11.上級ポーションの発明
トレント屍を大きい形のまま煮ても、それほどの変化はなかった。
トレントの屍を細かくし、それに植物性の油を混ぜて煮込むと、トレントの樹液と油が混ざって、湯の表面に浮かび上がった。
それを見て、リアムは首を傾げて、ブツブツも呟く。
「あまり樹液を抽出できていないし、釜に異物が浮かんでいる。もっと上手くできると思うだけどな」
次にトレントの屍を石臼で粉にして、油と混ぜて煮詰めてみる。
すると粉は溶けてなくなり、トレントの樹液は全て油に溶けたようだ。
それを桶に入れて冷ましておくと、油と樹液の二層に分かれた。
油を取り除き、樹液だけを取り出し、リアムは満足そうに笑む。
「油と混ぜたままでも使えそうだけど、これで樹液だけを研究することができる」
リアムはスタスタと歩いて、棚に置かれている、薬草を何種類か手に取る。
そして薬草をすり鉢で粉々にし、その粉末をトレントの体液を錬金釜へ入れる。
そして杖でかき混ぜながら『融合』と唱えた。
すると錬金釜の中が光り、若葉のような液体ができあがった。
ずっと作業を見ていた私に向けて、リアムはニッコリと微笑む。
「これでトレントの樹液ポーションは完成だ。他にもトレントの樹液でクリームも作ってみるよ」
試行錯誤はしてたけど、リアムって意外と優秀な錬金術師なのでは?
私とエラが喜んでいると、リアムはハッと驚いた表情をする。
「完成したはいいけど、どれぐらい効用があるかわからない。誰か、病人や怪我人はいないかい?」
「小さな傷を負っている者なら、村に沢山いるわよ」
「それじゃあ、効用を試してみよう」
この前のトレントとの戦いで、負傷を追った村人達は多い。
一番の大怪我をしたのは、白虎族のジローだ。
私、リアム、エラの三人はジローの家を向かう。
家に入ると、布団の上で、ジローは仰向けに寝かされていた。
「深い怪我じゃない!」
「いえいえ、戦闘では、これくらいの傷はよくあることですよ」
私が驚いていると、ジローは安心させるように笑う。
しかし、お腹は大きくパックリと裂けている。
とても軽傷とは思えない。
いくら獣人族の回復能力が人族よりも強いといっても限度があるわ。
「リアム、お願い」
「了解だ」
リアムはフラスコの栓を抜いて、傷口へポーションを垂らしていく。
すると傷口が若草色の光に包まれて輝きだした。
そして光が消えさると、傷はなくなっていた。
ジローさんは傷が治ったことに目を見開いている。
そのポーションの効果を見て、リアムは興奮して大声をあげる。
「これって上級ポーション以上の効果だよ!」
「それってスゴイの?」
「当たり前じゃないか」
リアムの説明では、リアムがポーションに使った薬草は、どこでも手に入る低級ポーション用の薬草らしいの。
それで大怪我が完治したのだから、その効果は驚異的なんだって。
ポーションには低級、中級、上級、特級とあって、このトレント製のポーションは上級以上の効果があるっていうのよ。
「ねえ、これって売れるの?」
「ああ、売れる。しかし製法がわかればトレントの乱獲がおきるかもしれない」
魔獣は駆除したほうがいいけど……乱獲はちょっと可哀そうかな……
私が唇に指を当てて悩んでいると、リアムはニッコリと微笑む。
「トレントに樹液を分量を少なくすればいい。そうすれば中級ポーションになるはずだ。一体のトレントからかなりの量の樹液が取れるから、この村だけでトレントを狩る分には大丈夫だろう。製法を他には明かせないけどね」
やった! これでポーションを量産することができるわ。
ジンベ達に話をして、すぐに工場を建設してもらいましょう。
私とリアムは村の家々を回り、怪我をしている住人をポーションで手当していった。
そして村のみんなを回復させた私達はジンベの家へ向かう。
玄関へ入ると、ジンベとコリンは二人でお茶をしている最中だった。
私は居間へあがり、二人にポーションが完成したことを伝える。
「だから村にポーション工場を建ててほしいのよ」
「いや、薬剤工場のほうがいい。トレントの樹液にはまだまだ可能性があるから、そのほうが色々な薬を作ることができる」
私達は相談して、村のみんなを集めることにした。
ジンベの家を出ると、なにやら村人達が家の外に集まっている。
また何かあったのかしら?
不思議に思った私は、みんなが集まっている方向へと走る。
人込みをすり抜けて前に出ると、門の所に大勢のドワーフ達が立っていた。
先頭に立っていたホプキンがニヤリと笑う。
「この村が大変なことになってると聞いてな。ドワーフ村の住人全員で、村の修復に来たんじゃ」
「やったー!、 ありがとうホプキン!」
嬉しさのあまり、私はホプキンに抱き着く。
するとホプキンは頬を赤くして照れたように髪をかく。
「若い女子が軽々しくおっさんに抱き着いてはいかんわい。ワハハハ」
それから一週間かけて村の家々は補修、建て直しされていった。
用事をすませたドワーフ達は自分達の村へと戻っていった。
壊れた外壁の廃材をみながら、一人残ったホプキンは胸の前で両腕を組む。
「木材の壁では中級の魔獣は防げんぞ……これはワシが手を貸すしかあるまい」
「それって、どういう意味?」
「ワシがこの村に住んで、獣人達に建築の基礎を教えてやろうと言っているのじゃ」




