Blood4:命ノ価値ト君ノ価値 part11
胸の中にあるわだかまりを外に絞り出すように僕は無理に思考を働かせる。
でも、浮かび上がるのはどこまでいっても“だけど”で。
どこまでいっても“それでも”で。
“しかし”で。
“なんで”で。
“どうして”で。
答えは見つからず、むしろそれが更に言葉の壁となって思考を妨げる。
そうなのだ。
僕がどれだけ、どんなに、無駄にでしゃばったところで最後の決断をするのはどうしても残酷なまでに鈴山 山葵……彼女自身なのだ。
そうだとしたら……。
僕が今までしてきたことは一体なんだったのだろうか……。
単なる無理強いか。
「(…違う)」
ならば嫌がらせか。
「(…そうじゃない)」
とすれば答えは何だ?
僕が彼女を助ける理由とはそもそもなんなのだ?
それを考えるための明確な問いはあるか?
そもそも答えなんてあるのだろうか。
誰が決めたわけでもなく本人が決めた死を、決別を、他者がどうこう言う資格などあるのか。
それは強い意志であり覚悟なのではないか?
だとすればそれについて意見を述べるのはどうか。
そう尋ねた僕の頭に浮かんだ言葉はこうだ。
「……邪険…か」
相手の意志も覚悟も決意でさえも、土足で踏みにじるがごとき扱いをしている僕の行為は正にそれだ。
僕は……彼女を救うべきではないのかもしれない。
彼女は救われずして救われるのかもしれない。
そういう運命なのかもしれない。
でも……そうだとしても…。
「鈴山さん。そうだとしても僕は……ッ…!」
そう口火をきろうとした直後であった。
またなんの脈絡もない無駄ともとれる能弁をたれようとした、その時であった。
変化を知ったのは自分の近くのカップに入っているコーヒーが軽く水面を揺らしたのを目にしたときだった。
最初は揺れているのかどうかわからない位の軽い振動だったのだが、それは時間の経過と共に徐々にだが確実に大きな振動へと姿を変えていった。
突如として僕と鈴山さんのいる店内は地震という巨大な振動の餌食と化す。
「な、なんだ…ッ!?」
ゴゴゴゴゴ……ッ!!と腹の奥まで響くような重低音を伴って発生した巨大な地震は、すぐさま店内はもちろんのこと外にいる人々の悲鳴を誘発させていく。
僕は急いで立ち上がるも、あまりの振動に体がついていかず、すぐさま倒れ込んでしまう。
「…くっ……先輩…!」
鈴山さんは無様に床に転んでいる僕の腕を掴み、そのまま机の下へと自分ごと引きずり込む。
恐らくは女性のものであろう甲高い悲鳴と、子供の泣き声を耳にしたまま僕と鈴山さんは揺れが収まるのを机の下で踏ん張るようにして待った。




