表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/30

8.オオケラ退治

ジンベの家でお茶をいただいていると、隣村のホプキンがやってきた。


大戦斧を玄関に置いて、居間へと上がってくる。



「最近、トレント共が増えて厄介じゃわい」


「そうですね……この村付近でもトレントが多くなっていますね」


「へえ……最近、トレントって多くなってるんだー」



ホプキンとジンベの話を聞きながら、私は蒸かしイモをパクっと口へ入れる。



トレントってこの間、森で遭った魔獣よね。



「トレントが増えると困るの?」


「それはもう……トレントは地面の養分を吸い取ってしまい、土地が枯れてしまうんです」


「もし、村の畑にトレントが入ってきたら……?」


「一体でもトレントが畑に侵入すれば、農作物はダメになるでしょうね」


「それって一大事じゃないの!」



ジンベの話を聞いて、私はテーブルをバンと叩いて大声をあげた。


ホプキンはアゴひげを触りながら目を細める。



「トレントの活動時期は春から秋なんじゃ。冬はめったに動かんのに、今年の冬は変じゃのう」


「ええ、毎朝、魔獣を討伐している、ゴンベも同じことを言ってましたね」



ゴンベって毎日、魔獣を狩ってくれていたのね。


だから、この村の周辺には魔獣がいなかったんだわ。


ホプキンへお茶を出しながら、ジンベは難しい表情をする。



「トレントが森の浅い部分に来るなんて、森の奥に何かいるのかもしれませんね」


「そう思うじゃろ。これから森の奥を調べに行こうと思ってのう。お主等を誘いに来たんじゃ」


「それは是非、調査が必要ね!」


「エマ様、森に遊びに行くわけじゃないですよ。森には魔獣もいて危険な場所なんですから」



だって、家の中でゴロゴロしているのに飽きたんだもん。


食べて寝て、食べて寝てばかりしているから、ちょっとお腹のポッチャリが気になるし……


オリビアとエドモンドもいるから大丈夫でしょ。



渋るジンベを説得して、森の奥への調査に、私も同行することになった。


私、オリビア、エドモンド、ジンベ、ゴンベ、ホプキン、六人は、昼前に村を出発して森の奥を目指す。


一時間も歩かない間に疲れた私はゴンベの背負子に座る。


やっぱりゴンベの背中は安心するのよね。


やはり森の中はトレントの数が多い。


オリビアとエドモンドが先鋒を務めて、トレント達を屠っていく。


ホプキンは後ろに回り込んだトレントを大戦斧で斬り裂く。


三時間ほどかけて森の奥まで入ると、トレントの姿はなく、森は不気味なほど静かだった。



「あれ? 案外、静かなのね?」


「何かが潜んでいるような気配がします。警戒を怠らないでください」



ジンベに忠告され、森の奥へ慎重に進んで行くと、茂みの向こうから「キャー」という微かな悲鳴が聞こえた。


その声を聞いたオリビアとエドモンドが茂みの奥へ向かって走り出す。


私は慌てて声を発した。



「ゴンベ!」


「んだ!」



私の声に反応して、ゴンベが四つ足になって二人の後を追う。


背負子から振り落とされた私は地面に尻もちを着いた。



アイタタタタ!


今度、背負子に安全ベルトを着けようかしら?



ジンベもホプキンも三人を追って茂みの中へ入っていく。


皆に遅れて、私はお尻を擦りながら後に続いた。



「ギギギギー!」



茂みを抜けると三メートルほどの巨大な虫が、モグラに似た手を振り上げている。


その手をオリビアとエドモンドが剣で受け止め、ゴンベが渾身の体当たりを繰り出した。


ホプキンが大戦斧を斜めに大きく構えて前進する。



「オオケラじゃ!」



オオケラと呼ばれた虫型の魔獣はゴンベに吹き飛ばされ、大樹へ体をめり込ませる。


その腹へめがけて、ホプキンは大戦斧を振り下ろし、腹を引き裂いた。


息の根を止めたオオケラを見て、ホプキンは大きく息を吐く。


剣を鞘へ収めながら、オリビアは真剣な表情になっている。



「なんだ、あの魔獣は? 腕が金属のように硬かったぞ」


「あれは地中にいる虫型の魔獣ですよ。虫型の甲殻は硬くて、剣でも貫けませんからね。唯一の弱点の柔らかい腹を裂く以外に殺す方法はないのが厄介なんですよ」



いつの間にか私の隣にきていたジンベがオリビアに向けて説明する。


私達が話をしていると、ゴンベは地面に屈んで何かを両手で救いすくいあげた。


そして、私達の元へゆっくりと歩いきて、両手の上にあるモノを見せる。


覗き込んでみると、緑の服を着た四本腕の小人が、ゴンベの両手の中で倒れていた。



「ドライアド様じゃな」



小人を見たホプキンが地面に体を伏せる。


その隣でジンベは跪いて手を合わせていた。



ドライアド……たしか森の妖精? 精霊だったかしら?


昔に絵本で読んだことがあるような、ないような?



私は思い出せずに唇に人差し指を当てる。


オリビアは私の隣に立って、腰に手を当てる。



「ドライアドって、絵本にも出てくる森に恩恵を与える守護者のことよ。実際に見たのは初めてだけど、実在したのね」



動かないドライアドを見守っていると、ジンベは荷物から水の入った革袋を取り出して、ドライアドに水をかける。


するとドライアドの体が輝きだし、まぶたがピクピクと動き出した。


そしてパチリと目を開けて、キョロキョロと辺りを見る。



「あれ? 私……オオケラに食べられそうになって……」


「よかっただ。ドライアド様、元気になっただ」


「あなた達が助けてくださったのね。本当にありがとう」



ドライアドは手の平の上で立ち上がるとペコリと頭を下げた。


私は手の平の上に顔を近づけて彼女に質問する。



「どうして、こんな所で魔獣に襲われていたの?」


「最近、この辺りの地面の栄養が急激に減ったのを感じて……。なぜか地中のワーム達の数が少なくなっていたの。トレント達も栄養を求めて移動していたみたいで……トレント達を求めてオオケラも森の奥から出てきてしまって……」


ん? 地面の中のワームが少なくなった?


それって、畑の土壌を改良するために、私達がワームをいっぱい取ったのが原因!?


そのせいでトレント達が村の近くまで移動してきたの?



ドライアドの言葉を聞いて、全員が私の方へ視線を向ける。



それじゃあ、村の近くにトレント達がたくさん集まったのは私の発案が原因だったのね!



私は頬をピクピクとさせながら、ドライアドに話しかける。



「少しお話ししたいことがあるの。ちょっと家まで来ない?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