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第8話‐④ アイル視点


アイルが仕掛けていたモノ。

それはこの魔道具の事であった。

万が一にも何かあった時に葵自身が使ってくれれば御の字と言ったところだったが、どうやら葵はちゃんと使ってくれていた。


アイルは今までの葵を見てきて、師匠にはアンデッドの討伐には行かないと言っていたがアイルはそれを信じなかった。

一人で何もかも抱える葵ならきっと一人でもアンデッドの討伐に行くだろうと確信していたのだ。そして、師匠には行かないと言っていたところから見ると、何も言わずに出て行くだろうと踏んでいた。

だが、その何も言わず出て行くというのは直接は言わないというだけで、もしかしたら伝言やはたまた紙にでも書いて知らせることはするだろうと思っていた。

だから、その数多ある選択肢の中からアイルが一つに絞らせたのだ。

葵の性格なら人に伝言を頼むとは考えづらい。そうなると、人に頼む必要のない置手紙を選ぶだろうと思っていた。

それを実現させるために、その選択肢だけを選ばせるためにアイルは葵の借りている部屋に細工をした。


葵が日付変わった深夜、寝ているのを確認したアイルは音を立てずに葵の部屋に忍び込んだ。

女性の部屋に忍び込むなどありえないと思われるだろうがそんな事言っている場合ではないのだ。

そして、棚の引き出しの中に入っている物を全て取り出し、代わりに一番下の引き出しにその魔道具と普通の羽根ペンだけを入れて部屋を後にした。

何も入っていない引き出しの中で、これだけしか入っていないのならば十中八九この紙に文字を書くだろう。

棚を見てこの魔道具しかないのならこれに書く以外に選択肢はなくなる。葵は気付かずにアイルに誘導尋問ならぬ行動尋問をされていたのだ。


それが仮に、アイルの予想がすべて外れていたとしてもそれはそれで良かったのだ。

あくまでこの作戦は最悪の場合を考えての行動だったので何もないなら何もないでそれでいい。ただ今回はアイルの嫌な予感が的中して当たり、やはり自分の嫌な予感は当たるものだなとこの作戦を立てておいて良かったなと心底思った。


「…ヴェルディス殿、貴方のお陰でアオイさんの居場所が分かった…感謝する」

「…団長殿の為ではありません。これはわたしの為でもあるのです」

「……」


アイルは真剣な表情でナディルからの感謝を否定した。

そんなアイルの態度に何とも言えない表情をするナディルは、気を紛らわせるかのように言った。


「とりあえず居場所は分かったので準備が整い次第、アオイさんの元へ急ぐ」

「…それでは遅いのでわたしが先に行きます」


そう返事をした瞬間、テーブルの上に畳まれている自分のローブを手に取り、すぐさまバルコニーの扉に近付き扉を開け放った。


「ヴェルディス殿!?」


その驚異的な素早さに驚きつつ、ナディルもアイルに習いバルコニーの扉に近付いていく。

すると既にアイルはバルコニーの手すりに飛び乗っていた。

その肩には先程手に取ったローブがかけられている。

そして、今も尚青白い線が伸びている先をチラッと見た後、後ろに居るナディルに振り向いて言った。


「葵さんは必ずわたしが見つけ出しますので、団長殿達はゆっくり来てくださって結構ですよ」

「っ……」


ニコニコしながらナディルを挑発するように喧嘩を売ると、前に向き直り手すりから飛び降りた。


「っ…ヴェルディス殿!?」


その瞬間を見ていた椿はバルコニーの外に走り出て飛び降りたアイルを探す。

だが、もう走り去った後なのかアイルの姿はどこにもなかった。


「…ここ三階なのに…ヴェルディス様は何者なの!?」


三階から飛び降りるなんて、普通の人間がする事ではないと青ざめる。

そんな様子の椿を横目で見ながらナディルは言った。


「ヴェルディス殿の事だから怪我はないだろう…とりあえず椿、私達も急ぎ準備をしよう」

「……分かりました」


後ろ髪を引かれるような気持になりながらも椿はナディルの言葉に頷いた。

ナディルの方を向くと、何やら決意をしたような表情をしていた。

椿は首を傾げたがその表情が何だか悲しそうな表情に見えたので何も言えなかった。



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