「商業区防衛戦・前編」その4
お兄ちゃん襲撃まで私達は作戦を練る度に戻って来たサナエちゃんも加えて持ってきた地図をテーブルに開く、近未来区とはまた別の【商業区】だから少し古い。
区画の区切りというのは確かに無かったはず、一応この場所に行くとその区画に入ると看板が立てられていたり付近の設置物にぶら下がったりとまちまちだ。
商業区は鍛冶屋から開発研究所、炭鉱や食品なんか大部分を締める言わば生活の基盤だ。これを破壊されると全ての基盤が瓦解するほどと言われて冒険者や近くにいくつもの騎士団なんかも設置されているのは雰囲気で分かる。
だがここにはシスターズみたいな巨大組織は存在せず一つ一つ別の組織だから敵が類も見ない強敵だと厳しい意見もあると通っていた時の先生の話を思い出す。
「ざっと見た所主に生活必需品なんかには治安維持の為に騎士団が多くて商売点には名が知れた冒険者、病院には一般冒険者が配置されてるわね」
私的には誰も知らないからよくわからないけど協力を仰ぐのには丁度良さそうかな。
「でもこの話信じる人が怪しいから除外した方がいいかも」
私の考えもあっさり切り捨てられて驚くとサナエちゃんは理由を聞いた。
「一応注意喚起はした方が役に立つかもよ?」
「いいえ、私達は名が知れてる訳でもなく最近少し聞く程度の冒険者よ、相手は一般と言っても大型の敵を何度も倒したことがある経験者揃いよ?主にユカリちゃんが日和見で行かないから私達の信用はほぼゼロよ?」
怖いから強い敵と戦うにはまだ能力が足りないと判断した私は今になって後悔する。そう言えば私達って小さい依頼しかやったこと無いからたまに聞く程度になってるんだろうか?
「結構な痛手ね、今の勢力が【倉庫にしまわれ忘れられた冒険者】と【クビ寸前の所長】に【エロ酒場オーナー】と【身元不明の情報屋】が【元最凶の伝説と呼ばれた殺し屋傭兵】と【最凶の傭兵の右腕と呼ばれた女性】とその一味でしょ、ヤバくない?」
皮肉が効いてて苦笑しか出なかった。これは本当に負け戦かもしれない。
「ま、取り敢えずは俺達の目的は“重要場所”の保護だ、負け戦だろうが死ぬ気で守るしか手はないな」
なんか楽しそうじゃない?火の粉を被せたのにこのノリの良さは清々しく尊敬しちゃうよ。
「ユカリちゃん、ユーゴの言う通りよ、守り切れば負け戦じゃないわ」
私の顔にそう書いてあったと無表情のユイさんは私を励ましてくれた。
「そうだね、私も簡単には諦めないよ!」
本来なら寝てないと行けないけどこの際後で叱られよう。今は身を挺して守らなければいけない。
サナエちゃんの発言も視野に入れてユーゴ君の作戦を取り私達の作戦を決めることにした。




