Episode -5 別れと。
今回はさらに分量が少ない感じです。
良ければコメントどうぞ..!
そんな感じでいろいろと少女たちはガサゴソとあさったりしているうちにどんどんと最後の一日は夕の空に染まる。
地下にある夕の空は、どこかあったかい感じで、なおかつ寂しげ。
やがてその手は、何かを作る手であることは変わらずに、ネックレスを作る手からどんどのt料理を作る手へと変わっていった。
もはやシルエット等にすら響くほどに、繊細な一品一品に心をこめて、少しずつ組み上げていく。
「じゃあ、みんなで食べる最後のごはんですね。」
少女のつたない声があのリビングに響く。
麗庶は、すごく楽しそうな、でもどこか刻があるような表情でそういって食を二人に運ぶ。
最後のご飯は、あの日と同じすき焼きだ。
「「いただきますっ!」」
みんなでする最後の食事だ。
最後なんてことはないんだろうけど、でもわからない。ただ、理由もわからないけれどもそんな気をみんなが抱いていた。
「おおっ...」
「さすが飽希ちゃん...キマってるね!」
「さすが飽希君だな...。ああ、これでなかなか食べられないか...」
みんなは思い思いに食に手を伸ばす。
昔みたいな、どこか離れたような孤独との境目を破ったあの日はきっと地続きに今日に至ってると、麗庶はふける。
「むうぅ...っはむっ...」
そして、その懐かしさと寂しさに精一杯の味を感じたがるように、ねぎをぎゅっと口で包んで、自慢の八重歯でその中に潜むだしをこれでもかと転がす。
味という概念はどこか熱やら何やらを帯びたような、感情のようなものにすら思えた。
「はふっ...うっ..は...あっついですっ..」
とはいえ熱さには耐えられなかったようだ。
その頃職員さんは、一言も交わさずにただただすき焼きに箸を向けてどこか懐古とあいこな感情を抱えたように俯きながら食と心を交わす。
この日ばかりは、いっつも大食い勝負の兄も、それを止める妹もどこか静かと過去を回想しているようだった。
そんなみんなに比べて、どこか落ち着いていたのは成取だった。
「はふーっ...ふっ..。あーむっ」
「あれ...成取さんって...前々から思ってたんですけど...そんなかわいい食べ方しましたっけ..。」
麗庶はボソッと口にする。
「...!!」
「あ...やべっ...癖が出たっ..。」
「ち、ちがわいっ...ボクの食べ方はもっとかっこいいんだぞっ!」
普段凍えたような少年も、どこか今日ばかりはほのかにあったまってるようだった。
「...かわいいねーっ」
金住はそこに入るかのように一言。
「たしかに..っ...結構そんな感じの成取君の感じ、嫌いじゃないからね-っ。」
さらに職員さんまでもそれに乗っかる。
「ふふっ..。」
麗庶は少しばかりにこりと微笑む。
「あ、でも飽希ちゃんのその八重歯もかわいいかも。」
職員さんの標的は、そのにこりとした口にぴょこんと生えた八重歯へと移る。
「むっ...っ!!」
「それ結構言われるんですよね...ちょっと自分でも気にしてるのですっ。...かわいいですか?」
その直後に聞こえた言葉はほぼ一緒。
「かわいいっ!!」
「あ...ありがとうございますっ..。」
少女はほんのりうれしそうに口に含んだ熱量を笑顔に変える。
ただ、すき焼きの熱気がここにいる和やかな全員をほのかに包んでいた。
「お兄ちゃん...今日はもっといっぱい食べていいのに...」
「いや、今日くらいはじっくり味わって食べたい。」
「じゃあ...ごちそうさまでした。」
最後にはみんな、どこか静かにごちそうさまを告げる。
一緒に仲良くなったあの日々の始まりは、このいただきますとごちそうさまだったのかな。
少女はそう心に連ねながら、手を落としていく。
みんな、少しばかり悩んで言葉をつむごうとするけど、やっぱりどこか潤滑油にならない。なれない。
あの湯気はいつのまにか等に消え失せて、どこかまた沈黙に陥る。
『...さすがにそろそろってときに...でも、たしかに言葉を交わしちゃうとどこかとどめたくなっちゃうかもしれないですからね..。』
そこにいるすべての人たちは、ただ一言を連ねることすらはばかってしまう。
だって、一言を漏らしてしまえば一歩でも歩ませてしまいそうで。
腹いっぱいのみんなの中にはどこかこのままずっといっぱいであってほしいみたいなそんな空気感が浮いていた。
『この空気感だとプレゼントとかの件が...』
少しばかりガサゴソと音が響く。
「まって...金住ちゃ...」
麗庶は、ふとちとちとと部屋に向かう彼女をそっと止めようとする。
ただ、それは少しばかり心を鎮めるための時間が欲しいと。
一方で金住ちゃんは、ちっこい少女とは思えないほどに勢いの良い音を鳴らしながら麗庶の部屋のドアノブにジャンプした。
「えいっ..。」
「ほー、どんな感じになるんだろう..。」
職員さんは、そのどこか元気な少女を見て少しばかり微笑んだ。
『確かに...金住ちゃんは...いろんなショックがあって...こんなに元気な姿が最後に見れたらそれはうれしいですよね。』
麗庶は、口につむごうとしたちょっとという言葉をとどめた。
しばらくどったんばったんとなんかの音が響いた直後にたったと軽快な音が重いような
そして、金住はつたない何かを二つほどもって再びその姿をみんなの前に見せる
「あ...ちょっと驚かせてごめんなさい..。」
まさしく私が主演と言わんばかりにかわいらしくお辞儀する。
その様子をみんながずっと見ている感じで...動きもあまりせずにじーっと。
