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第13話 最後のメンバー

「屋上に行こうか。最後のメンバーの紹介もしたいしね」

「あ、はい」


 食事を終えたところで佐竹さんに誘われ、俺は豪邸の屋上に上がる。

 ドアを開けると、そこは周囲を見渡せる空間になっていた。

 中央に小さな芝が植えられ、その横に椅子やテーブルが置かれている。


(屋上庭園ってやつか……誰かいる)


 屋上に入った正面で、若い男が腰壁にライフルを乗せて構えていた。

 トクッ。

 くぐもった銃声だ。減音器サプレッサーをつけてるからそれほど響いてない。


「どうだい? 外の様子は?」

「門のところに二人張り付いてます」


 佐竹さんに若い男がそう言った直後、引き金を絞った。


 トク……ッ。


 銃弾を放つと、男がこっちに振り向いた。


「倒した。これで周囲にゾンビはいません」


 爽やかな青年だ。Tシャツにジーンズというラフな格好で背は高く、スポーツマンって感じの見た目。身体は筋肉質で、どうやら一撃でゾンビを倒した銃の腕前まで備えている。


「池崎君、彼が僕たちの最大戦力さ」

青井信司あおいしんじだ。よろしくな」

「ああ、こちらこそ。すごいな、ライフルでゾンビを倒すとか」


 俺が褒めると、青井は得意げに微笑む。


「自衛隊で狙撃の訓練をしてたからな。このくらいの距離なら余裕だよ」

「青井君、見張りを交代するよ」

「わかりました。佐竹さん、銃声はそんなに響いてませんが、隠れてる奴がいるかもしれないから注意してください」

「わかったよ」


 佐竹さんが頷くのを見てから青井はインカムのスイッチを押した。


「タイジュ、悪いが死体を片付けてくれ」


 青井が部屋に入ると、佐竹さんが腰壁に手をついて周囲を見渡す。


「どうだい? いい景色だろう?」

「はい、郊外だから街並みがよく見えますね」


 手前に住宅が並び、奥にはビルがそびえ立っている。なかなかいい眺めだ。街路樹の緑が街並みと混ざって綺麗な色合いを見せている。

 だが周囲の民家の窓が割れていて、その民家の庭に死体が転がっていた。

 この物々しい光景に俺は暗い声で呟く。


「近くの民家は荒らされてるな……」

「ゾンビに襲われたんだろうね。あとは、減音器サプレッサーをつけていてもある程度は銃声が響くから、それで周囲数十メートルのゾンビが反応して窓ガラスを割って出てきたしね」

「そうですか。でもすごいですね、拠点周辺のゾンビを一掃したってことでしょう?」

「まぁ仲間がいたし、それに武器が強かったからね」


 佐竹さんと話しながら俺は初日を振り返る。

 逃げ回って、ペンションに行って、飯食って寝た。

 それに対して佐竹さんは、仲間を集めて、こんな立派な拠点を手に入れて、周囲のゾンビを一掃したって……すごくね? 俺とえらい違いだぞ。


「武器といえば、池崎君はどう思う?」

「いっぱい種類あるなーって、近接武器から銃まであるし、あとどこからか転送されてくる謎技術ってあれすごくないですか?」

「まぁゲームだからね、そこは深く考えてはいけないよ」

「そりゃそうですけどね」

「価格はどうだい?」

「近接武器はお得に見えますね。銃は高いですけど」

「そう、高い。けれど僕ら一千万円プレイヤーなら買えるだろ」

「まぁ初日に手に入ったデイリーボーナスを使えば買えますけど、でも銃って撃ったことねぇしな……」


 だからバットとか使っていたわけだが、ここから先、大勢のゾンビを相手にしなきゃならない状況が来るかもしれない。やっぱり銃は持っておいた方がいいだろうな。

 俺がそう思ったところで、佐竹さんはどこか遠くを見たまま重々しく口を開いた。


「僕たちには潤沢な資金がある。だから強い装備でゲームをプレイできるわけだけど、それによって他のプレイヤーに襲われるリスクが生じる」

「ゾンビがいるのに人間同士で争うって……」

「百万円プレイヤーだって必死だし、生き残るためには強い武器が必要だからね。しかも僕たちは大金まで持ってるんだ。そりゃ狙われるよ」

「いや、こっちには青井の銃があるんですよ? そうそう襲われるなんて」

「それはどうかな。百万円プレイヤーは死んでもまた次のチャンスがある。昔の僕みたいにね。それに大金が手に入るなら話は別さ。大金は人を鬼にも悪魔にも変えてしまうからね」

「あ……」


 悪魔といえば、椎名だ。あの女子高生、俺からマネーコイン奪って殺そうとした。


「心当たりがあるみたいだね」

「はい、一度殺されそうになりました」

『あーあったな』

『椎名ちゃんだ』

『一度あったー殺人鬼との対面』


 思い出みたいに言ってんじゃねーよ。

 俺は視界の端に映ったリスナーのコメントに冷めた視線を送った。


「今後もそういったことが起こるだろうね。あ、知ってるかい? 銃は高いけど、それよりも食料品の方が高価なんだ」

「え? それじゃあ、街を探索して食糧を確保するしかないじゃないですか」

「ああ、それで百万円プレイヤーと接触して戦闘になる。このゲームはそういう仕組みになってるのさ」


 佐竹さんは腰壁から下を覗き込みながら言った。その視線の先では、青井が倒したゾンビをタイジュが抱えて正面の民家の庭に投げ捨てていた。


「敵はゾンビだけじゃないのか……」

「ああ、そうさ。それゆえに僕たちは団結しなくちゃならない。チームを組んで……あ、そうだ。チームシステムを知ってるかい?」

「いや、ずっと一人だったんで知らないです」

「まぁ簡単に言うとお互いを補うものでね。うちのチームだと、天ケ瀬さんと海月さんは戦闘に参加しないけど、それじゃあデイリー任務の『ゾンビを倒す』が未達成になってしまうんだ。そこで、撃破数を共有することで彼女たちの分まで僕らが倒すわけさ」


 デイリー任務を共有して協力して生き残るってわけか。


「いいな、そんなことができるなんて」

「まあね。それで天ケ瀬さんは車でデイリー任務の『拠点外を移動する』を達成してもらって、海月さんには料理と拠点の整備をお願いしてるんだ」

「へー、じゃあ俺は戦闘系かな?」

「そうなるね。あ、一時間後に探索を始めるから準備しておいで」

「わかりました」


 佐竹さんと別れ、俺は豪邸に入った。

「面白かった!」


「続きが気になる!」


「今後どうなるの!」


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