一章 これなんて王道?
『無職』。
現代においてこれは無視できない問題であろう。
無職にも色々ある。リストラやニートその他諸々。
そしてここにも、『無職』の男が一人。
「暇だなぁ。」
こいつの名前は中川陽道。
親が金持ちなのを良いことに自宅でネットやゲームに没頭している駄目人間である。
暇なら働けよ、と言われるところだが次男だし親が甘やかしたのもある。
そのせいで駄目人間になった。勿論実際に悪いのは陽道一人である。
「さて、ネットでもやるか。」
パソコンを立ち上げ、お気に入りのサイトを開こうとする。
いつもなら既にネットの世界にのめり込んでる所だが今日は違った。
メールが来ていた。知り合いのいない陽道にメールを送る人がいるとは思えない。
陽道自身もそれは分かっていた。どうせメルマガだろうと思いながら受信ボックスを開く。
「(kamisama@tennkai.na.jp?)」
メルマガですら無いことは陽道は分かった。それならこのメールは何なんだ、ということになる。
陽道はイタズラだ、と思い受信ボックスを閉じてネットの世界に没頭する。
翌日
陽道の朝は遅い。陽道は早起きが苦手だった。その為中学のとき朝練のある部活は見もしなかった。
陽道は徹夜も苦手だが。朝起きて、今日もネットをやる。それぐらいしかやることがないからだ。
土日は出かけたりするがそれ以外は家にいた。
「(今日もメールが…)」
メールが十件届いていた。それも全部同じ内容で。
イタズラなら根気あるな、と溜め息混じりで陽道は言った。
イタズラメールを開くようなことはしない。何が起こるか分からないからだ。
「何考えてるんだか。」
陽道は深く考えない人間だった。だからメールの意味についてもあまり考えなかった。
そして一ヶ月が経った。
メールの数は日に日に増して行き、一ヶ月後には千通を超えていた。
こうなるとイタズラの領域ではない。陽道も流石にこれは…と考えた。
その一方でメールを開きたいと思い始めた。
「だけどねぇ…。」
開いてウイルスなどに感染されても困る。だからこそ頭を悩ませる。
開けば楽になると考え始めた。
「ええい!」
メールを開いた。陽道はウイルス感染などがないことを確認してメールの内容を読む。
そこには文章などはなくただURLが貼ってあった。陽道は疑いなくそのURLをクリックした。
「なんだこりゃ。」
そこには、
おめでとうございます。貴方は異世界に行けます。
記念にボーナスポイント300ポイントを贈呈します。
次へ
と書かれていた。他には何も書いてない。白い画面にただそう書いてあった。
陽道はここまで来たら最後までやろうと言う気持ちで、次へをクリックした。
そして、職業とスキル、ステータスを選択する画面がでてきた。
「なんなんだろうね。」
陽道は画面を見ながら考える。すぐにやめたが。
とりあえずやろう、と結論を出した。
「職業は…。」
魔導士やら剣士やらあるが何にしようかと悩む。
陽道は何となく魔導士にした。ポイントが10ポイント減った。
残り290ポイントだ。
魔導士Lv1
効果 魔力倍増
スキル 魔法使用
職業を決めたら次はステータス。腕力とか魔力とか知力がある。
陽道は知力は恐らく魔法関係のものだろうと考える。
魔導士を選んだならそれは必要だ。初期ステータスはこんな感じだ。
腕力:8
知力:14
魔力:23×2
気力:6
体力:11
これが多いのかどうか陽道は悩んだ。
とりあえず知力と魔力を上げることにした。
ここでもポイントを消費した。3上げる度に一ポイント減っていく。
結構少ないようだ。
「こんなものかな。」
陽道はそのステータスに満足した。
そのステータスは、
腕力:10
知力:20
魔力:33×2
気力:8
体力:15
残りポイント244となった。多分少なくはないだろう、と陽道は納得した。
次はスキル。ここでもポイントを使うことは分かりきっていた。
恐らくここで一番使うことも。
「便利なのがいっぱいあるな。まずは、使用魔法からやるか。」
魔法は三種類あった。オリジナル魔法、元素魔法、特殊魔法だ。
陽道は元素と特殊を選んだ。30ポイントを消費した。
これで終わりにしてもいいのだが、他にも便利なのを選ぶ。
「再設定とか…。ここまで真剣にやってきたのが馬鹿みたいに思えるな。」
再設定を選択すると100ポイントを消費した。
便利なほどポイントが高いのだろう。
「残り114ポイントか。」
結構消費したのだろう。陽道は次のスキルを選ぶ。
そして、すごいのを見つけた。
全ステータス三倍
選択すると、100ポイントを消費した。
魔力倍増は無効になった。予想はしていた。
最後の14ポイントは何に使おうか、と考える。
「これかな?」
とりあえずポイントを消費しないと気が済まないから適当に選んで0ポイントまで消費する。
ポイントを使い終えたのを確認したら、次へ進む。
メッセージがでてきた。
ありがとうございます。
異世界を存分にお楽しみください。
暫くして、陽道は自分の体と意識が離れていくのを実感した。
自分の行く末を心配しながら。
次回予告
異世界に降り立った男、陽道。
魔法を使ってみよう。うん、使い方分からん。
人里を探すか。→すぐに体力が切れる。
次回タイトル『問題だらけの異世界』