表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/30

20.そんなこと聞いてませんけど!?

ゴブリン達がクレタの街へ来てから一週間が経った。


ゴブリン達はオリビアの発案で、クレタの街の軍隊として訓練を受けている。



うーん……私兵軍とも言えないし……街の軍隊だからなー。何て名前をつけようかしら?



そんなことを考えていると、コリンが応接室へ入ってきた。



「大変です。こんどはコボルトの集団が門で騒いでいますー」


「えーまたなの! とにかく門へ行ってみる―!」



私はソファから飛び上がり、門へと向かう。


大通りを必死に走っていると、ルーカスが追いついてきた。



「今度はコボルトか! いったい何が起こってるんだ!?」


「私に聞かれてもわかんないわよ。とにかく急ぎましょ」



私達が門へ到着すると、ボロボロに傷ついたコボルト達が、門番を相手に威嚇している。



毛並みも荒れてるし、所々、怪我で血が滲んでる……



私はルーカスのほうへ顔を向ける。



「大至急でポーションと石鹸を持ってきて! それとオリビア、グレース、リアムを呼んできて」


「わかった!」



ルーカスは身を翻して走り去っていった。


やっぱり男子はフットワークの軽いのほうがいいよね……



ルーカスの後ろ姿を見送って、私はコボルト達へ向き直る。


するとコボルトの一人が前に進みでる。



「私はコボルト族の棟梁、小太郎でござる」



え……ござるって……どうしよう、可愛い……


モフモフ、モフモフがいっぱい!


「我等の集落は『暗闇の森』深くにあり、そこで静か暮らしていたでござる。そこを卑劣なオーク族に襲われ、必死に部族を連れて逃げてきた次第、どうかクレタの街へ入れていただきたい」



うーん、ゴブリン達と違って、臭くないから街に入れてあげでもいいんだけど……


やっぱり衣服がボロボロだし……怪我もしているようだし、街に入れるのはちょっとね……


しばらく待っているとルーカス、グレース、リアム、オリビアが走ってきた。


そしてリアムは持ってきたポーションでコボルト達の怪我を治癒していく。


私からコボルト達の事情を聞いたグレースは、衣服を調達するため、街の服屋へと走っていった。


オリビアはコボルト達を見て、ため息をつく。



「コボルト族か……また私のほうで引き受けるわ。これだと本当に軍ができそうね」



街に来たばかりのコボルト達が、街ですぐに仕事に就けるとは思えない。



でも仕事がないと食べていけないもんね。


何もせずに街に置いておくわけにもいかないし……



「とりあえず小川へ連れていって、体を洗ってもらって。このままだと街へ入れられないから」


「了解した。みんな僕と一緒に来てくれ」



ルーカスが先頭に立って、コボルト達を小川へ連れていく。



ホプキンに頼んで、やっとゴブリン達の家を確保したばかりなのに……


いったい『暗闇の森』で何が起こっているのよ。



コボルト族達のことはルーカス達に任せて、私とオリビアは邸へと戻った。


応接室のソファに座ったオリビアは、窓際の植木鉢にいるエラに声をかける。



「エラ、『暗闇の森』の情報を知りたいんだけど」


「わかったわ。お姉ちゃん達に連絡を取ってみる」



エラは四本の腕を枝のように伸ばして、背中に円を描く。


その円の中の透明の膜がプルプルと震えている。



「お姉ちゃん達、きこえてる? 森でいったい何が起きてるの?」


「エラなの? 『漆黒の森』の魔族の動きが活発になってるの。その影響で『暗闇の森』の種族達の中で争いが起きてて。トロール族、オーク族が魔族側についたわ」



『漆黒の森』? 魔族? なんですかそれは?



私が戸惑っていると、オリビアは呆れた表情になる。



「『漆黒の森』は『暗闇の森』の最奥から続く、魔族領に続く森よ」


「え? 辺境の向こうって、エーレンベルク王国とは別の国があるんじゃないの?」


「あるわよ。『漆黒の森』の先に、魔族の領土と魔族の国がね」



この世界には前世の日本のような世界地図はない。


私が見たことのある地図って、メイナード侯爵領の地図だけなんだもん。


魔族の領土なんて聞いたこともないわよ。


やっぱり魔法があるぐらいだから、魔族っていたのね……



エラは膜へ向けて話を続けている。



「お姉ちゃん達が大丈夫なの?」


「ハイエルフ族に守ってもらってるけど、状況はヤバイわね。危なくなったらクレタの街へ避難するから、その時はよろしくね」



え? ハイエルフ族とドライアド達も逃げてくるの?


いったいどうなっちゃうのよ!


私は訳のわからない状況に混乱しながらソファから立つ。


そして深呼吸を三回して、外へ向けてビッシっと指差す。



「私一人じゃ無理! こうなったら全員集合よ!」


「わかった。私が呼んでこよう」



夕暮れ時、オリビアの呼びかけにより仲間達が邸へと戻ってきた。


オリビアはみんなに向けて、魔族達の動きが活発になったことを伝える。



「そうなるトロール族とオーク族は魔族側についたというわけじゃな。奴等は元々は魔族の眷属じゃからのう」


「オーク族も魔族側と推測します」



ホプキンの言葉にジンベが同意する。



ルーカスは両手を組んで、オリビアへ視線を送る。



「これは至急でメイナード侯爵様へ知らせたほうがいいかもしれない。僕はバルナレス伯爵へ報告に行こう」


「それはちょっと待って」



私は慌ててルーカスを止める。


お父様に報告するなんて……そんなことをしたら私の居場所がバレるじゃない。


せっかくお父様に隠れて自由に暮らしているのに、また窮屈な貴族のお嬢様生活をするなんて無理!


するとルーカスは体の力を抜いて、ふーっと深く息を吐く。


「ゲスキワード男爵がメイナード侯爵へ報告していないって、本当に思っているのかい。メイナード侯爵は男爵からの申し出を蹴ったんだ。だから男爵は僕の父であるバルナレス伯爵を頼ってきたんだよ」



え! お父様は私がクレタの街にいることを知ってるの!


オリビアはニッコリと笑って両手を広げる。



「私がなぜ村に訪れたと思ってるの。全部、メイナード侯爵が仕組まれたことよ。だってエマ一人だと何をするかわからないでしょ」



そんな……一人で自立できたと思っていたのに……お父様の手の平の上だったなんて……


ちょっと一人にしてもらっていいですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