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五章 初めての賞金首



 『wanted』。

 それは指名手配。人類を惨殺し、闇に潜む凶悪なモンスター又は人間。

その力は山を壊し、大地を崩壊させる。その脅威を(完全とは言えないが)消し去るために、

『大陸安全協会』が『ハンターギルド』を立ち上げた。

『大陸安全協会』は他にも『アルタス』と同盟を結ぶよう進言した。

そうして大陸の安全は守られてきたのだ。そしてここにもハンターの男が一人。


「も、もう無理…。」


 長い一日を終え、ベッドに倒れこむ陽道。

一体彼に何があったのか。その一部始終をお話しよう。

それは、魔法を教わった次の日の話であります。


「さて、今日は…。リリィと活動する日だ。」


 魔法の練習の疲れも取れ、起き上がる陽道。

宿を出て、ギルドへ向かう。


「もう来てた。早いな。」


 ギルドに着いたら、リリィがいた。

少し待たせていたようだ。


「遅い。」


「ごめん。」


 怒ってる?リリィに陽道は謝る。

こういう時はとりあえず謝っておけと陽道は思っていた。

リリィが怒ってるのかは無表情だからわからないけど。


「なにやる?やっぱり依頼?」


「wanted。」



 陽道は勘弁してくれと思った。魔法が最強威力で使えるとはいえ…。

それでもリリィは止まらなかった。


「やる。」


「ほら、僕たち二人だし…。」


「三人。」


 リリィはそう答えた。どこからどう見ても二人なのに…。

リリィは背中の剣を指しながら、「これ。」といった。


「それ剣じゃないか。」


「これ、魔剣。人格が、ある。」


「へぇー。ってそういうことじゃなく。結局剣を持つのはリリィなんだから意味ないだろ。」


 陽道はツッコミを入れる。するとリリィは泣きそうな顔になって「ダメ?」と聞いてきた。

陽道は慌てる。目の前で美少女が自分のせいでd泣きそうになっているのを見て、平然としていられるはずがない。

今回はリリィの勝ちのようだ。


「なるべく、弱そうなのを。」


「ありがとう。」


 陽道がそう言うと、リリィはお礼を言った。

心の中でため息をつく陽道。


(剣の効果が役に立った。)


