合わせをするかのように少しばかり得意げな顔をして問いかけてくる。
僕はそれに口元をゆるめながら、しかし気合いのはいった表情で返答する。
「そんなの決まってるだろ、自分の為さ」
「あなたらしいお答えですっ」
言って僕らは駆け出す。
目指すはここから西の方角にあるサンライズタワー。
事件の解決にむかうため不死身の黒血は再度戦場に向かう。




