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「夢幻の可能性」 その3
ハルカさんはズボンから何やら鍵のような物を重厚な壁の真ん中に押し当てると溶けるように消えた。
「さ、ここからは未知の世界とご対面よ」
ハルカさんは私の手を引き、壁に向かって歩き出すとなんと溶けるように壁に飲み込まれて行ったのだった。
スラム街 地下実験室 人体解明区画
「なに………これ」
妙に気温がジメジメしてあちらかこちらで鼻に突くような薬品の臭いが充満してて長居はしない方が良いきがする。
薄暗くて上半身ぐらいしか照らされてない壁に手を当てながら窓を見るとそこには同じ人間がガラスの中に閉じ込められていた。
「面白いでしょ、まだ研究途中らしいわよ?これが完成したらこの星だけじゃない、世界の星全ての生物が“夢幻の可能性を秘めた命”を持つことになるらしいわ」
夢幻の可能性?こんな狂気の沙汰が?おんなじ人間、同じ体型、同じ性格、同じ行動を生成することがこの研究所の目的だと言うの?
動揺した気持ちを抑えきれず分からぬ狂気を感じる私にハルカさんはけろっとした表情で振り返って笑った。
「ようこそ、光星の未知の世界へ」




