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25.異世界の運び屋さん

スタンピードが通り過ぎ、クレタの街からネージンの街の方面にあった小さな森は、樹々が倒されて荒地と化していた。



せっかくネージンの街まで作っていた街道もボコボコ……


クレタの街の中の被害が軽かっただけでも、良かったとしたほうがいいよね。



空の偵察から戻ってきたガイアが邸の裏庭に帰ってきた。



《ネージンの街も、バルナレス伯爵の領都も無事だ。ワシの仲間には森に戻ってもらったぞ》


「ガイアはどうするの? 森に帰っちゃうの?」


《我はお前達が気に入った。ここを我の巣にしよう》


「うん、ガイアはもう私達の仲間だよ」



ガイアも私達と、せっかく仲良くなれたんだから、一緒に遊びたいよね。



街の補修には土木建築局のみんなが頑張ってくれているし、ネージンの街へ通じる街道はゴブリン族とコボルト族のみなさんが頑張ってくれている。


街の怪我人はリアンが中級と低級ポーションを治療しているから大丈夫と……



ゴンベを中心とする獣人達はドライアド三姉妹と一緒に、街の周囲の森の修復へ向かった。


シドを筆頭に竜人族達は、街周辺の警戒するため大空を滑空している。



みんな頑張っているだから私も頑張らないと!



両拳を握りしめて決意をかためていると、扉が開いて応接室にグレースが現れた。



「エマ、のんびりしてるなら、私達を手伝って、人手が足りないの」


「わかった、私も手伝うわ」



グレースの後を追い応接室を出る。


彼女はスタスタと前を歩いて会議室の中へと入っていく。



会議室……何かイヤな予感が……



部屋の中を覗き込むと、ジンベ、コリンの二人が書類作業に追われていた。



「私、急にお腹が痛くなってきちゃった」


「待ちなさい。仮病で逃げようとしてもダメ」



逃げようとする私の首根っこをグレースが両手で掴む。



「街に避難してきた亜人や獣人達の住所録を作らないと、後々、面倒なことになるのよ。エマも街の長なんだから書類仕事ぐらい手伝いなさい」


「事務仕事はヤダ! 大キラーイ!」


「文句をいうんじゃないの、さっさと椅子に座って作業をしなさい」



ううー、小さい頃から、体をじっとしているのは苦手なのに……


四人で黙々を書類作業を続ける……



今回のスタンピード騒ぎで近隣の小さな村や、森の中に住んでいた亜人種達が、街に流れ込んだ。


住所欄が空白の人が沢山いる……やっぱり住所の決まっていない人が多いのね。


へえ、ハーフリンク族やケンタウロス族、ユニコン族も街に来てるんだ。


こっそり会いに行こうかな……



私はそっと椅子から立ち上がり、みんなの邪魔にならないようにソロソロと壁際を歩く。


すると顏も上げずにグレースが低い声をだす。



「エマ、どこへ行くつもりかな?」


「え……ちょっとケンタウロス族とユニコン族に会いに行こうと思って……両種族とも家も住所もないでしょ、だから困ってると思って……」


「そういうことなら私達も一緒に行くわ。現状視察も立派な仕事だわ」


「グレースも事務仕事がイヤだったんでしょ」



私達四人は事務処理を止めて、街へと繰り出した。


街の外壁は崩れたりしているが、街の被害は思っていたより少ない。


大通りや路地には、行き場のない人々が溢れていた。



「これは早急に住居対策が必要ね」



グレイスは通りに座っている人達を見ながら呟く。



家を建てるのって日数がかかるから……もっと短期間で家を建てる方法があればいいんだけど……



私達は街の中心街を抜けて、大門に近い外壁沿いを歩いていく。



最近、この辺りに来たことなかったけど……スラム地区のようになってるのね。


路上もゴミがいっぱいだし、ここに住んでる人達の衛生面が気になるわ。



狭い路地を歩いていくと小さな広場が現れ、そこにケンタウロス族達が集まっていた。



へえ、やっぱり人の上半身に馬の下半身なんだ……めちゃカッコイイんですけど!



黒髪ロン毛のケンタウロスが私達に近寄ってくる。



「ジロジロと見て、お前達はいったい何者だ?」


「私はこのクレタの街の街長をしているエマよ。あなたがケンタウロス族の族長さん?」


「街長様とは失礼した。私が族長のメイソンだ」



うわ……上半身が細マッチョのイケメンって画になるわ。


私がウットリと族長を見ていると、グレースに脇腹を抓られた。



「ちょっと痛いじゃないの」


「見惚れている場合じゃないでしょ。さっさと族長へ用件を言いなさいよ」


「メイソンさん、ちょっと街のために働いてみない? きちんと住むところも用意するし、給金も払うわよ」



私は族長に楚々と近寄り、下から見上げる。


みよ……この私の上目遣い! あざとくない?



「私は女性が苦手だ。それ以上、近寄るな」



ケンタウロス族の族長はイヤそうな表情をして、私を避ける。



私の必殺、上目遣いが通用しないとは……なかなか手強い。



「さっさとしないと帰るわよ」


「わかったわよ……ケンタウロスのみなさん、郵便局の配達屋さんをしてみない?」


「郵便局? 配達屋? 何なんだ、それは?」



ヤバ……前世の日本の記憶をそのまま喋っちゃった。



「つまり、その早い脚を利用して、街から街への運び屋をしないかというお誘いなの」


「運び屋か……それなら我等に適任だな。是非、雇ってもらいたい」



やったね! これでネージンの街や、ルーカスのいるバルナレス伯爵領の領都にも連絡できる。


それに、これで遠い街にもクレタの街で生産した商品を運ぶことができるわ。



しばらくメイソンと今後の打ち合わせをした後、私は手を上げて質問する。



「あの……ユニコン族のみなさんって、どこにいるのかな? ケンタウロス族と一緒にいると思ったんだけど?」


「あのプライドの髙い馬共か! ケンタウロス族を奴等と一緒にするな! 奴等なら厩舎に決まっているだろ!」



え! 同じ馬の体同士だから仲良しだと思ってたのに、そんなに仲が悪いの!?


厩舎って……ユニコン族って、たしかに姿は馬だけど……それでいいの?

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