2話棍棒パンを美味しく食べる方法
「錬太郎さん!その馬鹿みたいに硬……、フランスパンを美味しく調理してくれるって本当ですか?!」
ほんとになんで僕はこれを調理しようとしてるんだよ、と思いつつエプロンを付けながら軽く頷く。
跪いたお姉さん、灯と名乗るこの人があまりにも不憫だったからなのか。
お互いに自己紹介を終えたあと、自分の家に入れ
「このパンを調理してみる」
と言ってしまったのである。
鼻歌を歌い足をバタバタさせながらソファーでくつろぐ灯さん。
それにしてもデカすぎる。水分でふやかしたとしてオーブンや電子レンジに入れようにも……。
一応これはフランスパンなので、棍棒に見えて裏側は平らのようだ。
調べたところによると、水につけてふやかしたり平らなほうから切ると綺麗に切れるらしい。
蛇口を捻り、念入りに水をかけまな板の上に置いた。
そして、平らなほうを上にしてセット完了。あまり使う機会のなかったギザギザのとても長い包丁を取り出す。
いわゆるパン切り包丁と言われるもので、パンを切ることに特化している。
気合いで半分に切った後、湿らせたフライパンに棍棒の片割れをしっかり水につけ入れた。
「上手くいくかなぁ……」
そう呟きながら火をつけ、硬くなったフランスパンが復活することを祈りながら熱していく。
「いい匂い!調子はどうですか?」
「ヒッ...びっくりしたぁ今柔らかくしてます......よ」
振り返ると爪先立ちをしながらフライパンを覗き込んでいる灯さんがいた。
後ろから覗き込んでるのでとても顔が近い。体幹がとても良いのか、体は腰からくの字にお辞儀するように前に倒れ両手は後ろに伸ばしている。
サラサラの短い白髪とほのかに香る心地よいパンの香りと少し焦げたような匂いが......。焦げたような?
この違和感を解消すべく、いくつか質問をしたかったが一旦は飲み込んだ。
お腹がすいた!もう限界!と言ってるかのような腹の虫がグゥーと鳴ったからである。
「軽くパンを食べますか?」
と聞いてみたところキラキラした目で大きく何度も首を縦に振った。
空腹ゆえか今にも食べられそうな瞳から目を逸らしながら電子レンジで解凍した塩パンを灯さんに手渡した。
「実はパン作りが趣味で、昨日仕込んでた手作りパンですが焼きたてなので良かったら……」
「やはり貴方は創造主なのですね!!」
間髪入れずに返された言葉が予想外すぎて
「ほぇ?」
と気の抜ける返事をしてしまった。




