表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/62

第7話‐⑪ アイル視点



ナディルは、アイルから目を逸らし星のまたたく暗い空を見上げた。


ナディルはアイルに口止めをされているらしい。

国に知られれば葵の自由が無くなる。だから国には報告するなと。

決して脅しとかそう言うことでは無いが、そうとも取れるアイルのその話し方にどのようにして答えていいのか分からない。

考えている間にも空気がピリピリしているのが嫌という程伝わってくる。

出来ることならナディルだって国に報告はしたくないと思っているのだ。悩んでいるのがその証拠である。

だが、第二騎士団長という立場上、国に逆らう事は出来ない。まして、その頂点に立つ方に隠し事をするなど第二騎士団長としてあるまじき行為だ。

ナディルはその第二騎士団長としての立場と、カルディオン領領主の息子ナディル・カルディオンとしての立場の間で心が揺れ動いていた。

第二騎士団長としての立場から言えば、すぐにでも国に報告をしなければならないが、カルディオン領領主の息子としてのナディル・カルディオンとしての立場から言えば、当然国に報告する事はないだろう。とても複雑な立場である。


そんなナディルを無表情で見つめるアイルとの間に沈黙が流れる。

アイルは一応宮廷魔導師団団長ではあるが、ナディルの様な国に必ず報告をしなければならないという立場ではない。

あくまで宮廷魔導師の団長であり、国を守る騎士と魔法を主に扱う魔導師とでは立場が全然違うのだ。

決して圧をかけている訳では無いが、アイルの視線がナディルに痛いほど突き刺さっている。


そして数分後、覚悟を決めたのか意を決してナディルが口を開いた。


「……あの場ではアオイさんの話に頷きはしたが、私はアルスラント王国第二騎士団長という立場上、見て見ぬふりは出来ない」


苦い顔をしながら言うナディルにアイルは無表情のまま彼を見つめる。

アイルとて無理難題を押し付けているということは百も承知だ。

彼の立場上、見て見ぬふりなどしたらどんな罰が下るか、アイルにだって分かっている。

分かってはいるが、ストレートに葵の能力について国に報告しないで欲しいと言わないで、遠回しに葵は自由を好むからと言っているのは、彼の立場を考えての事なのである。

ストレートに言うのと、遠回しに言うのとでは天と地の差があり、ナディルが葵がアンデッドを倒したと口にしてしまった暁には葵の自由が無くなる。

もちろん、ナディルの耳に入ってしまうのも避けたい。

そうなれば、言語道断で葵は連れて行かれる未来が待っている。

だから、アイルは確証を口にはせず遠回しに葵は自由を好むと言ったのだ。

その言葉が、そのあやふやな言葉にナディルが救われたことは言うまでもない。


「…………アオイさんに対する疑念が拭えないのであれば私は第二騎士団長としてそれを確かめなければならない」

「…葵さんを今度のアンデッド討伐に連れていき、その疑念を確信へと変えるおつもりですか?」


ナディルの言葉にアイルの声のトーンが一段階落ちた。

とてつもない不機嫌さがアイルの雰囲気からして分かる。


「……その瞬間を見ればアオイさんも言い逃れは出来ない」


アイルの問いかけには答えず、ナディルの一方的な意見がアイルの心をより一層イライラへと変えていく。


「一人の女性から国の為に自由を奪うと?」

「…………もしこの疑念が確信へと変われば、この国では唯一の人となる……もしそれを黙っていればこれは国の問題に関わってくる」

「…………。」


ナディルは重たい口をゆっくりと動かしながら暗闇を見つめながらそう言った。

イライラしているアイルだが、ナディルの言っていることは至極真っ当な事であり反論出来ない。

もし今後、アンデッドがまた現れた時、倒せる人が居なければこの国はどうなるのか。そんなの考えなくても分かる。

自分達の私情で葵をどうこうできる問題ではないのだ。

アンデッドを倒せると言うことはつまり、聖女ど同等……いや、それ以上の価値があり、その人の未来を変えることなど皆無だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