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第37話 闘技と化け物

 人が飛んでくる。

 俺――瞬也しゅんやは目を見開きながら猛虎ステップで回避した。

 グシャ!

 柱に衝突し、嫌な音が響いた。


「あ……」


 俺は唖然とした。佐竹が地面に転がった状態で痙攣していたから。


「あっ、がっ、あ、がはっ……!」

「佐竹……!」


 駆け寄ってみたが、明らかに重症だった。

 腕は折れ曲がり、痛みで全身を痙攣けいれんさせている。折れた骨が肺に刺さっているのか、呼吸もおかしい。

 もう助からない。佐竹はじきに死ぬ。いや、それより、爆破チームの佐竹が襲われたということは、このまま戦っても勝ち目はない。


「外レタカ……」


 壊れた壁の向こうから低い声が聞こえた瞬間、俺は通路を走った。


「作戦は失敗だ、撤退する……!」

『――りょ、了解したわ。東側付近の駐車場で待機してるから乗って』


 天ケ瀬の声をインカムで聞きつつ角を曲がり、東側出入口に急ぐ。


『俺も従業員用の通路から逃げてる。東側の駐車場で合流しよう』


 タイジュの声だ。


「よかった、お前も生きてたのか」

『ああ、オッサンとは少し離れてたから、なんとか襲われずに済んだ』

「そりゃ運が良かったな――」


 俺の言葉の途中で後ろから激しい足音が近づいてくる。


(くそっ、やっぱ追ってくるよな……!)


 このまま走っていたら追いつかれるが、東側の出入り口はすぐそこだ。俺は構わず走り続けた。

 だが外に出たところで、


「ガアアアアアアアア!」


 追いつかれた。俺は咄嗟に横に避けて蒸気を噴く者(ヴェイパー)の突進を避けた。ごつごつした巨体が駐車場へ抜けると、こっちに振り向いてくる。


「簡単には逃してくれねぇか……」


 背中から刀を抜き、油断なく構えた。


「オ前ダケ、攻撃ガ当タラナイ……ナゼ?」

「お前の攻撃は大振りだからな」

「ソウカ。ダガ、オ前モ死ヌ。コイツノヨウニナ」


 蒸気を噴く者(ヴェイパー)が何かを掲げる。茶色い髪と髭面が特徴的な顔。それは、だらりと口が緩んでいる人間の頭だった。


「佐竹……お前、わざわざとどめを刺したのか?」

「クヒヒヒ、仲間ヲ殺サレテ、怒ッテルカ?」

「いや、そいつは元々裏切り者だった。どうなろうと知らねぇよ」

「ソウカ、ツマラナイ」


 ごみを捨てるように佐竹の頭を放ると、蒸気を噴く者(ヴェイパー)が向かってくる。俺の目の前まで一気に迫り、硬質な拳を振りかぶった。


「ガアアアアアア!」

死角斬しかくぎり!」


 奴の脇をすり抜け、一瞬で背後を取ると、俺は硬い背中を斬りつけた。

 キンッ。

 やっぱり刃が通らない。まるで岩を斬っているようだ。


「コイツ、イツノ間ニ」


 普通に斬ってちゃダメだ。一番威力がある技で、相手の脆い部分を攻撃する必要がある。


「ガアアアアア!」


 蒸気を噴く者(ヴェイパー)が振り向きざまに殴ってくる。猛虎ステップで避け、俺は刀を上段に構えた。


閃斬せんざんッ!」


 狙うのは俺を殴るために突き出された腕の関節だ。硬質の腕に刃をざっと滑らせる。


「ガアアアア!」


 斬られる瞬間、腕を薙ぎ払うように動かされ、キンッと刃が弾かれた。


(不味い……!)


 弾かれた衝撃で体勢が崩れた。


「終ワリダ」


 硬い拳が迫ってくる。この体勢じゃ猛虎ステップも死角斬りも使えない。


「くっ」


 俺は弾かれた勢いに逆らうことなく後ろに倒れた。硬質の腕が俺の真上を通過する。拳の風圧が髪を揺らし、倒れた衝撃が背中にドンッと響く。


「無駄ダ」


 硬質の足が上がる。

 俺を踏みつぶす気だ。

 転がって避けようとするが間に合わない。奴の方が数段早い。


「コレデ――」


 その瞬間、空から椎名が落ちてきてごつごつした背中に何かをグサッと刺した。


「グギャアアアアアア!」


 蒸気を噴く者(ヴェイパー)がよろけて数歩後ろに下がる。

 俺が飛び起きて距離を取ると、隣に椎名が並んできた。


「大丈夫? 瞬くん」

「お前、いいところに――って大丈夫だったのか?」

「腕とか折れて重症だったけど、回復キットでなんとかね」

「そうか、ならもっと早く加勢してくれよ。危うく死ぬところだったぞ……」

「死んでないからいいでしょ。こっちだって三階の窓から隙をうかがってたんだからそんなすぐ動けないよ」

「そうか、でもまぁ最高の奇襲だったぞ」


 蒸気を噴く者(ヴェイパー)が痛みで身をよじっている。その背中の窪みにナイフが刺さっていた。

 椎名が三階から飛び降りながら刺したんだろう。落下エネルギーとナイフ技のコンボで大ダメージといったところだ。


「コノ、俺ノ身体ニ傷ヲ……人類ヲ超越シタコノ身体ニ」

「超越だと? なら越えてみろよ、俺の称号は人類の到達点だ」

「あ、ちなみに私の称号は超越者だから、君と似たような者かもね」

「称号? ナニヲ言ッテル?」

「このゲームの称号だろ。お前、プロジェクトセブンデイズのラスボスなのになんも知らねぇのか?」

「プロジェクト……? アア? 訳ノワカラナイコトヲ」


 俺の説明を聞くと、蒸気を噴く者(ヴェイパー)は頭を押さえて考え込んだ。

 俺たちの身体をいじってゲームキャラみたいにスキルとか称号を付与してるんだから、こんな化け物くらい運営が用意してると思ったけどそうではないようだった。こいつは自分の意思で俺たちを襲っている。


「アア、ドウデモイイカ。オ前タチヲ、殺セバ、マタ静カニナル」


 そう言った直後、蒸気を噴く者(ヴェイパー)の背中から蒸気が噴き出し、こっちに急接近してきた。


「死角斬り……!」


 一瞬で奴の背後に回り込み、椎名のナイフが刺さっているところを斬りつけた。


「グガ……ッ!」


 よし、効いてる。やっぱりここが脆くなってるんだ。

 俺が確かな手ごたえを感じたときだった。

 シュウウウウウウウウウウウウウウウウ!

 背中から噴き出す蒸気が俺の視界を遮った。


「ぐっ」


 高熱の蒸気に怯んで、俺はよろけた。


「瞬くん……!」


 どんっと横にせられた。すると、俺と入れ替わるようにして椎名が蒸気を噴く者(ヴェイパー)の背後に立った。


「あ――」


 俺が息を飲んだ直後、硬質の拳に椎名が殴られ、駐車場のブロック塀まで物凄い勢いで吹き飛ばされた。

 ゴゴッと塀が壊れ、その瓦礫に沈んだまま椎名は動かない。


(あいつ、俺を庇って……くそっ)


 椎名のことが心配だが、今はこの化け物をどうにかしないといけない。俺は刀を構え、次の攻撃に備えた。


「面白かった!」


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