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二章 問題だらけの異世界

  

 『異世界』。

 その存在を明らかにすることは出来ない。

否定することは出来る。明らかにすることはできない。

無いかもしれないあるかもしれない。

そんな幻想の世界に一通のメールだけで行ってしまった男がいる。

その男の名は…。


「なんじゃここ…。」


 見渡す限りの大草原。太陽も春みたいな暖かさ。

そして最大のポイントは…ここは異世界だ。

この男こそ異世界に行った男。その名は陽道。


「(もしかして本当に異世界に来ちゃった?)」


 陽道は久々に頭をフル回転させ、現状を把握しようとする。

どう考えてもここが異世界だという結果にしかならなかったが。


「(もしかして、あの設定も反映されてるのか?)」


 そのステータスを見る方法がわからない。

とりあえず、考えられる言葉を唱える。


「ステータスメニュー…ダメか。ステータスウインドウ…出てきた。」


 そっくりそのままのステータスが出てきた。

その結果に満足した陽道は次の行動を決める。


「とりあえず、人がいるところに移動しよう。いるか分からないけど。」


 人がいるかは分からないが、探してみることにした。

言葉については設定のとき自動翻訳を余ったポイントで入れたから大丈夫だろうと考える。

出来なかったらその時考えることにする。


「待てよ…」


 魔導士だから魔法を使えるはず。と思ったけど陽道は魔法の使い方が分からない。

やはり、街に行って教わるしかないと考え再び歩き始めた。


「疲れた…。」


 二十分ほど歩いたら体が急激に重くなった。ステータスを見てみたら体力が5になっていた。

三倍にして15だからスキルを外せば死にかけるだろう。

陽道は仕方なく休憩することにした。休憩することで回復するかは謎であるが。


「喉乾いたな。」


 飲み物がないから喉を潤すことができない。異世界に来てから二十分、早くも帰りたくなってきた陽道だった。

休憩してると、熊みたいなのが近づいてきた。というか、突進してきた。


「うわ、やべぇ。」


 いそいで再設定をする。再設定以外の全部のスキルを外してそのポイントを腕力に振る。

腕力はどれぐらい上がるか分からないが、陽道は100まで上げる。


「喰らえ。」


 巨体の熊は攻撃が当てやすい。パンチ一撃で熊は死んだようだ。

陽道は自分の力に恐れた。しかし腕力は上げといたほうがいいかも、と思っていた。

魔法が使えないうちはポイントを腕力に振ることにした。


「あれ?」


 気がつくと目の前の熊は、ひと切れの肉になっていた。ドロップアイテムというものか、と陽道は予想する。

入れ物がないので諦めることにした。


「考えてみたら食べ物もないな。」


 飲み物は二日ぐらいなら死なないらしいが食べ物がないということは致命傷だ。

おまけに陽道はサバイバルなんてしたことがない。現状は詰んでいるとしか言いようがない。

死にかける前に街に付けばいいのだが。


「無理ゲー、だね。」


 腕力を半分にして体力に割り振る。これで少しはマシになるだろう。

とにかく先に進むしかない、と考え歩くのを再開する。


「またかよ…。」


 今度は五体の熊御一行が出現した。ちと厳しいかな。

体力を元に戻して腕力に割り振る。


「はっ。」


 二体いっぺんに攻撃する。案の定二体とも死んだようだ。

陽道は熊の反撃に備え防御態勢に入った。


「グオオッ」


 三体の熊が突撃をしてきた。陽道は一体の熊にアッパーを喰らわせる。

しかし、熊の攻撃は止まらない。


「はいっ。」


 一体の熊に右ストレートをかまして、もう一体の熊にもストレートパンチを繰り出す。

なんとか倒しきることができた、と思ったら体がぞわっとした。

しかし何も異変がない。もしかしたら、と思いステータスを開く。やはり魔導士のLvが上がっていた。


「魔力が上がってるな。」


 Lvアップすることで、魔力が上がるらしい。ゲームみたいだな、と陽道は思う。

ゲームと違うところは体力が0になれば恐らく死ぬということだ。


「ひっじょうにキビシー。」


 陽道はつい叫んでしまった。誰も居ないことを確認して、何事もなかったように歩き始める。

どこの世界も現実は厳しいのだ。


「どうしようか。」


 歩けば誰か来るかもしれない。言葉が通じるように自動翻訳は付けておく。

いくら強くても意思疎通ができなければ意味がない。

問題は陽道が人と向き合って話せるかどうかだ。買い物などに行く時も頷いたりするだけだから話したりはしない。

ここで話さなければどうなるかは分からない。陽道は少しの勇気が必要になる。


どかぁぁぁん!


