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斉藤君の不幸

作者: 佐藤コウキ

 斉藤君は高校を卒業した後、運送業者に就職しました。彼は倉庫の荷物整理係に配属され、毎日、一生懸命働いていました。


 ある日、斉藤君は不思議なことに気が付きます。なぜか彼だけに嫌な仕事が回ってくるのです。同期で入社した人間はたくさんいるのに、その人たちには普通の仕事で、斉藤君だけが面倒な作業をしているのでした。

 斉藤君は先輩に聞いてみました。最初は適当に返事をしていた先輩ですが、斉藤君が何度も聞くものですから、とうとう回答してくれました。


「斉藤君に嫌な仕事がいくのは、君が弱いからだよ。弱い人間にはシワ寄せがいくものさ」


 それでも斉藤君は真面目に働きました。

 荷物の整理をしていて、斉藤君は創意工夫して業務の効率化をしました。それにより上司からは褒められて仲間からは感謝の言葉をもらいました。


 ある日、斉藤君は変なことに気がつきました。重要な情報が自分に来ないのです。どうでもいいようなことはメールで何度も来るのに、臨時休業などの重要な連絡が来ないので、誰もいない会社に1人で出勤するようなこともありました。

 斉藤君は、それなりに仲が良かった同僚に尋ねてみました。最初は冗談を言ってごまかしていた同僚ですが、ごまかしきれなくなって、とうとう本音を言いました。


「斉藤君に情報が伝わらないのは、君が優秀だからだよ。頭の良い人間はグループから仲間外れにされてしまうものなのさ」


 それでも、それでも斉藤君は必死に働きました。

 斉藤君は人にものを頼まれやすい人間でした。お金を貸してくれと言われても笑顔で応じるし、物を貸してくれと言われても素直に貸していました。


 ある日、斉藤君は貸したものが返ってこないことに気がつきました。お金を貸した相手に返却を迫ると、ボーナスには返すなどと言ってのらりくらりと逃げてしまいます。

 どうして人は他人の物を盗むのだろう。そう思って斉藤君は途方に暮れてしまいました。

 それを見かねた女子社員が斉藤君に言いました。


「斉藤君が食い物にされるのは、あなたが優しいからよ。優しい人間は盗まれるものなのよ」


 斉藤君は、それでも我慢して働いていました。

 ある日、斉藤君は転勤を命じられました。そこは誰も行きたくないような遠くの支店です。ついに耐えきれなくなって彼は退職願を提出しました。

 斉藤君は社長に呼び出されて理由を聞かれました。斉藤君は、これまでの不満をすべて吐き出しました。黙って聞いていた社長は少し考えてから言いました。


「それは君が自分を大切にしないからだ。世の中は良い人ばかりではない。ジャングルにでもいるかのように、社会でも外敵から身を守るように努力しなければいけないぞ」


 その言葉で斉藤君は、やっと気がつきました。人間は基本的にダメな生き物なのだ。その中で生きるには善良なだけではいけない、したたかさが必要なのだと。

 ダメな人間は会社において部長や社長になってもダメ。きちんとした人間は平社員でもきちんとしている。


 運送会社を退職して斉藤君は家でじっくりと考えました。

 斉藤君は強く賢くなるように努力しました。そして、他人とは常に一線を引き、相手が何を考えているかを洞察するようになりました。それにより、彼は自分と他人を客観的に見ることができるようになり、斎藤君は自分なりの処世術を身に付けたのでした。


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