第10話 ゲーム運営のワルキューレ
デスク上に投影された情報ウィンドウにはプレイヤーたちの視点が映し出されていた。
ゾンビから逃げる映像に、家の中で震えている映像も見てとれる。それとは対照的に落ち着いて朝食を食べているものもあった。
けれど最も注目を集めている映像は、ペナルティのアラームが起動しながらも逃げきれた者の視点だろう。
「池崎瞬……本名、山崎瞬也。一見普通の青年だけれど、ゲームシステムで急成長して生き残るなんて、なかなかやるわね」
そう言いながら微笑むと、私――レイラ・ケアド・リハヒールは周囲を流し見る。
壁に映像を映した円形の部屋だ。滑らかな銀色の電子板を壁面に埋め込み、その色と合うように床も銀色の金属になっている。
ここはモニタールーム。デスクには私と同じ戦乙女がプレイヤーを監視していた。
(みんな戦乙女のはずなのに、こうして見るとただの警備職員みたいね……)
戦乙女は本来、戦いで亡くなった優秀な戦士をヴァルハラに導き、神々の兵士として徴兵する案内人のような仕事を生業とする種族だった。
でも大きな戦争がなくなった今となっては、こうしてデスゲームを運営し、神々を楽しませる娯楽要員になっていた。
「これも時代の流れなのかしらね……まさか私もデスゲームのゲームマスターになるなんて思いもしなかったけれど」
「そうですね。今は訓練場にいるよりここにいる方が長いですもん」
愛嬌のある声が聞こえた方へ視線を向けると、快活そうな戦乙女が隣の席に座っていた。
肩口で短く切り揃えたオレンジ色の髪が特徴的な彼女はミランダ。私の部下だ。
「デスクワークばかりだけれど、私たちが戦わない世界だからこそ神々を退屈させてはいけないわ。そっちのプレイヤーの様子はどう?」
私の問いに、ミランダがキーボードに指を走らせてから返答する。
「はい、私の担当はすでに半数近くが脱落しています。やっぱり百万円プレイヤーはすぐやられますね」
「まぁ予想通りじゃない? 所詮は余興ですもの。本命は――」
インカムがピピッと鳴って私の言葉を遮った。
『レイラはいるか?』
「はい、ここに」
渋い声に呼ばれてイスから立つと、私は壁の映像に向き直った。
そこにはワイルドな老人が映っていた。渋いおじ様って感じの容姿に白髪のオールバックが似合っていて、さらに黒い眼帯までつけている。
私たち戦乙女の主、オーディン様だ。
『喜べ、企画は好評だぞ』
「それはよかったです。どうでしょう? 今回の目玉、一千万円プレイヤーたちは」
『ああ、特にそのプレイヤーたちの活躍の反響が大きかった』
私の言葉にオーディン様は頷いてから『そうだな?』と神々に問いかけた。
『ああもちろんだとも!』
『リアルでゾンビゲーなんて面白くて当然だろう?』
『いやー、今回はどんな争いが生まれるか楽しみですな』
壁面モニターに映る古今東西の神たちが口々に賞賛した。
『というわけだ。この調子で頼むぞ、レイラ』
「はい、オーディン様」
私は頭を下げて通信を切ると、プレイヤーたちの監視に戻った。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「今後どうなるの!」
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