 十分ほど歩いてると近くで爆音が聞こえた。

陽道は爆音があった場所に駆けつける。


「居た!」


 そこには六人の人がいた。黒いフードをかぶった人が近づいてきた。

どうやら陽道に気づいたらしい。陽道は嬉しさと緊張で体が固まった。


「貴方は…?」


 フードを深くかぶっているので顔は見えないが声からして男らしい。

陽道はその男が出す不気味な雰囲気にのまれながらも声を出す。


「その~…旅人です。街に行きたいのですが道に迷ってしまって。」


 咄嗟に思いついたことを口に出す。嘘はついてない。

とりあえず、目の前にいる男がいい人だということを願う陽道だった。


「そうですか。よろしければ街まで案内しますが?」


「ありがとうございます。」


 陽道はホッと一息つく。男は案内する前に仲間を紹介するという。

陽道も知り合いは多いほうがいいと考え、それに従う。


「まずこの、赤毛の筋肉男がアイリスです。」


「アイリスだ、よろしくな。」


「よ、よろしく。」


 そのでかい体に陽道は後ずさりしてしまった。

ものすごい迫力だ。腰に銀色の剣がある。おそらく剣士なんだろう。


「このひげもじゃが…鍛冶師のグレイアスです。種族はドワーフ。」


「よろしくな、ガハハ。」


「よろしく。」


 ひげもじゃだが、性格的に陽道は好印象を抱く。迫力といったものがないからだ。

武器は手にもっているハンマーなのだろう。


「このイケメンがグラン・ヴォン・フーヴァです。職業は聖騎士。」


 三十代中間といったところだろうか。それでもイケメンだ。

陽道は軽い嫉妬のようなものを抱く。銀の鎧と銀の槍が武器らしい。

武器もかっこいい。


「この巨乳の…おっと。清楚な女性がエリスです。」


「よろしくお願いします。」


「あ、こちらこそよろしくお願いします。」


 女性に頭を下げられ陽道は敬語になってしまう。あまりそういうのに慣れていないからだ。

修道女のような服が特徴だ。陽道は恐らく回復魔法を使うのだろう、と考える。


「そして、このジト目の少女が魔神使いのフランです。」


「使役してるわけじゃないけど…。よろしく。」


「…こちらこそ。」


 魔神使いってなんだろう?と陽道は考え込む。そのうち聞けばいいかと結論を出す。

今は街に行くのが先決。


「そして、私が魔導士のキュベラ・クリエス・リーンです。よろしく。」


「あ、はい。よろしくお願いします。…僕の名前は陽道です。さっきも言ったとおり旅人です。職業は一応魔法使いです。」


 魔法を使えないのに魔導士と言うのは変な感じがするので、魔法使いといっておく。

魔法を使えるようになれば胸を張って魔導士といえる。


「まぁ、魔法使いといっても魔法の使い方が分からないんですけどね。」


「そうですか。では魔法の使い方も今度お教えしましょう。今は街に行くことが先ですね。」


 キュベラは地面に落ちているドロップアイテムと思われる角を拾ったら、陽道についてくるよう言って歩き始める。

陽道もキュベラについていく。


「(いい人でよかった。)」


 陽道は改めてそう思う。もし、悪い人だったら六対一で戦ってたことになる。

不利すぎる。陽道は安易に見つかるような場所にいたのは軽率だったんじゃないかと考える。

まあ、過ぎたことだしいいかと自答したが。


「あと少しで街につきます。ハンターギルドまでご案内しましょう。」


 ハンターギルドと聞きますますゲームみたいになってきたなと陽道は思う。

ハンターとかあるならそれになろうと考えながら、キュベラの提案に頷く。


「王都につきました。」


 大きな門を越えて街に入る。賑わっているようだった。

街並みはレンガの建物が多かった。


「ギルドはこちらです。」


 陽道はキュベラについていく。しばらく歩くと、大きな二階建ての建物についた。

その建物の中に入り、受付のようなところに向かう。


「アリスさん、換金お願いします。」


「角ゾウ討伐の証ですね。銀貨三枚です。今後ともよろしくお願いします。」


 受付のおねえさんに慣れてる感じで、キュベラは話しかける。

陽道は少し羨ましく思ったりする。


「あと、この人にギルドのこと教えてあげてください。」


 キュベラは陽道を指差し、そう言った。

陽道は頷いた。


「分かりました。」


「それでは、陽道さん私たちはこれで。」


 そう言ってキュベラは、ギルドを出ていった。帰り際に銀貨を一枚くれた。

今日の宿代を貸してくれた。利子なしで。


「それではギルドについて説明させていただきますね。」


 そして説明が始まった。


 ハンターギルドはウラド帝国、ムース王国、ケリン皇国の三国と周辺の小国が運営している『大陸安全委員会』のプロジェクトです。

“戦える”一般市民は大抵ハンターギルドに所属してます。ハンターの仕事は主にギルドに出されてる依頼を受けるか、『ANTEWD』を倒すかです。

『WANTED』は人間に甚大な被害を与える可能性のあるモンスターや、凶悪な犯罪者です。依頼を受けるよりかは報酬が高いです。

依頼の達成率や『WANTED』討伐数などで成績が与えられます。ギルドの掲示板に『個人成績』と『パーティー成績』のbest10が掲示されてます。

一位を目指すのもいいでしょう。上位に入れば特典が与えられます。頑張ってくださいね。富と名声を手に入れるかはあなた次第です。

それでは説明を終わります。


 陽道はなんとか説明を理解した。つまりは『WANTED』を狩りまくればいいということだ。

陽道は明日から働くことにして、宿を探す。


「なんかないかな。」


 しばらく歩くと、“影と光亭”という宿を見つける。雰囲気的にそれなりに繁盛してるようだ。

酒場でもあるらしい。しかし陽道には関係ないことだった。陽道は酒が飲めない。


「すみませーん。」


「おう、今行くぞ!」


 奥から男の声が聞こえる。酒場が忙しいのだろう。

陽道が暇潰しに頭の中でリバーシをしてると、おっさんが出てきた。

筋肉すごいな、と陽道は思う。


「今晩泊まりたいんですけど…。」


「夕食付きで銀貨三枚、夕食なしで銀貨一枚だ。」


 陽道は銀貨一枚払い、泊まることにした。

夕食なしならなんとか我慢できる。明日お金を稼げばいいだけだ。

そして、夜が開ける…。

次回予告

飯食べてないし『WANTED』とは戦えないな。

納品依頼の出てるビックベアーを倒すか。

あんれぇ?草むらから少女が出てきたぞ。

なになに…旅をしてる剣士?へぇー。

それじゃあ僕の仲間になってくれよ。

次回タイトル ヒロイン、登場


   おたのしみに。

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