Blood4:命ノ価値ト君ノ価値 part5
あるところに一人の少年がいました。
少年はいつもなにかを欲していました。
欲しているといっても、それは別に明確なものではありませんでした。
目に見えないなにか。
極端に言えばこの世にあるのかどうかさえ定かではないそれを、しかし少年は欲していました。
けれども、ここで問題が起きました。
少年は自分の欲するものが一体何なのか分からなくなってしまったのです。
いつしか少年は周りとの関係を拒否しだしました。
孤独が少年の唯一の脱出口でした。
求めるなにかから離れていく感覚がありながらも、それが少年の救いでした。
だからこそ少年は徐々に、だが確実に人との距離をはかるようになりました。
いつしか少年は人という存在が分からなくなりました。
自分が分からなくなりました。
この世界が分からなくなりました。
そんな少年はやがて一人の女性と出会いました。
いつも笑顔で優しい女性に少年は唯一心を許しました。
しかしながらそんな楽しくも切ない日々は終わりを告げました。
少年は全てを失いました。
たった一つの儀式によって。
しかしながら少年自身は生きていました。
確かにあの時、自分の体は半分もなかったのに。
少年は女性の正体を知りました。
なんと自分が今まで接していた女性は悪魔だったのです。
そして少年はそれら全てを知っていた変人にも会いました。
少年は悪魔と変人と共に儀式を止めることを決意しました。
しかしながらその頃には少年はすでに人ではありませんでした。
少年はやはりというかどうしてというか、当然のごとく死んでいたのです。
少年はゾンビとなっていたのです。
より正確には悪魔の眷族という形で。
だからこそ少年は悩みました。
自分という存在に。
悪魔の女性を恨むことに。
人という存在に。
それでも少年は悪魔に付き従う決意をしました。
そうして少年達は戦いに挑みました。
天使という存在に真っ向から勝負をしかけました。
しかしながら少年は勝てませんでした。
立ち上がれませんでした。
ゾンビといっても不死身ではありません。
やがて悪魔もやられました。
そこで少年は選択を求められました。
悪魔の力を手にいれ天使を倒すか。
悪魔と手を切りこのまま人として死ぬか。
少年は悩みませんでした。
少年はその手で自分が愛した悪魔を殺しました。
そうして少年は全てを終わらせました。
人を終わらせました。
ゾンビを終わらせました。
眷族を終わらせました。
限りのある人生を終わらせました。
少年はゾンビと悪魔が混ざり合った不死身の半悪魔となりました。
だからこそ協会は少年を危険視しました。
やがて少年は変人のお陰もあって日の下を歩けるようになりました。
けれども少年が元に戻ることはありません。
いつしか少年はこう呼ばれるようになりました。
不死身の黒血…と。




