13.胸の大きさは正しさと比例する?
グレースは元々は遠く西方にあるガンゲルム魔法王国出身の魔法士で、隣国であるブランデルク連邦国から流れてきた冒険者らしい。
魔法の書物を読んだり、研究をするのが好きで魔法士になったが、戦闘は嫌いだという。
それなら、なぜ冒険者になったのだろうと不思議に思うけど、そこは聞かないでおいた。
グレースはゆっくりとお茶を飲み、ホッと息を吐く。
「チャックさんから聞いたんだけど、この獣人の村は大きくなる可能性があると思うの。だから、今から基礎を整えておく必要があるのよ」
やはり胸の大きな女子は、考えることも大きいのね。
私は自分の胸を見て、目を伏せた。
まだ十五歳、これからもきっと育つはず……
「名前を決めるほかに、それで具体的に何をすればいいの?」
「まずはエマさんの家を建て直しからね。一人一部屋は必要だから、大きな邸を建てておいたほうがいいわ。倉庫も用意したほうがいいと思う。それから村の大通りの整備……ネージンの街と、この村へ繋がる街道の整備も必要になってくるかも」
「そんなことしたら、せっかく貯まってきた資金がパーになっちゃうわよ」
グレースの提案を聞いて、私は慌てて両手を振る。
彼女は私を安心させるように、ゆったりと微笑む。
「資金はただ貯めているだけではダメよ。活かす使いどころであれば、出し惜しみしてはダメ。だって邸を建てるのも、村を整備するのも、街道を整備するのも今後のためだからね」
「私もそろそろ一人部屋が欲しいわ。邸を建てるのもいいんと思うわよ」
オリビアもグレースの意見に賛同する。
でも……私が村長と言っても、一人で決めることなんてできないわ。
やっぱり村のみんなに相談しないとね。
「ちょっと隣へ行ってくる」
私は急いで隣のジンベの家へ向かった。
家の中へ入ると、ジンベ、コリン、ホプキン、リアムがお茶をしていた。
先ほどグレースが提案したことを伝えると、ホプキンはうんうんと頷く。
「わしも鍛冶をする工房が欲しいと思っておったところじゃ。この村が発展するなら、邸を大きくしても良かろう」
「私もそう思います。今はエマ様が村長なのですから、大きな邸を建ててください。きっと皆も喜びます」
ジンベはニッコリと微笑む。
それから私達は村の今後について話し合い、村の名前はクリタに決まった。
さっそくジンベは村の住人へ、村の名前が決まったことを伝える。
村の大通りについては、今までの道の利用し、横幅を広げることにした。
村の外には第二外壁を建設し、第一、第二外壁の間の敷地へ、工場、畑、動物の飼育場を移すこととなった。
今の工場の建物は、そのまま倉庫として活用される。
村の開拓が始まって一カ月が経ち、私の邸ができあがった。
三階建てで、大きな間取りの部屋が十二もある、かなり大きい邸が完成した。
この邸に、私、エラ、オリビア、エドモンド、グレース、ジンベ、コリンの七名が住むことになっている。
元の私の家にはリアムが住み、ジンベの家にはホプキンが住むこととなった。
それから一ヵ月が建ち、村の拡張計画は全て完成した。
すると隣村のドワーフ達が、数名、村へやってきた。
「ワハハハ、つい村が大きくなったのが嬉しくて、この村はもっと大きくなると同胞に話したんじゃ」
ホプキンがドワーフ達に村の自慢をしたのね。
ドワーフは鍛冶職人ばかりだから、村に住んでもらえるのは大歓迎だけど……
部屋でエラにお水をあげていると、扉が開いてコリンが入ってくる。
「ネージンの街から伝令の兵士が来ています」
玄関へ行くと、兵士は姿勢はジロリを私を見る。
「村長のエマというのはお前か?」
「私ですけど?」
「ネージンの街の領主であられるゲスキワード男爵様がお呼びである。すぐに邸まで来るようにと仰せだ」
ゲスキワード男爵様……お父様の部下のようだけど、聞いたこともないわね……
「わかりました。後日、邸へ伺うとお伝えください」
伝令の兵は、「しかと伝えたからな」と言い残して、邸から去っていった。
ただの伝令兵なのに、なぜ、あんなにも偉そうなんだろう?
私は不思議に思いながら、オリビアの部屋へ向かう。
扉を開けると、オリビアは鎧を脱いでいるところだった。
やっぱり形が良いのは正義なのか!
「何、人の胸を睨んでるの? それより何かあった?」
「……ネージンの街の領主から呼び出しを受けたのよ……」
「あー、ゲスキワード男爵か。強欲な男だからな、この村のことが気になったんだろう」
なるほど、村を大きくした噂が耳に入ったのね。
オリビアは布で手早く体を拭きながら、フーっと息を吐く。
「エマ様が会う必要もないだろう。私とエドモンドで邸へ行ってこよう」
「ううん、村長は私。これは私の職務だから、きちんと私がこなすわ」
いつまでもオリビアに全てを任せてもいられないし……
少しは村長らしいこともしないとね。
私、オリビア、エドモンド、ゴンベの四人でネージンの街へと向かった。
もちろん、ゴンベは私の背負子係。
だって、ゴンベの背中って、広くてとても気持ちがいいんだもん。
翌日の昼前にネージンの街の領主の邸へと到着した。
門の兵士に案内され、玄関から応接室へと通された私達は、ソファに座って領主を待つことにした。
部屋の扉が開いて、恰幅のよい豪華な衣装を着た男性が現れた。
そして軽蔑するような目でゴンベを見る。
「だれが獣を邸に入れていいと言った。早く摘みだせ」
「はぁ!? ふざけんじゃないわよ!」




