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4久々

「ふぅ……あぁ、痛ぇ〜」

 財布、とられなくてよかったな。ぼこぼこにされそうなら渡そうとは思っていたけど。


 財布がないのは尚広の嘘だった。


 エイプリルフールでよかった。今日がそうじゃなかったら、あいつらが言わなかったら、嘘をつくという発想もなくカツアゲされてたかも……。

……とりあえず缶コーヒーでも買いに行くか。


 そう考えると、車に乗せたボディバッグをとり、尚広は道の駅の自販機へ向かった。



「え?尚くんだよね?」

 尚広が自販機でお釣りを受け取っていると、後ろから声をかけられた。

 尚広の家の三軒先に住んでいる、幼なじみの錫根翔子(すずねしょうこ)だ。

古風な三つ編みに自転車に乗りやすいようにか、もっさりしたジャージに短いコートを着ている。尚広は高校が別になってからほとんど会っていない。

「おっ翔子か。すげー久しぶり」

「それより、さっきのって……」

 どうやら先ほどのやり取りを見られていたらしく、翔子は軽トラと頬の紅葉を交互に見てきた。

「えっと、エイプリルフール的な美人局(つつもたせ)未遂?」

「ええっ。大丈夫だった?」

「まあね。お金は無事」

 尚広は恥ずかしいところを見られたなぁ、と頬を撫でながら苦笑いした。

「もう、これからは気を付けなよ尚広くん。社会に出たら、もっとそういう人増えるんだから」

「わかったよ。ところで翔子はなんか用事でここへ?」

「図書館に用があって。ついでにお使い」

 翔子は自転車カゴを入れたピンクの買い物袋を見せた。ネギがはみ出ている。

 帰りも自転車らしいが、ここから家まで40分はかかるだろう。

「俺、このあと暇になっちゃったから、送って行こうか?」

 尚広は軽トラを指差した。

「本当にいいの?助かるけど」

「ああ。代わりに愚痴聞いてくれよ」

ガコン、コンコココン

 軽トラの荷台の一辺を外し、ひょい、っと自転車を積む。軽々と持ち上げた手付きに翔子は

「尚くんって結構力持ち?」

と感心したように聞いてきた。

「バカ、いつまでも子供じゃないんだからさ、フツーだよ普通。一般男性の腕力です」



 道すがら尚広は、軽トラでデートになったいきさつ、先ほどの事件などについて話した。

「そうなの……大丈夫、尚くんは性格良いから、すぐ次があるよ」

「デートプランも練ってたんだよぉー」

「うんうん大丈夫だよ。ね。だからさ、安全運転して」

 微妙な表情をしながらも翔子は慰めてくれた。

「うん」

「さっきの話だけどさ、プラン作ったなら、せっかくだから私とデートしない?」

 翔子は一瞬、顔を赤くして言った。

 尚広はどうしてそういう発想になったかわからず、「へ?」と間抜けな声を漏らしてしまった。

 翔子はいけない、と表情をくるっと誠意ある笑みに変えた。

「何て言うか、そう、気晴らしに。あと、今後好きな人出来た時の練習がてら、ね」

「しょーこぉーありがとう」

 尚広はごしごしと涙を拭った。

「こらっ。前見なさい!」

 そうして二人は買い物を翔子の家に一度置いてから、出かけ直すことにした。



 翔子の家に着くと、尚広は翔子の婆ちゃんにしきりに家に上がるよう言われた。

「すぐ出かけるから大丈夫です」

「あら、そお?」

「ちょっと待っててね」

 翔子は中に入っていった。

 二人の様子を見て婆ちゃんはにっこり笑って、草むしりに戻った。


 玄関が開き、戻ってきた翔子はコートはそのままだけど、先ほどのジャージ姿ではなかった。

 シャツワンピースに細身のジーンズ、髪も三つ編みをほどいてポニーテールにしている。翔子の髪はもともと色素が薄く、三つ編みの跡のうねりもあってずいぶん垢抜けて見えた。

「お待たせ。変、かな?」「全然!大丈夫だ。着替え速いな」

「え?そうかな」

「始兄さんなんて男のクセに三十分とかザラだよ」

 着眼点はそこなんだ?と翔子は本日何度目かの微妙な顔をしたのだった。


「で、今日のプランは」

「まずはじゃーん。公園で焼き肉デス」

 尚広は冷凍ジンギスカン、切ってタッパーに入れた野菜を見せる。

「おお〜」

 パチパチと翔子が手を叩く。

「そして、そのままサイクリング」

「だからもう一台、自転車乗ってたんだ」

「あとは、流れでなんとなく」

「なんとなくはプランじゃないでしょう」

「へへへ」

 尚広は華恋だったら、雰囲気がよくなれば告白を考えていたから翔子にはなんとなくでごまかした。


――翔子も華恋ちゃんと比べれば地味だけど、よくみれば可愛いんだよな。胸も大きいし。


 尚広は発進のバックミラー確認中、そう、ちらりと思った。


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