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人で無死(ひとでなし)  作者: スズメの大将
第一章:吸血ノ少女
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Blood1:吸血ノ少女 part10

さて、ここまで話を聞いてみたは良いが一体僕は何をすればいいというのだろうか。


ここまでの流れから察するに鈴山さんが周りの人と距離をあけているのは、どういう訳かは知らないが自分が魔払い師だということを伏せておきたいからだと僕は推測してみる。


しかし、そうなってくると僕が出来ることなど全くといって良いほどなくなってしまう。


むしろ小梅先生の方がそういうことは得意だろう。


それなのになぜ僕にあんなことを頼んできたのだろうか。


そんな僕の考えが伝わったのか小梅先生は半ば補足感覚で新たな情報を僕に教えてくれた。


「先生もちゃんとした理由があってのことだと思って山葵ちゃんが魔払い師であることを隠していたんですけど~……実はその事がバレてしまったんですよ~」


「バレた?」


もしかして、僕が襲われている(別にやましい意味での襲うではない)シーンを誰かに見られてしまったのだろうか。


影を操るところなんか見られてしまえば一発で魔払い師だということがバレてしまう。


しかし、次に小梅先生から返ってきた言葉は僕の予想から外れた全く別のものであった。


「他の先生から聞いたことなんですけど~、なんと昨日の放課後にこの周辺に合成魔キメラが出現したらしくてですね~」


「へぇ~……って、ん?昨日…?」


「はい~。それをいち早く察知した聖安役所の職員の方が近くの魔払い師に連絡して討伐に向かってもらったんですけど~、なにがあったかは分かりませんが途中で逃してしまったらしくって~」


昨日の放課後。


どこからかやってきた負傷した合成魔キメラ


そこまで聞いた頃には、僕の中でとある予想がたてられていた。


その予想があっているかどうか、それを知るために僕はある質問をぶつけてみる。


「……あの…小梅先生?その合成魔キメラって……もしかしてグリズリーみたいなでっかい奴じゃなかったですか?」


「ええ、役所の方が熊型の合成魔キメラと言っていたから多分そうですね~。って、あれれ~?なんで春斗君がそのことを知ってるんですか~?」


それを聞いて僕の頭に浮かんだものが予想なんかではなく正しく真実そのものだということが明らかになった。


そこで僕は今一度、頭の整理も兼ねてこれまでのことをまとめてみることにした。


話にてできた合成魔キメラとは昨日の放課後、僕が鈴山さんから逃げていたときにでくわしたあの合成魔キメラであることに間違いがないということ。


その合成魔キメラを負傷させて逃がしてしまったのが役所に連絡を受けた魔払い師だということ。


そしてこれは推測だが、鈴山さんが魔払い師であることがバレてしまった原因は間違いなくそれが関係しているだろうということだ。


合成魔キメラを倒せるのは強力な武器もそうだが、なにより魔払い師の力が必須である。


合成魔キメラを討伐するのに用いる能力と霊力を併用して発動する霊術は、それぞれの血筋のものしか知っていない。ようするに霊術を使っている者=魔払い師というわけである。


つまりはこういうことだ。


昨日の放課後、校内で合成魔キメラを見つけた。


そして、それを鈴山 山葵という少女が霊術を用いて討伐した。


その場面を部活かなにかで残っていたであろう生徒に目撃され正体がバレてしまった……と、こんなところだろう。


思えば彼女は僕が大声をあげて目立つことを極端に気にしていたようだが、成る程そういう理由があったからか。


「…あの~…春斗君?先生の声は届いていますか~?」


「え、あ、はい!あれですよね?なんで合成魔キメラが学校に現れたかっていう…」


「そのくだりはもう終わりました~。先生が聞いているのは、なんでその合成魔キメラのことを知っていたのかっていうことですよ~」


「いや、あれはその……た、たまたま現場に居合わせてですね…そ、それより正体がバレてどうなったんですか?」


実はおたくの生徒さんの鈴山 山葵に殺されそうになったところに奇跡的に現れたんですよ~…などと言えるはずもなく。


本当のことをいって話の流れを大混乱にするのもあれなので、僕は若干の嘘をついてさっさと話を進めるよう小梅先生を促す。


そもそも鈴山さんのクラスでの物静かな状態しか知らない小梅先生なら、本当のことを言ったとしても冗談程度にしか思ってくれないだろう。


「ああ、そうですね~。肝心なのはそこでした~。やっと話の本筋に入れます~」


丸めた拳をポンッと手のひらに軽く打ち付けた小梅先生は、やっとこれからが本題だと言ってきた。


随分と長かった前置きである。


というか、普通僕にお願いする前にまず最初に言うべきことではないだろうか。


僕の担任だった時もそうだったが、この先生はどうも順序というものを度外視している感が否めない。


しかしそんなちょっと外れたところも、ついつい笑って許せてしまう不思議な魅力をもっているのがロリ教師こと橘 小梅という小柄な女教師である。



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