そして、消えかねないとどこか動き始めそうになった二人の前に立って、
「はいっ...これっ! て...っ!」
とつたない何かを握った手で二人に合図する。
「...?」
二人は、ただ無言に手を差し出して開く。
ぽとんと、軽いような重みが二人にのしかかる。
それは、子供の工作のようなブローチだ。
色が青銅と鉄のモチーフで塗られたようなもの。
ところどころ隠しきれない中芯横にのぞかせながらも、子供が作ったにはそれ相応としっかりと塗装されて、贈り物の雰囲気を醸し出す。
また、そのブローチの周辺にはかわいらしいリボンがぎゅっと結ばれた形があってさらに贈答品の気品を簡易的にも思わせる。
そして中央にのしかかるは、どこか柔らかなような工作感のある宝石。
子供の工作にしてはとってもいい出来だ。
そして、それをぽとっと落とした少女は二人の顔を見て言葉を贐にする。
「あんまりいいモノがなかったんだけど...私たちからのほうせき!」
二人は、肌の感覚だけに伝わる思いを目にしたいと、きょとんと宝石を見つめる。
それは、いろんな色鮮やかなセロハンをのせて作った緑と青の宝石。
工作感たっぷりで、ある意味乱雑にすらとらえられてもおかしくない。
だが、それは限られた資源の少女たちが紡ぐ精いっぱいの贐の言葉のよう。
その何重にも薄く重ねた色合いが光沢や輝きをこれでもかと再現している。
よほどに何回もリテイクとリトライを繰り返して、凛とした姿に連れて行った跡がそのセロハンで浮いている光のよう。
見ているうちに、どこか記憶がずっと楽しかったように響く。
「ありがとな..。」
「ありがとうございますっ...うれしい..。」
性格的な風説を崩さず、二人の離任者は喜びを示す。
「じつは...これ...作ったの..私だけじゃないよ!!」
少女は嬉々として、その喜びに一つばかりおっきく答える。
そして。
「あきおねえちゃんに...おにいちゃんたち...っ!」
それを聞いた二人はみんなを見渡す。
「ふふんっ」
「おにーちゃんにしては頑張ってたんだからねっ!」
「ま~よゆーってもんか。」
「みんなのおかげですからっ..。」
みんなそれっぽく適当に、でも確実にまたとないチャンスだと一言決めていく。
「...ってかんじなのっ!」
中心にいる少女は、一言こぼす。
…「最初はお姉ちゃんが...いろいろ考えてくれて..。」
次に麗庶が声を上げる。
「..そうですっ。それで、みんなで...作ったのですセロハンとかこっそりかき集めて、みんなで全員で作ったのですっ..。」
それを見る二人は、ほーっと興味深そうにして、そして職員さんは少しばかりにこりとして
「みんな...ありがとうっ...料理とかあんまり作ってあげられなかったけど...」
「でも、みんながこんな感じに仲良くなってて...とっても嬉しいっ!」
職員さんは、とっても嬉しそうに、でももう一緒に宿を共にして仲良く共同生活を送れないことを顔に一つに書き出したように、うれしそうに悲しそうな涙を少しばかり垂らす。
「実はこれ...、安全ピンがあるから、服につけられるだぞー」
小松ががおーっというように一言。
それを聞くや否や二人はじゃあといわんばかりに服に安全ピンをぎゅっと突き刺して胸元に工作の宝石を飾る。
「結構様になっててきれいじゃんっ..。」
「そうですねっ...頑張って作った甲斐があったのです..。」
「ありがとう...大切に使わせてもらうよ..。」
成取はどこかしっかりと、一言をプリンを味わうかのように一言呟く。
「そうそう...ごめんなさい、急に決まったからお礼の品とかもってなくて...」
職員さんはどこか申し訳なさそうに言う。
「大丈夫ですっ、みんなでこうやって元気に何かを作ったりできたのは職員さんがいなかったらできなかったので!」
麗庶はほんのり瞳からしずくを垂らしながら、言葉を。
そうやって楽しそうに話しているうちにやがて時間が過ぎていった。
時計の針が二巡した頃合いだっただろうか。
「あっ...そろそろ行かなきゃっ..。」
「成取君...ごめんね、そろそろ行かなきゃいけないから...」
「みんなありがとう...そしてごめんね」
職員さんは、涙を流しながら扉を開ける。
「こっちこそ...たくさんお世話になりましたっ!!」
麗庶は、思わずこの別れが永遠にすら思えてしまいそうでぽたぽたと涙を流していた。
『...あぁ..っ!』
『よく考えたら私に料理をするタイミングを作ってくれてたし..あれは事故みたいなものでしたけど..でもっ...そう考えたら、あの人がいて..よかったのですっ..。』
そして、その悲しさを紛らわせるために手を優しく振る。
それに合わせてみんな、ありがとうと言葉を述べていく。
だけども、どんどんと二人は抗いようもないままに、扉の先の冷たい空気に飲まれていく
「それじゃあ...ばいばいっ..。」
成取と職員さんは、そのまま扉をぱたんと閉めて外へと消えていった。
麗庶はそれをみて、どこか堪え得ぬものがあったのか
「まって...っ」
と走り出して、ドアノブをぎゅっと握った。
『でも...祝うべきことですから..っ..!』
麗庶は何にも考えることができなかったのか、そのまま床に崩れるようにドアノブに掛けた手をほどいた。
『あっ..そうだ、みんなをしっかり見ないと..。』
白柄のワンピースの純粋無垢な少女は、ただとぼとぼとみんなのもとへ帰っていった。
残ったのは、外から入った空気だけ。
もう少し一緒に居たかった...同じ地下の元で暮らしたかった、とみんなは言葉を連ねた。
ご閲読ありがとうございました!