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1.追放されました

「君とは婚約解消だ!」


この一言で私の優雅な未来は閉ざされた。


だって秋なんだもん。


食べ物の美味しい季節でしょ。


豊富に揃えられた山の幸や、お肉を見れば、日本人なら鍋一択でしょ。


料理長やお父様に隠れて、深夜に鍋を作ってガツガツと鍋を食べまくったのがイケなかったのね。


体重計に乗ると五キロも太ってしまった。


でも服を着たら誰にもわからないと思ったの。


それなのに婚約者のローランド王太子ったら、一目で私が太ったことを見抜くなんて!


どれだけ人のことを細かくチェックしてるのよ!


体重が増減するのは仕方ないじゃない、育ち盛りなんだから!


それで婚約破棄って、ちょっと横暴すぎない?


体重ごときで婚約を解消するような男なんて、こっちから願い下げよ。



父であるメイナード侯爵は執務室の豪華な椅子に座り、私へ冷たい視線を送ってくる。


「太ったことが理由で婚約を解消されるなど侯爵家の恥だ。エマ、お前を追放する。辺境の領地をくれてやるから、僻地で大人しく静かに暮らせ」



は?


お父様、婚約破棄されて傷ついている愛娘を邸から放逐されると?


ちょっと落ち着いて話し合いませんか?


辺境の僻地なんかに放り出されたら、ガチで人生詰んじゃうから!



「どうして私が辺境へ追放されるんですか?」


「侯爵家の名を汚した。それだけで理由は十分だろう」



必死に父上を説得したけど……まったく聞く耳を持ってもらえなかった……


私室でメイド達に私服を脱がされ、旅装束に着替えさせられる。


この分厚いズボンを着けろと?


革のブーツ、重いんですけど!


服がゴワゴワするわ! 


胸元や肩に金属が取り付けられてて……軽装備って何?


手甲、足甲って意味わかんないわよ!


どうして汚れた外套を羽織らないとダメなの!


無理矢理、押し込められた私を乗せて馬車はガタゴトと走り出した。


馬車の窓から住み慣れた領都の街並みが見える。


大通りを行き交う人々、仲良さそうに寄り添う男女……


どうして馬車の中で、私は軟禁されてるのよ!


泊まる宿も汚くて狭いし食事もマズイ。


こんなことなら、もっと鍋を堪能しておくんだった……


この異世界の庶民の食べ物って、味が薄いのよね。


調味料もあまり使われていないみたいだし。


邸の料理に慣れ過ぎていたのね……


なんだかんだで二週間が過ぎ、辺境の僻地の村へ到着した。


そして御者は私をペッと馬車から放り出して去っていく。


こんな所に一人で放り出されて大丈夫なの?


お父様の話では、私が放逐される場所は辺巨の僻地の街だったような?


うーん、深く考えても仕方がない。


とにかく村長と話をしましょう。


木の簡素な門から村の中へ入っていく。


そして一番大きな家の前に着いた。


一応、父上から貰った家紋入りの短刀を見せましょう。


家の中に入ると獣人の男が座っていた。


あら耳が小さくて可愛いわね。


その姿はレッサーパンダかしら?


尻尾の縞々をモフモフしたいわー。


とにかく村長さんに挨拶しなくちゃ。


私が侯爵の娘だと告げると、男は私に向かって平伏する。


「私はこの村を預かる、ジンベと言います。私達のような流れ者の獣人が集まるこんな村に、温情くださるとは、なんと侯爵様は寛大なお方だ。今日からお嬢様が村長になっていただければ、この村も安泰です」


は? 獣人族の村?


私が村長?


「それでは皆を集めて、お嬢様の家を建ててきます」


へ? 今から家を建てる?


意味わかんないんですけど?


戸惑う私を放置して、ジンベは外へと飛び出していった。


ジンベって人が良さそうだし…この村は安全そうね。


安心したら睡魔が……


「起きてください。家が完成しましたよ」


ジンベに体を揺すられて、強引に家の外へと連れて出される。


「これは……?」


「お嬢様の家です」


「掘っ建て小屋では?」


小屋の中へ入ると、すきま風がビュービューと部屋の中へ入ってくる。


「ジンベの家のほうが立派じゃない?」


「皆で廃材をもちよって、短い時間で家を建てたんだから仕方ないですよ」


「……」


家を建てるなら、もっと時間をかけて丁寧に作ってほしかった。


一応、床はあるし、布団も置いてくれてるから生活はできそうだけど……


でも真冬になったら凍えそうな気がするのは私だけ?



ジンベの家で、ジンベと二人でぼーっとしていると、お盆に料理を乗せて女子が部屋へ入ってきた。


やったー! どんな時でも食事は大事よね!


さー食べるわよ……焼き魚が一匹……キノコの入ったお汁……それだけなの?


こんなのじゃ、お腹一杯にならないわよ。


「魚一匹だけなの?」


「今日は川魚が穫れてのでラッキーでした。川魚を食べられるのは三日に一回ぐらいですからね」


「パンはないの?」


「この村では小麦は少ししか作っていませんので、パンは貴重なんですよ」


「……」


キノコを食べようと汁に口をつける。


家はすきま風が入っても、服を着れば我慢できる。


布団を被れば、寒さは凌げる。


でもお腹が空いたままでは、力が出ないじゃない。


この村の食料事情をなんとかしないと、私の将来が詰む。


「もう我慢できない! 村のみんなを集めて! 全員集合よ!」


村の中心にある広場に村人達を集める。


これが村の全員……二十人ほどしかいないじゃない……それも全員が亜人や獣人……


「ねえーみんな、植物の根っこの部分は食べたことある?」


「鹿や猪が森の中で食べていますね」


「それよ! その動物達が食べていると根っこを集めてきて! 大至急よ!」


私の勘が当たっていれば……必ずあるはずよ。


三時間ほどで皆は植物の根を持って、広場に戻ってきた。


ニンジン、大根、山イモ、里イモ……


「あった! あったわ、ジャガイモー!」



作者の潮ノ海月です。


この作品を読んでいただき、誠に感謝します。


この作品も、まったく書き貯めのストックがなく、ほぼ毎日、書き下ろしで投稿しています。

誤字脱字がチェックしていますが、取り切れていません。

温かい目で読んでいただけたら嬉しいです。


引き続き、楽しく読んでいただけたら幸いです。


もし、この作品を気に入っていただけた方は、お気に入り登録をよろしくお願いいたします。


評価★★★★★・ブックマーク登録は、作者の泣いて喜び、モチベーションUPに繋がります。


ころからも、よろしくお願いいたします。

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