 心の中でひそかにそう思うリリィだった。剣の効果、それはあとで説明しよう。

陽道たちはギルドに入りパーティー登録をする。個人の場合は登録なしだが、パーティーは必要なのだ。

パーティー名は…。正直陽道もリリィもそういうののセンスはない。


「チーム陽道…。」


「やだ。」


 陽道の提案を一蹴。リリィは人の意見に反対することは殆ど無い。それが今回反対したということはよっぽど嫌だったんだろう。

陽道もなんとなくだがそれを理解した。


「じゃあ、何にする?」


「うーん。」


 リリィは首を傾けて考える。一応、考えることはできるのだ。やらないだけで。

少し剣の鍛錬をしすぎただけだ。


「分からない。」


 数分考えた後、答えがこれだ。これじゃあ今日中に終わるのかもわからない。

陽道は必死で考える。とりあえず神話の神様かなんかにしよう、と考えた。

陽道は日本にいた頃、趣味で神話の事を覚えていた。その中からかっこいいのを付けよう。


「タルタロスは?」


「どういう意味?」


「…内緒。」


 神々すら忌み嫌う空間とは言えなかった。言葉の響きがいいから言ったのだ。

リリィは「それでいい」と答えた。


「やっとパーティー登録が終わったな。」


「うん。」


 そしてwantedの情報が書いてる掲示板に向かう。

五枚ほど貼られていた。


wanted:『ティング・ベル』

種族:人間

手配理由:機密

手配者:『アルタス』国王クロウズ・リーア・メルシス

賞金:白金貨100枚

居場所:不明

討伐確認部位:ティングの仮面


wanted:『サラマンダー』

種族:炎竜

手配理由:ムース王国領土『エオミス』壊滅

手配者:大陸安全委員会

賞金:白金貨20枚

巣:ロイド山麓地点。※最終確認時。移動してる可能性あり。

討伐確認部位:サラマンダーの羽


wanted:『魔神王グラファ』

種族:人間

手配理由:殺人、強姦、麻薬売買、誘拐

手配者:大陸安全委員会

賞金:白金貨10枚

居場所:不明

討伐確認部位:金のネックレス


wanted:『大猿』

種族:不明

手配理由:中央大陸小国『バクラート』壊滅

手配者:大陸安全委員会

賞金:白金貨30枚

居場所:不明

討伐確認部位:大猿の尾


 陽道は一番居場所が近いサラマンダーを討伐することにした。

ロイド山はここから少し歩いたところだからだ。※リリィから教えてもらった。

サラマンダーは炎属性。水魔法なら大ダメージ。元素魔法なら大丈夫だろう、と陽道は考えた。

サラマンダーの居場所を目指す。


「リリィ、最初あったときwantedから逃げてきたって言ってたよな?」


「うん。」


「ギルドに貼られてた奴らか?」


「そう。大猿。」


 大猿の強さは知らないが、国を壊滅させたやつだ一人で挑むのは無理があるだろう。陽道はそう思った。

そう言う陽道はサラマンダーに二人で挑むのだが。


「ロイド山までどれくらい?」


「一時間。」


 途中休憩をしながら歩き、何とかロイド山についた。

陽道達は麓にいるであろうサラマンダーを探す。

探していると、辺りの木が燃え始めた。


「サラマンダーか?」


「…あれ。」


 空中に、大きな火の鳥が飛んでいた。科学忍法、みたいな?

