3待ち合わせ
「あと、十分か。ヒマだな」
尚広はスマホで時間を見て、そしてぼーっとネットニュースに目を通した。
コンコン
――華恋ちゃんだ。
尚広は急いで窓ガラスを手回しであける……(パワーウィンドウはついていない)が焦れったくなって車から降りた。
華恋は露出の高いトップスの重ね着にふんわりした白いスカートを身に付けている。
彼女はにっこり笑って言う。
「マジで、軽トラで来たんだぁ〜」
「ゴメンね。これしか都合付かなくてさ」
尚広は頭をかきながら謝る。
「エイプリルフールかと思ったのになぁ」
――そういえば、今日はそうだったのか。
「ふふふ。尚広のお父さんクラウン乗ってたから、正直期待はずれ」
華恋は見下した嫌な笑顔に表情を変えた。
「ま、からかいに来ただけなんだけどさ」
「……は?」
一体どういうことだ? と尚広は混乱した。
「良い車乗ってきたら考えてもよかったんだけど」
「つまり、どういうこと」
「四月馬鹿はアンタって事よ」
華恋が携帯を操作すると黒塗りの車高を下げた、低音響くヤンキー車がすぐ近くに止まった。
「オマエかァ!オレの彼女にちょっかいかけたのは」
窓を開け、運転席から金髪に派手なピアスの男が怒鳴る。
「か、彼女?」
「アァン?華恋のことだよ!」
「え?」
「たっくん。もーいいよぉ〜。待ち合わせに軽トラで来るようなだっさい男、ほおっておこう?」
「お前は口をだすなよ」 言って金髪は車を降りた。服装も派手、いかにも鍛えた体つきで威圧感のある男だった。
「でも喧嘩はダメだよ。せっかく進学できたんだから」
「あぁ、わかったよ。じゃあ、ほら迷惑料寄越せよ」
金髪が手を開いてこちらに向ける。
「……」
――よく考えればわかったことだ。普通の俺がこんなに可愛い子にデートに誘われるはずがない。
「どうした?ビビったんかァ?!」
ごそごそ
財布をさがす。尚広は顔を白くして言った。
「さ、財布ない、忘れました……いや、来る途中コンビニ寄ったから、落としたのかも。全財産が……」
「ぷぷっ。マジでぇ〜!だっさい」
「最悪じゃねーか」
「……すみません」 尚広は頭を下げた。金髪が車を降りる。
「たっくん」
「わかってる、喧嘩じゃあねェよ」
尚広はその言葉に安心しつつも身構える。
パァン
金髪は尚広の頬を平手で叩いた。
「土産だ。花見の前に紅葉狩りだなァ」
「……ごめん……なさい」
「オレは根に持たないほうだからな。ま、もう華恋には近づくなよ」
「はい」
そして華恋は金髪の車に乗って、ちらっとこちらを見ながら去って行った。