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天災級の存在

ーーーースピリットドラゴン。


このスピリット種は魔界に存在するドラゴン種で、人間界には存在しない筈だ。

誰かが持ち込まない限りは、だが。


極まれに、歪みから来てしまう魔獣もいるが、必ずと言っていい程、甚大な被害を齎す。

魔界にいる魔獣は、人間界にとっては天災クラスが多いのだ。 


だが、コイツは持ち込まれた。

幼体とは言え、成体になれば天災クラスの魔獣だ。幼体でも強い。


シシリアが、黒い魔女から手に入れたのは間違いないだろうが、魔女の力でこの魔獣をどうこうするのは無理だ。


まさか、魔人が関わっているのか?!


ギルベルトは軽く頭を振って思考を中断させた。

今は目の前のスピリットドラゴンを倒す方が、先決だ。


恐怖に固まっているエルディアーナを叱咤し、いつもの様に結界を張れと指示を出す。

ギルベルトが教えだけあって、エルディアーナの結界はピカイチだ。

しかも、ギルベルトや精霊はスルー出来る器用さを発揮する、優れもの。


「ん、よし。良い子だ。直ぐに終わるから、ちゃんと待ってろよ?」


そう言って、ギルベルトは怒り狂ったスピリットドラゴンを横目で確認する。


まだ幼体のくせに、その図体はニメートルを有に超え、吐き出す息は毒の炎が混じり、黒い火の粉がパチパチと舞う。


これはーーーーこちらも『戻る』必要があるな。


祈る様に手を組み、結界を維持するエルディアーナはただ事ではない、力の強い魔獣の出現に震えている。


ギルベルトは緊急事態だと自分に言い聞かせ、エルディアーナの頬をそっと撫でた。

それは優しい慰めも含んで、震えを止める。


「エル、大丈夫だ。俺がいる。ただ、いつもよりも多く、力が欲しいんだ。だから許せよ?文句は後で聞いてやるから」


「ーーーーギル?ーーーーッ!?」


ギルベルトは口移しで力を補填する。

頬に添えた掌が、エルディアーナのそれを包む大きさに変わった。

閉じていた瞳をエルディアーナに向ければ、パチっと驚きで見開いた、紫水晶が見えて、唇を離せば「はぇ~?」と、気が抜ける声を出す。

たぶん、「は?えぇ?」と言いたかったのだとと推察するが。


「チビ共、エルを頼んだぞ」


エルディアーナの頭を撫でてから、結界を通り抜ける。


「ーーーー急いで終わらせるぞ」


いつまで元に戻っていられるか、分からないからな。


先ずは、バタバタと煩い翼をどうにかしないと。

ギルベルトは氷槍を作ると、それを勢い良く、地面に向かって降り注がせる。

瞬きにも満たない一瞬で、ドラゴンの黒い翼が地表に縫い留められる。


成体だと硬くて貫通は出来なかっただろう。幼体で良かった。


ドラゴンは長い首を上に伸ばして痛みを訴え、黒い炎の咆哮をギルベルトに向かって吐き出す。


「ーーーーギル!!」


「大丈夫だ。頼むから、そこから動くなよ、エル!」


大亀程の大きさで、蒼く光る雪の結晶が、ギルベルトの前で炎を弾く。

ドラゴンも氷槍を溶かそうと、炎を翼に吹きかけるが、氷が溶けても槍は突き刺さったままだった。


「俺が扱うのは、氷だけじゃないぞ」


槍が青いプラズマを放つ。

氷が溶けた後、残る水分に感電して翼が焦げ出した。


邪魔な羽はこれで動かない。


後はーーーー硬い鱗に覆われた、胴体と首を跳ねればいい。


果たしてアイツを精霊界から呼べるかどうか、だが。


「ーーーー来い!シャスティーフォル!」


轟く雷鳴と共に、顕現した愛剣。

握り締めて、一瞬クラっとした事で時間が残り少ない事を知る。


ーーーー急がないと。エルも心配するしな。


一撃で仕留める為に刃に魔力を込める。

狙うは首の後ろから、胴体と首の鱗の間。首が一番伸びきった時を狙う。


雷撃で追い込み、首を伸ばさせる。

項垂れてくれれば楽なんだが。


「お、雷撃が耳を掠ったか?幼体の耳は小さくて、何処にあるのかがわからなかったがーー」


バランスを取る三半規管みたいな物がやられたのだろう。

一度大きく上に伸び上がり、顎から下へと落ちた。

だが流石ドラゴン種、何とか持ち上げようと頭を懸命に動かすので油断は出来ない。

知能も高いので、隙を見せれば形勢逆転される。


今のうちにと、助走を付けて首目掛け、剣を振るった。



ーーーーが。



「ギルベルト様ーーーー!」


「ッーーーー!?」


コイツ、一体何処から出てきた!?


ドラゴンのボロボロになった翼の間からだとは見ていたが、ついそう言いたくもなる。


「邪魔だ、退け!」


「ああ、やっぱりあたしを助けに来てくれたのね!」


そんな訳あるか!いきなり現れて言う事じゃないだろうに、乙女ゲームだか何だか知らんが、この女、やっぱり頭がおかしい。


時間が無い。急がないと。

イライラが急上昇して、天元突破しそうだ。

なのに、悪玉女はギルベルトにあろう事か抱き着いてくる。

仕方なく、突き飛ばそうと伸ばした腕にも絡み着く。

力いっぱい、出しても良かったかもしれないと、優しさを出したのが間違いだった。

だが、エルが見てる前で、いくら嫌な奴でも女を乱暴に扱うのは躊躇する。


「おいッ!いい加減に離せ!邪魔だと言っているだろう!?」


《ーーーーグガァー》


唸るドラゴンの口元から、黒い煙が噴出される。


もたもたしている間にせっかくのチャンスを潰されたらしい。


首をゆっくりと持ち上げるスピリットドラゴンが、真っ赤に染まった両目をギルベルトに向ける。


「ーーーーチッ!」


「な、何よ、コイツ。まだ生きてんじゃないの!早く倒して、ギル!あたしを助けてーーーーッキャァーーーー!」


ドラゴンが尻尾で己の翼ごと地面を叩き付けて、悪玉女が衝撃で吹き飛ぶ。


「ーーーークッ」


邪魔な存在が木の根本に転がって行ったが、生きているし、大した怪我もしていないだろう。


ーーーー放っておくとして。


この状態はマズイ、な。


尻尾の棘が左腕に刺さった。

毒を持っているこのドラゴンは尻尾にある毒が一番強い。


「ーーーーギルーーーー!」


エルディアーナの呼ぶ声に、ハッと意識を集中させる。

このままマゴマゴしていたら、結界から出て来かねない。


「もう終わるから、待っていろ。俺がそこに行くまで、良いな?」


ギルベルトは今度こそ、ドラゴンの首元に剣を振り下ろした。






フワッとダイジェスト版でお送りしております。

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