アニメで見たことあるぞ、と言いたくなるようなそんな鳥だ。

そして地面を燃やし続けている。陽道は水魔法で炎を消火するのだった。


「キリがない。」


「私が。」


 リリィはサラマンダーが低空で飛んだところを背中の剣で斬った。

しかしサラマンダーは斬られる前に高度を上げた。

サラマンダーは怒っている様子だった。


「激流の水柱、我が手から敵を討て。」


 『灼熱の火柱』の水魔法版。それを手から放出するのだ。

一直線にしか進まないため、躱されれば意味がない。

サラマンダーは当然躱す。陽道は手の向きを変え狙いを定める。

当りそうに無くなると止める。無駄な放出は出来ないからだ。


「キュオオオン。」


 サラマンダーは声を上げた。その瞬間辺りの炎がサラマンダーの近くを浮遊し始めた。


「キュオン!」


 炎は竜のような形になり、陽道達目掛けて突撃してくる。

陽道達はそれを躱したが、再び地面が燃え始めた。


「くそ…っ。天から落ちよ、水柱。」


 空中から水柱を落とす。少し消火できた。全部ではないが当分炎の心配はしなくていい。

陽道は空を飛ぶサラマンダーを見上げ。


「流石は都市堕とし。」


 そう呟いた。そして陽道は苦手なアレを使うことにした。

詠唱を始める。リリィは魔法が使えないので陽道の様子を見てる。


「追撃の水球」


 『灼熱の火球』の水魔法改良版。その名の通り、術者の魔力が続く限り相手を追い続ける。

陽道なりに考えた魔法である。


「サラマンダーを撃ち抜け。」


 この技の面倒なところは発動中常に魔力が減ること、水球を操作しなくてはいけないこと。

陽道は調節することはせず、バスケットボール程の大きさの水球をコントロールする。

威力は強いが消費魔力も多い。


「キュオオオン」


 まだ残っていた炎を集め小型太陽のようなものを作るサラマンダー。

水球は近づいた瞬間蒸発した。


「キュオオン」


 サラマンダーは火球をリリィに向けて撃った。

陽道の詠唱は間に合わない。リリィは小型太陽に向かって剣を構えた。

そして、何かを言った。陽道には聞こえなかった。


「吸収。…グウゥ!」


 リリィは苦しそうに心臓を抑え倒れ込んだ。何とか立ち上がったが。

『吸収』それは諸刃の剣である。魔力の混じっている攻撃を吸収してその攻撃の効果を再使用できる。

だが、他人の魔力を吸収するということは自分にとって異物を吸収するということ。

剣を通してとはいえ、その魔力は微小だが体に流れ込む。それが強過ぎれば死ぬこともある。

先程の涙も、陽道と出会う前に吸収した水魔法の魔力の応用。リリィが泣くことなど滅多にないのだから。


「大丈夫か!?」


「だいじょぶ。」


 陽道に向かってリリィは笑顔を見せた。そんな場合ではないが。リリィなりの安心させる方法なのだろう。

陽道は気持ちを落ち着かせサラマンダーを倒す方法を考える。


「リリィ、さっきの吸収はなに?」


「魔力吸収。この剣の効果。」


 リリィはさっきの技が諸刃の剣であること、吸収した技が使えるということ。

それを教えた。陽道は作戦を一つ思いついたが、諸刃の剣を使うため判断を渋る。

リリィにそれを伝えると、リリィは「やる」と一言言った。


「じゃあ、行くよ?」


「うん。」


 陽道はリリィに向かって、追撃の水球を撃つ。

リリィはそれを吸収する。30発ほど吸収して終わる。

リリィは剣をサラマンダーに構え、詠唱する。


「無限の水球。」


 吸収したすべての水球を、サラマンダーに向けて撃つ。

追撃の水球の効果を持ってるからサラマンダーがいくら逃げても追い続ける。

周りの炎もすべて消火した。


「キュオオオオオオン」


 火を作るが、すぐに陽道が消す。結局全弾命中した。

だが、それで倒れることはなかった。


「ダメージは負ったはずだ。」


「うん。」


 もう一回やることは無理。ここからは自力で倒すしかない、と判断する陽道。

ただ魔力の限界が近い。あまり大技は出せない。

あと数発『激流の水柱』を発動するぐらいだ。


「まだ、やれる。」


「もう剣の力を使うのは無理。リリィが死ぬ可能性もあるだろ?」


「…。」


 陽道がそう言うと黙り込むリリィ。自覚はあるのだ。

陽道からして見れば、命をかけてまで戦おうとするのはすごいことだが同時に滑稽でもある。

生きて帰るのが正しい勝利であり勝って死ぬことは本末転倒である。

『現在』の陽道はそう考えていた。


「まあ、任せろって。」


 陽道はリリィを遠くで見てるように言い聞かせ、一人で戦うことにした。

リリィは既に体力の限界だからだ。


「どうするか。」


 特殊魔法を使うという手もあるが、どんなものかが分からない。

キュベラは少し空間魔法が使えるがどんなものかは教えてくれなかった。

分からないのに使えるはずもない。仕方がないから、元素だけで攻撃することにする。

この時ばかりはキュベラを恨む陽道だった。


「柱と球しか使えないし。」


 もっと複雑な魔法もあるのだが魔力的に考えると得策とは言い難い。

それに調節もより難しくなる。


「柱は当たらない。水球は当たってもダメージがあまりない。」


 水球使用中に水柱を使うのは無理ではない。だが、水柱使用中に水柱を使うのは不可能。

なら水柱使用中に水球を使うのはどうだろうか?水球は消火の役に立たない。却下。

能力的に勝ち目がない。


「全魔力を使用して大魔法を使うか?」


 残された手はそれしかない。大魔法が一つだけある。

その名も『氷牢』。水魔法の一つだ。相手を氷漬けにする。

炎のサラマンダーに通用するかは分からない。だが、魔力を込めれば絶対零度も可能なのだ。

残った魔力を考えれば絶対零度は無理でもそれに近いのはできるだろう。


「かのものを凍らせろ。『氷牢』。」


 サラマンダーは氷漬けになる。そして空から落ちてくる。

リリィを呼ぶ。


「最後の仕事だから。これを斬って。」


 リリィに氷漬けになったサラマンダーを斬るように頼む。

リリィは氷漬けになったサラマンダーを微塵切りにした。

そして虹色に輝く羽が出てきた。これがサラマンダーの羽だろう。


「持って帰るか。」


 サラマンダーの羽をギルドに持ち帰り、白金貨20枚を受け取る。

リリィと半分で分けて、陽道は急いで宿に帰る。

疲れと眠気、そしてリリィが白金貨を返そうとしたからだ。


「も、もう無理…。」


 陽道はベッドに倒れ込み、深い眠りにつく。


次回予告

リリィ…マジで?それ買っちゃう?

高いじゃん。え?私が買う?そういう問題じゃないけど。

「良いの。」

六章驚愕のお買い物

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