8荷台
辺りはすっかり暗くなっていた。
さすがに店に戻るのは気がひけたので、尚広と翔子はコンビニに寄って、飲み物とパンを買った。
最初は弁当にしようとしたのだが、先ほどの出来事に胸がいっぱいで食べる気が起きなかった。
帰り道にあった地区の集会所の駐車場に軽トラを停め、パンを食べる事にした。
照明がほとんどないので、辺りは真っ暗だ。
「実は私の初恋、尚くんだったんだ」
食べながら唐突に翔子が言った。
思わず尚広はゲホッゲホッとむせ、涙目になりながらも瞳を大きく開く。
「……え?俺も……保育所の時好きだったよ」
翔子は顔をひどく赤くした。
「そして、私の初恋は終わってないの」
言った表情が、可愛くて。
心臓が、破裂しそうだった。
「俺は今日、もう一度翔子に惚れ直したよ」
「調子いいんだから」
「まあね」
「浮気は許さないよ」
尚広は無言で頷いた。
ふと見上げた夜空には無数の星が瞬いていた。
こんな時、田舎で良かったな、と思う。
二人で車外に出て、ひんやりした風にあたる。
まだ寒い時期なのに、体の芯はカッと熱いままだった。
尚広は何気なく軽トラの荷台に立つ。
翔子もタイヤに足をかけ上がってきた。
尚広が手を貸す。
翔子の手は尚広より冷たくて小さかった。
「月が綺麗だね」
「そうだね」
家に帰ると尚広と翔子はこんな時間まで何していたと、親に怒られた。
『 SUB:じつは
FROM:錫根翔子
同じ大学に合格したよ。
これからもよろしくね』
終