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第10話‐⑩


目を瞑り、強い想いを自分自身に向ける。


「…………」


もう一度。


「…………」


いや、もう少し強く……


「…………」

「…………」

「…………」


あ、無理だと。

無理だと悟り、はたと止まって目を開けた。


どうして無理なのか。

それはよくよく考えたらすぐ分かることだった。

それは葵自身が死ぬ事を恐れていないからだ。むしろこのアンデッド殲滅で死んだら死んだで仕方がなかったと納得出来る。

そして、葵自身、自分をその対象にして助けたいとは嘘でも思えなかった。

自分の命をなんとも思っていないのに、クレイツおじさんに向けた感情を自分自身に向けることなど出来るはずもない。

例え怪我をしていても、死を恐れていない自身に対してそんな強い想いを向けることなど最初から無理な話だったのだ。


「はぁ……」


どうしてもその強い想いが自分自身に向けられない。

クレイツおじさんに向けた想いを今さっき思い出して少しだけ光ったけれどそれだけだ。

きっと、この場に誰かがいて葵が強い想いを向けなければ完璧にはならないのだ。


チラッとアンデッド達を見るが、先程とは打って変わって一向に襲いかかってこない。

先程のアンデッドとは違い、きっと屍と魂は別のものなのだろう。

湖でのイノシシアンデッドと同じように、屍に魂が入り込み本人の意思とは別に行動を制限されていて魂本人の意思と、行動する意思は別物。

人間のいろんな感情で生まれた瘴気によって行動だけ操られているだけ。

湖で出会ったあのイノシシアンデッドはきっとここにも自分と同じように魂が囚われているから助けて欲しいと言ってきたのだと改めて思った。


ただ、先程襲ってきたアンデッドのように元から人間を襲うアンデッドもいるので油断は出来ない。

出来ないのだが……


「もう……手段がない」


自分がアンデッドを殲滅できることは知っているのに、その魔法を発動出来ないのであれば戦えないのと同じだ。


ただ、その魔法を発動するということはまた発作が起こるということでどうしたものか。

アンデッドを倒したい気は満々だが、また発作が起こるのは極力避けたいのに。

自分自身で封印してきた感情を感じないと魔法が発動出来ないのはとても厄介だった。


「あーやばい……意識が……」


左腕を噛まれている上、先程また発作が起きたのだ。

それに元々魔力の回復は完全とは言えない。そろそろ身体が限界だった。


ーガタガタガタガタっ


「っ……何!?」


弱気になっていた時、座っている地面が急にガタガタと揺れ始めた。

アンデッド達の方を見ると、この空間自体が揺れているのかアンデッド達も何事かと辺りを見回している。

地震みたいな揺れが段々と強くなってくる。


「ちょっ……何?」


強くなる揺れによって、地面にヒビが入っていく。

地面に手をついて身体を揺れに任せながら必死に収まるのを待つ。


ービキビキビキッ!!


すると、嫌な音を鳴らした地面の真ん中から思い切り亀裂が入り、アンデッド達や葵がいた地面が一気に落下し始めた。


「えっ!?ちょっ……待っっ……!!」


座っていた地面が窪み、抵抗する暇もなく下へと逆さまに落ちていった。



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