「商業区防衛戦・前編」その7
「アスカ、本当に行くの?」
大方作戦を決め終えて各々準備に取り掛かる、未だにキリちゃんエミちゃんは無理無理と首を振っている。
「はい、お姉さんにお世話されてばかりは嫌なので」
そんな中でサナエちゃんとアスカちゃんの会話が聴こえる。
「そう・・・その・・・他人行儀とか使わなくてもいいからね?」
サナエちゃんの少し寂しそうな表情が痛々しい、本当は私みたいに泣いたり喜んだりしたいだろうに、“お姉さん“だから心の中に留めている。
五歳の時から一緒の家で生活してその時既にサナエちゃんは十五歳なのに誰よりも大人びて一番手間の掛かった私をちょっと嫌な顔をするだけで嫌いとは一度も言わなかった、寧ろ逆だ。
アスカちゃんは良い子で成長したけど私には一言だけ教えてくれた。
“勉強や戦闘が出来なくても良いから周りを見てちょっとだけ素直になって優しく笑いなさい”
当時は意味不明だったけど今なら漸く理解出来た。
「そーだよ?サナエちゃんは胸を触ろうが結婚できなくてウジウジするのを弄ったり、おねだりしようが怒んな・・・・あいだだだだ!?」
「アンタは別よ、普通に怒るし殴るわ」
「ぼ、暴力変態!」
「それを言うなら暴力反対でしょうが!」
デコピンを受けて苦悶な表情で私は患部を押さえるとアスカちゃんは笑った。
「あはは♪二人共仲良いね♪」
その言葉に私達はちょっとしたスキンシップを嗜む。
「何言ってんのよ、アンタも巻き添えになるのよ?」
サナエちゃんは急にアスカちゃんのお尻をムニュと揉む。
「ひゃあ!?ど、どういうことですか!?」
サナエちゃんのスタートに乗じて私は悪戯に胸を触る。
「私達は家族なんだよ〜?こーいうのもされるから気を付けてね?」
「ユカリちゃんそんなことしたかな!?ひゃ!?ゆ、許してください〜!!」
実際はもっと質素だったけどサナエちゃんが笑ってくれるならその役を買うよ。
少しの間色々揉まれたアスカちゃんは顔面真っ赤になりながら私達の洗礼を受ける。
右腕が動かなくてぎこちない動きだけどあまり見ないようにしよう。
「ユカリちゃん」
二人の会話の間にぬるっと背後からユイさんが出てきた!?
「うひゃあ!?な、何!?」
私の発言を無視するように肩に胸を乗せられながら耳元で囁かれた。
「商業区で罠を張って来るから夜ね」
それを甘い声で言われても!?私はユイさんに言おうとしたか霧のように消えしまった。そしていつの間にかノア先輩も居なくなってる、皆は足音立てながら仕方無いとか一緒に生き延びようとか少し憂鬱なテンションで皆に挨拶をすると最後にサナエちゃんが可愛くないサバサバした声でこう言ってくれた。
「ありがとう、ユカリちゃんは良い子ね」
仏頂面を外したサナエちゃんの柔らかな顔は可愛らしくて恋愛下手でサバサバしたツンデレな恋する乙女だと言うからカイト君にいつ言うのと囁いたら全力で逃げるように立ち去って行った。
そーいう所だよサナエちゃん?
ヘタレなサナエちゃんはさておき、私も少しは準備しないと、何だか違和感がある作戦だけどその時はまたサナエに言いに行こうかな。




