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2.食料の確保は大事です

私は十歳の時に庭で遊んでいて石で頭を打った。


そのことが原因で一週間も高熱が出て、生死の境をさまよったの。


そして目覚めた時に、前世の日本の記憶がよみがえっていたわけ。


だから邸では、日本の料理を真似て、色々と試食していたんだけど……


そのおかげで太っちゃったのよね。


まさか追放されて村で、前世の知識の記憶が役立つなんて思わなかったわ。



村の者全員で、森でジャガイモを取ってきて、村の外れに作った畑に植え付ける。


前世の日本の記憶では、ジャガイモの育成期間、百日ほどだったと思う。


ちょっと小腹が空いてるのよね。


昨日、食べたのは魚とキノコの汁モノだけだもん、お腹も空くよ。


私は木のテーブルに突っ伏す。



「食卓がジャガイモだけって寂しいわね」


「時々、狩りで鹿やイノシシの肉も手に入りますが」


「いつ獲物を捕まえられるかわからないじゃない」


「それが狩りの醍醐味です」



ジンベ、狩りを趣味のように言うのは止めてよね。


こっちは毎日の食事がかかってるんだから。


そんな運に任せてられないわ。


私は立ち上がって外を指差す。



「川へ連れて行って」



ジンベと二人で村から獣道を歩いて三十分。


目の前に横幅五メートルほどの川が広がっている。


透明な流れの中に魚が川上に向いて泳いでいく。


あまり深くはなさそう?



「川上と川下にセキを作るわよ」


「セキって何です?」


「川に石を積み上げたモノよ。とにかく人手がいるの。村の男達を呼んできて」



ジンベは村の男達を集め、川上と川下に石を積んでいく。



「一か所だけ小さく出入り口を作って、その口へ魚が入っていくようにハの字に石を積んでね」



四時間ほどで川上と川下にハの字のセキが完成した。



「それじゃあ、川上から川の中を歩いていきて。なるべく音を立ててね」



私の号令で男達は川上へと走っていった。


三十分ほど待つと、男達は足でバシャバシャと音を鳴らして戻ってきた。


ダムを見ると、川上にいた魚たちがダムの周りに集まっている。


そして一匹ずつ、一か所だけ空いたダムの口へと入っていく。


何回か、川上から歩くことを繰り返すと、セキとセキの間に魚が沢山集まった。


魚が逃げられないようにセキの穴を木の板で塞ぐ。


これで魚はゲットできたわね。


その日から料理の皿の上が、魚一匹から魚三匹に増えた。


魚の次は肉よ! お肉!



「ねえ、森に鳥はいない? 空が飛べなくて、まんまるい体の鳥」


「あー、それはコロコロ鳥のことですね。森の茂みの中にいますよ。すばやくて矢を当てるのは難しいですけど」



猪や鹿の肉もいいけど、やっぱり鶏肉はゲットしたいわね。


うまく飼育できれば卵も手に入るし。


魚の養殖を初めてから一週間後、私はジンベに指示して、村の女達を広場へ集めてもらった。



「皆で大きて横に長い網を編んでほしいの。網の目は粗くていいから」



五日かけて、村の女達は網を作ってくれた。


その網を繋ぎ合わせて、村を中心に渦巻状に、網と網の間は三メートルほどに張っていく。


一週間ほどで村の周辺の森が中に網が張り巡らされた。


男達は村から遠くにある網の端から村へ向けて、渦巻状の網の中を、動物達を追い込むように音を鳴らして歩く。


すると網と網に阻まれて逃げられなくなった動物達が、網の中を走って逃げる。


そして村近くにある袋小路に追い込まれていく。


そこで網を閉じて動物達を閉じ込める。



「殺しちゃダメ。この村で飼育するんだから」



鹿、猪、野ブタ、狸、狐、コロコロ鳥……



思っていたよりも沢山の種類の動物達を捕まえることができたわね。



食べると危なそうな動物もいるけど……



これで動物達を育てて、数を増やせられれば、毎日お肉を食べられる。


でも味付けが塩だけって、ちょっと口が寂しいのよね。


家に夕飯を持ってきてくれた狐族のコリンへ声をかける。



「ねえ、この辺りに街はないの?」


「歩いて一日の距離にネージンという辺境の街があります」


「調味料、売ってるかな?」


「ありますけど……結構、高価ですよ」



あ……そういえば、この村の中ってブツブツ交換なんだよね。


お金を使ってるところを見たことないわー。


「ねえ、お金ってどうやって稼いでるの?」


「はい、森の動物達の毛皮、角、牙なんかを売ってますけど……あまりお金にならなくて……」


そうよねー、村の人達を見てても貧相な身なりだもん。


まずは何かでお金を稼がないと……


でもこの辺りって森ばっかりだからなー。


樹で何かできないかしら?


ふと料理を食べ終えた盆に乗っている焼き魚が目に入る。


火を点けるのは火炎石に魔力を流せばいいけど……



「いい手を思いついたわ。炭を作る樹なら沢山あるわ」


「炭って何ですか?」


「炭を使うと、普通の木を燃やすよりも、火を長持ちさせることができるのよ。これからの冬にぴったりね」



前世の日本の記憶では、炭といえば備長炭だよね。


でも、ここは異世界だから、色々な樹々で試してみないとね。


私はコリンにお願いしてジンベを家に連れてきてもらう。


そしてジンベに炭を作り方を丁寧に説明し、村のみんなで炭を作ることになった。


それから一週間、村の広場に炭が大量に積みあがた。


村の若い男女は背負い籠へ炭をギュウギュウに詰めていく。


私は街の方向へ向け、ビシっと指を差す。



「さあ、行商にいくわよ」



村の皆と一緒に勢いよく村を出発した私は一時間もしない間に挫折した。


だってお嬢様育ちなんだから、長時間歩いたことなんてないわよ。


熊族のゴンベの背負子に座りながら細い街道を進む。


やっぱり熊さんの背中って大きくて安心できるわ。


つぶらな瞳が可愛いのよね。


夜の間は皆で固まって野営をして、次の日の朝から歩きだす。


そして昼前にネージンの街へ着いた。


辺境の小さな街といっても、きちんとし石の外壁に守られた城塞都市だった。


みんなと一緒に外壁の大門を通って街の中へ入る。


大通りを歩き、市が開かれている場所へ到着した。


市では露天商たちが様々な品物を売っている。


やっぱり街だけあって人が多いわね。


ああ、この雰囲気なんだかホッとするわー。


私がキョロキョロと辺りを見ている間に、皆はゴザを敷いて炭を並べ始める。



「さー売って売って売りまくるわよ!」



一時間後……村のみんなが呼び込みをしているのに、立ち止まっても誰も炭を買ってくれない。


二時間後……立ち止まる人もいなくなった。



フフフフ、見てなさい! とっておきの秘策をやっちゃうんだからね!

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