7.ウニョウニョネバネバ
ジャガイモを植えてから百日が過ぎた。
村のみんなでジャガイモを収穫する。
皿の上にはずらっとジャガイモ料理が並んでいる。
ヤギの乳からつくったチーズを蒸かしたジャガイモと一緒に口の中へガブリ。
チーズとジャガイモって相性がとてもいいのよね。
口の中がちょー幸せ!
一緒に料理を食べているオリビアとエドモンドも美味しさに表情が蕩けている。
「やっぱり肉と魚ばっかりだと、体重が不安だったのよね」
「オリビアさんは、太ってもおキレイです」
「まだ私は太ってないわよ!」
うん……二人は平常運転ね。
ジャガイモは土地が痩せていてもスクスクと育つから、これで村の食料問題は一先ず安心と。
でも……ちょっとパンが恋しいかも……
なんとか土壌を改善する方法はないかしら?
前世の日本の知識で土壌を良くする方法は、少しなら知ってるけど……
石灰を混ぜる方法だと……土壌を改良するのに年単位でかかるのよね……
たしかミミズのうんちって、土壌の浄化作用があるのよね!
土の栄養素が豊富になるって、前世の日本で読んだ本の中に書いてあったような……
うぅ……パンのことを考えてたら、本気で食べたくなってきたわ!
包まっていた布団を脱ぎ捨てて、私は隣のジンベの家を向かう。
そして部屋で作業をしていたジンベに質問する。
「ねえ、この辺りにミミズいない? 大きなミミズ!」
「あーそれならワームという魔蟲がミミズに似ていますね。森の中へ行けば、たぶん土の中にいると思いますよ」
「それよ! それそれ! それを捕まえにいきましょ!」
「でも土の中だから、なかなか見つからないと思いますよ」
うー、土を掘っても、必ずワームがいるとは限らないもんね。
「何かワームの好きそうなモノはないかしら?」
「うーん、ワームは雑食性ですからねー」
「誰かワームのことを知ってる人っていないの?」
「地中のことなら、モグラ族のノラに聞くのが一番ですね」
え? モグラ族……そんな人いたかしら?
「ノラはいつも家の地面を掘って地中にいますからね。エマ様は会ったことないと思いますよ」
地面の中にいるなら、家は必要ないのでは?
まぁ、事情は人それぞれよね。
私とジンベがノラの家に行くと、部屋の中はもぬけの空だった。
そして部屋の中央に大きな穴が空いている。
「ほら、やっぱりいない。ちょっと私がノラを連れてきますよ」
ジンベはスタスタスタと部屋の中へ入っていき、ピョンと穴の中へ飛び込んでいった。
あれ? レッサーパンダってアナグマ科だったけ?
うー、よくわかんないや……
三十分近く待ってもジンベは穴から出て来ない。
退屈になった私は床にゴロンと横になり、そのまま意識を手放した。
体を揺すられて目を開けると、ジンベのつぶらな目と合った。
やっぱりレッサーパンダって可愛いわ!
「寝ぼけてないで、ノラを連れてきましたよ。地下に家をつくってるとは思いませんでしたよ」
「だって冬は寒いんだもん」
ジンベの隣から可愛い声が聞こえる。
声のほうへ顔を向けると、小さな目をパチパチさせているノラがいた。
うわー、モグラって超かわいいのね。
うー抱きしめたい。
「ねえ、魔蟲のワームについて教えてほしいんだけど?」
「あいつ等は嫌いだもん。私の好物を食べちゃうんだもん。ワームは雑食性だけど、果物が好物で、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、何でも食べるもん」
冬といえばイチゴよね。
私はガバッと立ち上がり、森へ向けて指差す。
「野イチゴの下の土にワームがいるはずよ。みんなでワームを取りにいくわよ」
ジンベは村の家々を周り、人々はワーム狩りのことを伝えていった。
「今日はワーム祭りだー!」
何かの祭りと勘違いしている人もいるみたいだけど、そこはご愛敬ということで……
私はゴンベの背負子に座って森の中を進んでいく。
隣でジンベが鼻をクンクンさせて匂いを嗅いでいる。
しばらく歩いているとノラがひげをピクピクとさせる。
「この辺りの茂みに野イチゴがいっぱい実ってるもん。私が土の中を掘ってみるもん」
そういってノラは特殊な手をシャキーンと構え、土をドンドン掘っていく。
そして、あっという間に穴の中へ姿を消した。
地面を歩いているよりも、土を掘るほうが早いなんてスゴイわ。
私はゴンベの背中から飛び降り、手近にあった野イチゴを摘んで口の中へ入れる。
うー、酸味があって美味しい!
近くの土がモコモコと盛り上がり、ノラがニョキッと顔を出した。
その手の上で、ワームがウニョウニョと動いている。
ちょっと想像していたより大きくて気持ち悪いんですけど
直径は一センチほどなんだけど、長さは一メートルありそう。
ウゲ―! キモ!
ジンベは嬉しそうにノラからワームを受け取る
。
「これはワームの幼体なんですよ。大きく成長すると全長百メートルを越えますからね」
こんな気持ち悪いのが百メートル!
ウニョウニョネバネバしたのが百メートル!
「ヒィ!」
気持ちが悪くなってその場に崩れる私をよそに、村のみんなは土を掘って、次々とワームを捕まえていく。
これも全て小麦のため、パンのためよ。しっかりしなさい、私。
大きな革袋三つにワームを詰め込み、みんなで村へ戻る。
畑の周囲の土を掘り返し、ワームが逃げないように網を張る。
そして、畑の中へワームを放った。
これでワームが土を食べて吐き出した排泄物が畑の栄養になるはず。




