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10.怪しい錬金術師

なんとかトレント達を討伐した村の者達は、死体となったトレントを広場へと集めた。



この屍、何かに応用できないかしら?


私は肩の上に乗っているエラに声をかける。



「ねえ、トレントって何かの素材にならならいの?」


「うーん、魔獣達はトレントを食べて、怪我を治しているところを見たことがあるわよ」



それが本当なら、トレントからポーションを作ることができるかも!



広場のトレントの死体を燃やそうと、ジンベ達が松明を持ってきた。


私は、その前に仁王立ちになり、両手を広げる。



「燃やすのは、ちょっと待って! もしかすると薬の原料になるかもしれないの!」


「トレントが薬になるんですか!?」


「今はまだハッキリしたことは言えないけど、とにかく燃やすのは禁止よ!」



村の外壁は壊され、半壊している家も多い。



幸いにも織布工場は大丈夫だけど……村を再建するにはお金が必要だもん。


トレントの死体が何かの素材になるなら、それを使わない手はないわよね。



家に帰って、オリビアにエラの言っていたことを伝えると、彼女は難しい表情をする。



「素材をそのまま加工するならドワーフ達でもできるが、調合となると錬金術師だろうね」


「それならネージンの街へ行ってみましょうよ」


「トレント達がまた襲ってくるかもしれないから、私もエドモンドも一緒には行けないわよ」



今、村は大変な状況だもんね……



翌日、私はエラとゴンベの三人で、ネージンの街へ向けて出発した。


街道で野営をして、次の日に街に到着する。



「さて錬金術師を探さなくちゃ」


「錬金術師って、どんな人達なの?」


「うーん、わかんない。色々なモノを調合してヤバイ発明をする人達って感じかしら?」



前世の日本の知識でも、錬金術師って色々な研究をしてる人ってイメージしかないんだよね。


科学を基礎を見つけた人なんかも、錬金術師だったという話もあるけどね。



「とにかく人に聞いていけば何とかなるでしょ」



私の言葉を聞いて、エラは呆れた表情でため息をつく。



だって仕方ないでしょ、ネージンの街に知り合いなんていないんだから。



私は以前に行ったことのある料理用具屋へ行ってみることにした。



「錬金術師だって、それなら裏路地の怪しい道具屋が錬金術師達が経営している店さ。どいつも、うさん臭い奴等だから気をつけなよ」



裏路地に来てみたけど、表通りとは違って薄汚いわね。



路地が細すぎて日差しもそれほど入らないし……



私が怯えた表情をしていると、ゴンベが手を差し伸べてくれる。



「怖いなら、オラと手をつないでいるといいだ」



ホントにゴンベったら、優しいのよね。



路地の奥へと進んでいくと怪しげな店が並んでいる。



へえ、道具屋……調剤屋……色々とあるのね……



そんな風に考えながら歩いていると、一軒の店の扉が開いて、店から長身の眼鏡をかけた男がでてきた。



「おや? お嬢さんがこんな場所に何のようだい? あまり細い路地は歩かないほうがいいと思うけど?」



この異世界って、とっても命の値段が安いのよね。



特に若い女子は、暴行されたり、誘拐されたり、奴隷になれるケースもあるから……



私は男を見てニッコリと笑う。



「あなたは錬金術師? 腕はいいほうなの?」


「いきなり質問かい。自分では、そこそこの腕前だとは思っているよ」


「トレントの屍って何かの素材にできないかしら?」


「トレントなら、けっこう何にでも使えるよ。素材をそのままで使うこともできるし、粉にして漢方なんかにもできるな」



なるほど、漢方薬にもなるのね。


でもエラの話しだと、ポーションに素材にも使えそうなんだけど……



「ねえ、あなた、私の村へ来て、アトリエ工房を開いてみない? 私が出資者になるから」


「君はどこかのお金持ちの娘さんかな?」


「ええ、身分は明かせないけどメイナード侯爵家ゆかりの者よ」


「それは本当かい? とかく錬金術はお金がかかるんだ。でも店もあるから、他の場所へ行くのはちょっと……」



男が言い淀んでいると、腰のポーチに隠れていたエラが、私の肩へピョンと乗る。



「あなたも錬金術師でしょ。だったら世界の神秘を追い求めなさいよ」


「うわ、小人が出てきた! いったい何なんだ、これは?」


「森の妖精、ドライアドよ。名前はエラって言うの」


「ドライアドを見たのは初めてだ。妖精って本当に森にいたんだな。実に興味深い」



男は目をキラキラさせて、エラに顔を近づける。


エラは胸を張って、二本の腕を伸ばして指差す。



「私を観察しかたったら、村へ来るのよ!」


「妖精を研究できる錬金術師なんて、そうはいない。一緒に村へ行くよ」



錬金術師の男の名前はリアムというらしい。


錬金の素材を求めて、王都から辺境へ流れてきたのだという。


とりあえず、リアムの店はそのまま鍵をかけて放置し、私達は彼を連れて村に戻ることにした。


村に到着したリアムは、広場に山積みになっているトレントを見て呆然と佇む。



「王都ではトレントは貴重な素材なんだけど……やはり『暗闇の森』が近いからかな?」


「このトレントの屍を使ってポーションを作ってもらいたいの」


「え? 胃腸に効く漢方なら作れるけど、なぜポーションなんだい?」



私はエラから聞いた話をリアムに説明する。


話を聞き終わったはリアムはアゴに指を当てる。


「なるほど、魔獣の傷が癒えるということは、ポーションの素材になる可能性がある。さっそく研究してみよう」


翌日、村の男達の手によって、私の家の隣にリアムの錬金工房が建てられた。


それから三日後、自分の店へ錬金術の道具を取りに戻っていたリアムと、ジンベ、ゴンベの三人が村へと戻ってきた。


そしてリアムの実験が始まった。

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