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第11話‐②


葵は身体を土壁に預けながら荒い息を繰り返している。

怪我によって熱も出ているのか、さっきから身体が火照っている気がする。

頭も何故だかクラクラするし少し気持ち悪い。

とてつもなく体調が最悪な葵の目の前には、不機嫌丸出しで苛立ちを隠していないアイル・ヴェルディスが佇んでいた。


「……」

「……」


無言の二人の耳には、彼の後ろで拘束されたアンデッド達の呻き声が聞こえている。


お互い見つめ合うがアイルは一向に口を開こうとしない。

葵は何故ここにアイルがいるのか気になりすぎて、アイルの不機嫌丸出しな態度を気にもしていない。


(……どうやってあたしがここにいると分かったんだろう…)


クレイツおじさんならあたしが洞窟に来たことは多分勘付いているだろうから来るならここに来るだろうけれど、アイル達にはそんな葵の行動が分かるはずもないし、置き手紙には旅に出るとしか書いてこなかったのでここには来れないはず……


(クレイツおじさんが言ったとか……?)


それはそれで有り得てきたのでここにいるアイルの存在に対する驚きが冷めていった。

クレイツおじさんはまだ安静にしていなければいけないだろうから、アイルがここにいることに納得はできるけれど……


ーザっ


「っ……」


そんな事を考えていたからかアイルが傍まで来ているのに気が付かずビクッと身体が揺れた。


「……はぁ……はぁ……はぁ……」

「……」


荒い息を繰り返しながら、目線を合わせるようにしてしゃがんだアイルの目を見つめる。

そんな、辛そうな葵をアイルは真っ直ぐと見つめたまま口を開いた。


「その傷、アンデッドに?」

「…まぁ……」

「魔法が使えるのですから自分で治せばよろしいのでは?」

「っ……」


とても低くて冷たい言葉。

こんな姿の葵をどんな思いで見つめているのか分からないが、怒りと苛立ちが嫌でも伝わってきた。


(……自分で治せ、か……)


いつもは事情を知っているクレイツおじさんが居るから彼に傷の手当をしてもらっていた。

だが、今ここに事情を知っている彼はいない。


事情を知らないであろうアイルがそう疑問を呈すのは当然だし、魔力があるのだから治せばいいと言葉にして言うのも理解はできる。

ただ、理解をしていても事情を知らない人にそんな事を言われたくない。

まして、アイルにそんな事を言われたくはなかったと思っている自分がいることに葵は驚いていた。


「……そう、ですね」

「……」


一言、アイルの言葉に対して同意の言葉を口にすると、アイルの眉間にたちまち皺が寄った。

それを見ていた葵は「は?」と意味がわからない苛立ちと身体の痛みで何故だかイライラしてきた。


アイルがここに来てくれたのは正直助かったけれど、例えアイルがここに来てもアンデッドを殲滅することは出来ない。

それなのにどうしてここに来たんだよと苛立ちがあらぬ方向に向かっていく。

苛立っている理由も、そう言ってきた事も全部ひっくるめてイラつく感情を咄嗟に口に出していた。


「……それを、言う為に…来たのですか?図星なら…そこをどいて下さい…正直、邪魔…です……はぁ……はぁ……」

「…わたしが貴方を怒る理由はあれど、わたしが貴方に怒られる理由などないのでは?」

「…………」


土壁に身体を預けている葵の目を見つめながら、間髪入れずに答えるアイルは今までのアイルの雰囲気とどこか少し違っているように思えた。


そして、そう言われた葵にはとてもイライラするが何も言えなかった。

怒る理由と言われ、思い当たることと言えば勝手に屋敷を出てきたことだろうか。


本当ならもう既にアンデッドの殲滅を終えて、遠くに行っているはずの計画はもう既にごちゃごちゃになっている。

もう会うことは無いと思っていたので、何も言い訳を考えていなかったし、アイルがここに来たのも予想外である。

なので、そう言われたら何も言えないのは当然だ。

葵は今になって気まずそうな表情になる。


「はぁ……本当に頑固でお転婆娘の貴方には振り回されてばかりですね」

「…………は?」

「まぁそんな貴方だから興味をそそられたんですけどね」

「…………」


先程の雰囲気とは打って変わって、アイルはニコニコと微笑んだ。

怒っているのかと思えば、こうやって急にニコニコしたりよく分からないその喜怒哀楽にただただ困惑する。


そんな、驚きで固まっている葵に満足でもしたのか、怪我をしている葵の腕に自身の手をかざすと黄緑色の光が傷の部分を包んだ。

すると、次第に痛みが引いていき、光が収まったと思ったら傷口が塞がれているのに気が付いた。


「え……」

「すみません、先程の質問はただの八つ当たりです。葵さんが自身の傷を治すことが出来ないのは師匠に聞いていたので知っていました」

「は……?」

「葵さんが黙って出ていくものですから、少しばかりの八つ当たりだったんです……けど……」

「っ……!?」


すると、言葉を切ったアイルは、珍しく髪を下ろしている葵の長い髪を片手で掴み取るとその髪にキスを落とした。



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