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第六話 ハンバーガー

「ねえ、本当にいいの?」


 響詩に手を引かれる僕は言った。


「何が?」

「君、アイドルなんだろ?」

「それが?」

「アイドルの君が、異性の手を引いて、デデデデデートに繰り出していいのかって聞いてるんだ」

「大丈夫大丈夫! ちゃんと変装するから」


 ……ほっ。

 なんだ、変装してくれるのか。

 僕なんかとデートをしたせいで、彼女のアイドル人生が絶たれたなんてことになったらどうしようと思ったが、それならまあってそんなわけないだろ!?


「君、自分の立場わかってんのか。迂闊すぎるだろ!?」

「まあまあ。あ、駅着いた」


 文句を言う間もなく、僕達は駅に到着した。

 無理やり改札を通らされて、トイレの方に歩いた。


「じゃ、ちょっと待ってて。変装してくるから」

「……わかった」

「うん」


 響詩がトイレに向かおうと踵を返した。

 ……とりあえず、彼女がトイレにいる内に、逃げ出そうと思っていた。


「あ」

「……っ」

「あたしがトイレ行っている間に帰ったら、家に迎えに行くね」


 ……実家の位置も特定されてる。

 未来の僕、ネットリテラシー低すぎだろ。

 待つこと数分。


「お待たせ―」


 彼女がトイレから戻ってきた。


「……ちょっと君」

「んー? 何ー?」

「変装って、サングラスだけじゃないか」

「そだねー」

「馬鹿か?」

「わあ、酷い」


 辛辣な言葉を浴びせるも、ダメージを負った様子はない。


「えー、駄目? プライベートはいつもサングラス付けてるけど、バレたことないよ?」

「……高校の制服に金髪、サングラスなんて風貌、絶対目立つだろ」

「確かに」


 響詩は納得した様子だった。


「さすが。賢いね。ハル君!」

「多分、君が賢くないだけだよ……」

「じゃあ、コンタクト外して眼鏡かけてくるから、また待ってて」

「……あ」


 響詩はまたトイレに向かった。

 女子トイレの前で待つの、ちょっと周囲の目が痛いんだけど……。


 また待つこと数分。

 赤色のフレームの眼鏡をかけた響詩が、トイレから戻ってきた。


「お待たせ」

「待たされました」

「ごめんごめん」


 口では謝っているが、心から謝罪している風ではない。

 ……まあ、いいけどさ。


「それじゃあ、今度こそ行こうか」


 ……行きたくないけど、住所バレしている以上は仕方がない。


「わかったけど、まとまったお金ないよ。僕」


 とりあえず、これだけは伝えておかないといけないと思った。


「大丈夫」


 響詩は財布からクレジットカードを出して、ドヤ顔を見せた。


「あたしが全部払うよ。だってアイドルだから」


 アイドルだから全部払うの意味はわからなかったが、それならば有難い限りだ。


「必ず今度返すから」

「え、別にいいよ? あたしが無理やり誘ったんだし」

「無理やり誘った認識はあったんだ。……いいよ。こういう貸し借りの関係は嫌いなんだ」

「……ふふっ」

「何さ」

「いやさ、実に君らしいと思って」


 ……なんだそりゃあ。

 まもなく電車がホームに滑り込んできて、僕達はそれに乗り込んだ。

 座席を見るが、空いているのは一人分だけだった。


「君が座りなよ」

「え、ありがとう」


 響詩は座席に腰を下ろした。

 電車にしばらく揺られて、僕達はターミナル駅で下車した。


「……なんかさ」


 響詩は、つまらなさそうに僕を見ていた。


「ハル君、意外と女の子の扱いに慣れてない?」

「は? ……まあ、花蓮とよく遊んでいるからかな」

「ぶー。……つまんない」


 そんなことを言われても困るんだけど……。


「で、どこに行くの?」


 僕は話題をすり替えるために尋ねた。


「……んー。そうだね。正直、ノープランなんだよね」

「なんだよそれ」

「……とりあえず、お腹空かない?」

「空いてない」

「そっか。じゃあ、早めの夕飯にしよう!」

「……わかった」


 話が通じず、面倒臭くなった僕は同意した。

 響詩が連れていった先は、ファストフード店。どうやら夕飯はハンバーガーで済ますつもりらしい。


「仕事、どうだったの?」

「まあ、今日はぼちぼちかな。次クールのドラマの出演が決まっててさ。その収録でね」

「へー。すごいんだね」

「すごいかはわからないけど、楽しいよ!」


 響詩はハンバーガーを食べながら楽しそうに答えた。

 ニコニコ笑いながら仕事について語る彼女の姿を見ていると、楽しい、という言葉に嘘や偽りはないように感じた。


 ……少し、羨ましいと思った。


「さて、腹ごしらえは済んだね」

「うん」

「じゃあ、次はあそこに行こう!」


 響詩が指さした場所は、カラオケ店だった。


「……えー」


 正直、歌を歌うのは苦手だった。

 日頃から大きな声を出さないたちだから、たまに大きな声を出すと激しい違和感に襲われてしまうのだ。


「えー、じゃない! 行こっ」

「……わかった」


 しかし、響詩は僕がいくらカラオケに行きたくないと言っても聞くはずもなかった。

 僕は渋々、彼女に付き合ってカラオケ店に入店した。

日間ジャンル別15位ありがとうございます!

感謝の前倒し投稿!

ストックはないけどね!


哀れな僕に、評価・ブクマ・感想をよろしく・・・。

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