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15.市中引き回し

エラと一緒に慌てて門へ向かうと、獣人達は私達を見て道を開けてくれた。


開け放れた門に、エルフ族、竜人族、鬼人族の者達が立っている。


そしてエラをみて、門にいる亜人達は地面に片膝をついて平伏した。


先頭にいるエルフが顏をあげてニコリと笑う。



「エラちゃん、応援にきたわよ」


「うん、みんなありがとうね」



エラは私の肩の上で、笑いながら大きく腕を振る。



やっぱりエラのお姉ちゃんが寄こした援軍なのね。



エルフは立ち上がり、私達の前に歩いてくる。



「話は聞いたわよ。これは亜人種、獣人種にとって聖戦だって」


「うん、悪い領主をやっつけないとね」



二人は意気投合しているけど……段々と話の内容が変わってきているような……


でも領主から村を潰すと言われてるんだから、この村にとっては聖戦よね。




「エラの知り合いね。私はここの村長のエマ、よろしくね」


「私はレイラ、エルフ族よ。ドライアドは森にとって大事な精霊なの。エラを保護してくれてありがとう。一緒に戦いましょう」



私とレイラの二人が話していると、竜人族と鬼人族の一人が立ち上がり私達に近寄ってくる。



「竜人族のシドだ。よろしく頼む」


「俺は鬼人族のドウジさ。人族共をへドカンと一発かましてやろうぜ」



竜人族、鬼人族……初めて聞く亜人種だけど……めちゃ強そう。


とにかく味方が増えたことはありがたいわ。



二日後、ホプキンがドワーフ族の援軍を連れて戻ってきた。


私は邸の応接室へ亜人、獣人達の代表を集める。


部屋に集まったのは、エラ、リアム、グレース、ジンベ、ホプキン、レイラ、シド、ドウジの八人だ。



「みんな、この村のために集まってくれてありがとう。これだけの戦力があれば、ゲスキワード男爵の兵士達を蹴散らすことができるわ」



リアムが小さく手をあげる。


「村から追い返すだけなら簡単だけど、ずっと戦いを挑まれて長期戦になるのも困る。問題は、どこまでゲスキワード男爵を追い込むかだね」


「俺が一撃でゲスキワード男爵を屠ってもいいが?」


「そんなことをしたら、父上の耳に入っちゃうわ。そうなると侯爵家の私兵達と戦争になっちゃう。だから殺しちゃダメよ」



シドの意見に私は腕をバッテンにする。



お父様が出てきたら村を潰されちゃう……それは絶対に避けないと……



グレースはフーっと息を吐く。


「ネージンの街の人達を巻き込むのは得策ではないわ。だってネージンの街の人々は大事な取引先でもあるんだから」


「そうね……ゲスキワード男爵は私達を侮っているから、兵士と一緒に村へ来るはずよ。そこで確実に男爵を捕まえる方向で作戦を立てましょう。そうすればネージンの街を巻き込まなくて済むわ」



その日、私達は夜遅くまで作戦会議をおこなった。


それから一週間後、私、グレース、エラの三人が応接室でお茶をしていると、ジンベが部屋の中へ駆け込んできた。



「ゲスキワード男爵が攻めてきたー! 連れてきた兵数は、兵士三十名、傭兵七十名ですよ!」


「慌てず、作戦通りにって、みんなに伝えて。私もすぐに準備を整えるから」



併せて兵士百名か……思っていたより多いわね。


人数で圧倒しようと考えたのかも。


でも集まった人数で考えると、いい勝負なんだけどね。



私は軽装備を整え、ゆっくりと村の門へ向かう。


すると馬の上からゲスキワード男爵が私を睨む。



「この村にある財を全て渡せ。それと毎月、私に税を支払うのだ」


「お断りするわ。私達はあなたの財布じゃないもの」


「生意気な娘だ。痛い目を見ないとわからんらしいな。税を支払わない村など不要だ。潰してしまえ!」



ゲスキワード男爵は馬上で剣を真上にかかげる。


それと同時に兵士達と傭兵達が突入してきた。


私はオリビアとエドモンドに守られて、村の中央広場まで退避した。



「みんな、やっちゃいなさい!」



獣人、鬼人達が応戦する。


外壁の上に隠れていたエルフ達は立ち上がり、敵兵へ向けて矢を射っていく。


竜人族は空を滑空し、敵兵の腕を捕まえて大空へ舞い上がって、落下させる。


激しい戦闘が続き、次々と敵兵士達は倒れていく。


それを見たゲスキワード男爵は顏を青くして叫ぶ。


「クソ、これほどの戦力を有していたとは! 一度、引くぞ! 退避! 退避ー!」


「逃げようとしても、ムダなんだからね」



男爵の号令を聞いて、敵兵士達は倒れている兵士を置いたまま、慌てて逃げ出した。


その姿を見て、私はニッコリと笑む。


形勢が不利になったらゲスキワード男爵が逃げ出すことは想定済みよ。


だからドワーフ族には、街道を塞いでもらってるんだから。



「頼んだわよ。ホプキン」



それから二時間後、縄で体をグルグル巻きにされたゲスキワード男爵が、私の前に連れて来られた。



「私はエーレンベルク王国の男爵だぞ。それにメイナード侯爵からネージンの街の領主を承っている。私への無礼は、侯爵閣下への無礼だぞ」



勝手にお父様の名前を騙らないでよ。


お父様は男爵みたいに強欲でも卑劣でもないわ。



私の肩の上で、エラは両手を腰に当てる。



「ちょっとお仕置きが必要なようね」



その言葉を聞いたシド、ドウジ、ホプキンの三人は、一軒の家の中へとゲスキワード男爵を連行していった。


しばらく待っていると、下着姿にされ、首から紐で木の板を吊るした、男爵が姿を現した。


木の板には『私は税金で私服を肥やしました』と書かれている。



「お前達、私にこのようなことをしていいと思っているのか!」


「うっさいわね。オリビア、エドモンド、やっちゃってちょうだい!」



オリビアは座っているゲスキワード男爵を馬の上に乗せる。


エドモンドは馬の手綱を握り、私達を見る。



「それでは、ネージンの街へ行ってきます」



オリビア、エドモンド、ホプキン、シド、レイラの五人は、ゲスキワード男爵を連れてネージンの街へと向かった。


明日、ネージンの街に着いたゲスキワード男爵は、ネージンの街の通りを下着姿のまま歩くことになっている。


簡単にいえば、市中引き回しの刑。


これで領主だからと言って、もう街で偉そうにできないわよね。

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