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6.美味しさは正義です

店員は私達を二階の応接室へ案内する。


部屋の中へ入ると、支店長はオリビアの甲冑を見てソファから立ち上がった。



「私はメイナード侯爵家の私兵軍軍隊長のオリビア。あなたが支店長かな?」


「はい、私がアルバン商会の支店長のチャックでございます。軍隊長様が、このような商会の支店へ何用でございましょう?」


「こちらにいるお嬢さんの話を聞いてあげてほしい。故あって身分を隠されているが、高貴な方だから、粗相のないように」


「はい!」



さすがオリビア、威厳たっぷりね。


あらら、支店長ったら萎縮しちゃって、予想通りね。



私はジンベから反物を受け取り、それをチャックさんへ手渡す。



「これは?」


「絹よりも貴重な品よ。よく見分してちょうだい」


「これはサラサラ、スベスベ、確かに絹と比べても遜色ないですね」



チャックさんは布を触ってウットリした表情をする。



「この反物を定期的に納入するから、買い取ってちょうだい」


「おお、当商会に専属で卸していただけると」


「そのかわり、値段のほうはよろしくね」


「それはもう、侯爵様のお知り合いであれば」



これでまとまった資金が手に入るわ!


私達は持ってきた反物をチャックに買い取ってもらった。


革袋に入った金貨をみせると、ジンベもゴンベも感動で泣きそうになっている。



「ゴンベ、生きててよかったな」


「おら、金貨なんて生まれて初めて触っただよ」



私は金貨を見てニヤニヤとほくそ笑む。



これで薄い味付けの料理から開放よ!



私達は調理用具屋へ立ちより、調味料を買うことができた。


ネージンの街から村に戻った私は、さっそくコリンに頼んで七輪で肉を焼いてもらう。


そしてコショウをふんだんにかけた肉を口に放り込む。



肉が口の中に蕩けて、肉汁とコショウが絶妙ー!


めちゃうまー!



私がパクパクと肉を口に放り込んでいると、オリビアが冷ややかな視線を送ってくる。



「また太って婚約破棄されるわよ」


「うっさい! 美味しいは正義なの!」



オリビアは不安そうに自分の腹をさする。



「私が我慢してダイエットしているというのに……」


「オリビア様はダイエットしなくても、美しいです」



エドモンド、それって誉め言葉になってないからね!



ネージンの街から戻ってきて一週間が過ぎた。


木炭とゴウラの布のおかげで、少しずつだけど村の裕福になってきた。


オリビアは村の子供達に好かれ、子供達に文字の読み書きを教えている。


エドモンドは村の男達に剣技を教え、いっしょに訓練にはげんでいた。



私といえば……肉の食べ過ぎで、ちょっと太ったかも……


家でゴロゴロするのにも飽きたし、ゴンベでも誘って森へ行ってみよう。



ゴンベと二人で村を出ると、なぜか後ろからジンベが走ってきた。


「待ってくださいよ。エマ様を一人にするなってオリビアさんから言われてるんですよ」



まったくオリビアったら心配性なんだから。


この辺りは、獣人のみんなが魔獣を駆除しているから心配ないのに。



歩いている途中で疲れたので、私はゴンベの背負子に座って森の中へ進む。



なんだかゴンベの背負子にもたれるのって気持ちいいのよね。


背中が大きいから安心するのかな。


あーなんだか気持ちよくなって睡魔が……ふぁぁ……



急にゴンベは足を止めて周囲を警戒するように腰を低くする。


そして隣を歩いていたジンベは鼻に皺を寄せた。



「何かが潜んでいる匂いがします。気をつけてください」


「何か、くるだよ!」



ゴンベが叫ぶのと同時に周囲の樹々から枝が襲いかかってくる。


それを見たジンベは甲高い声で叫ぶ。



「トレントです! トレントが樹に擬態していますよ!」


「キャー!」



飛んでくる枝をゴンベが鋭い爪で薙ぎ払う。


その反動で、私は背負子から放り出された。



あいてててて、お尻を打ったじゃないの。


痣になったらどうするのよ!



「二人とも、やっちゃいなさい!」



私の号令と共に二人は幹に顏が浮かんでいる樹へめがけて走りだす。


ゴンベは迫ってくる枝を、力任せに引き千切って前進を続ける。


そしてジンベは小柄な体を利用して、枝を避けて幹の顏の部分をひっかいた。



「ギャアー ウギャァアー」



そういえばレッサーパンダって可愛い顏のわりには狂暴なのよね。


私がそんなことを考えている間に、ゴンベの必殺の拳が、トレントの顔面に炸裂した。



バキバキ!



幹に大きな穴が開き、トレントは幹から折れて動かなくなった。


その姿を見ながら、ジンベは腕で額を拭う。



「この辺りのトレントは全て駆除したはずなんですが迂闊でしたね」


「ううん、二人がいたから安心していたわ。二人共、かっこよかったわよ」



窮地を助けてもらったんだから、ここはしっかりと褒めてあげないとね。


お母様から、男は褒めて手玉に取るって教わったし。



二人は私に褒められて、フニャフニャと顔を綻ばせている。


それを横目で見ながら、トレントの屍に近づく。


トレントの枝ってビューンって伸びたり、縮んだりしているけど、どんな感触なんだろう?



私はトレントの枝を両手で持って、両側に引っ張ってみる。



「すごーい、めちゃくちゃ伸びるじゃん!」



ぱっと手を放すと、シュッと元の長さへ戻る。


私は何度も枝を引っ張って、それから放して遊んでみる。


その姿を見て、ジンベが駆け寄ってきた。


「何をしてるんですか? まだ周囲にトレントがいるかもしれません。今日はこれで村へ戻りましょう」


「そうね。なんだか疲れちゃったし、帰ろうか」



背負子に乗ってゴンベに運ばれながら、私は手を広げる。



伸び縮みする素材かー。


何か面白いことに使えないかなー?

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